自暴自棄気味の決意
感動ください。
シロネコの自分のことをラコルと名乗った。
「あたしは、これから貴方を主人公にライトノベルを書くニャ。どうして貴方をモチーフにするかと言うと、さっき死のうという言葉を聞いたからニャ。死のうとしている人間の行く末は、物語の題材としてぴったりニャ」
そんなことよりもどうしてネコがしゃべっているのかを教えて欲しかった。
「あたしは、魔法使いの使い魔だニャ」
「魔法使い? そんな馬鹿な」
「そんなバナナ?」
「いや違うと思う。それに、この世界に魔法使いなんているのかな?」
「いるも何も、いっぱいいるニャ。特にこの町、東京都夜雲市にはいっぱいいるニャ」
僕は生まれも育ちも夜雲市の人間だった。しかし魔法使いなんて存在に会ったことは無かった。
「嘘でしょ」
「嘘じゃないニャ。貴方の名前を聞いても良いかニャ?」
「高橋シクラ」
「シクラニャ」
ラコルはメモ帳にペンを走らせる。僕の名前をメモったようだ。それ以外にも何か文章を書いていく。ネコは顔を上げた。
「シクラ、これから貴方はライトノベルの主人公ニャ」
「……意味がよく分からないんだけど」
「じゃあ説明するニャ」
ラコルは胸を張った。
「あたしは今まで、使い魔として魔法使いのもとで何十年も働いてきたニャ。でもあたしのやりたいことは、使い魔では無くてライトノベル書くことだったニャ。今回はご主人様に休暇をもらって、ライトノベル書く時間を頂いたニャ。このメモ帳は」
彼女がメモ帳を掲げる。
「ご主人様のパソコンと魔法でつながっていて、あたしの書いた文章はリアルタイムでご主人様が、小説投稿サイト、小説家になろうにアップしてくれてるニャ。今もそうニャ」
「は、はぁ」
「分かったニャ?」
僕はおずおずと右手のひらを上げた。
「きょ、拒否権は?」
「無いニャ」
彼女はでんと腹を張った。
僕はうつむいた。少しして顔を上げた。
「別にいいよ。僕をモチーフにしてライトノベルを書いても。どうせ僕は。ううん、何でも無い。ただ、一つだけ言っておくことがあって、それは」
「それは何かニャ?」
「僕をモチーフにしても面白いライトノベルは書けないと思う」
「それはあたしの腕次第ニャ」
僕とラコルは見つめ合った。