最初のお願い
2019/7/24/16:28
学校の校門に来る。
僕には好きな女の子がいた。もちろん片思いだ。彼女の名前は川口キララ。キラキラネームの流行の最先端にいるような名前の女の子である。利発で可愛らしくて物事の善し悪しをずばずばと言う、同じクラスの女の子だ。
校門を過ぎた桜の木の下で待つことにした。五月であり花はもう散っていた。
来た。
腰まで届く長いの黒髪を揺らしながらゆっくりと歩いてくる。
僕は息をのんだ。
ラコルは僕の様子を見て分かったのか、
「あの子かニャ?」
ボールペンの先をキララに向ける。
「う、うん」
僕はこくこくと頷いた。
「女の子の名前は何かニャ?」
「き、キララ」
「シクラ。読者にお願いするニャ」
「ど、どうすればいいの?」
「早くするニャ」
キララは僕の存在に気づきもせずに歩いている。
「ど、どうすればいいの?」
僕は同じ事を言ってしまった。
「もう、こう言うニャ。読者様、どうか、僕とキララを恋人同士にしてください。分かったニャ?」
「ひゃ、ひゃ、わ、分かった」
キララが玄関に行ってしまう。
僕はその背中に向けて小声で言った。
「ど、読者様。どうか、僕とキララを、恋人同士にしてください」
「良くやったニャ」
ラコルがボールペンをメモ帳に走らせた。