落とし穴
2019/7/24/21:55 ほむほむ。
校門をくぐると僕は落とし穴に落ちてしまった。
「ほきょっ」
僕は謎の奇声を上げて下半身が地面に埋まった。
すぐに出ようとふんばるが中々出られない。
「シクラ、ダサイニャ」
僕のすぐ隣でラコルがため息をつく。
「落とし穴にはまるとは」
「しょうがないじゃないか。こんなの」
僕らの前に一人の女性が歩いてきた。長い髪。今日はポニーテイルに結われている。理知的な瞳と小さな唇。あれは、キララだ。
彼女はすぐ近くでしゃがみ込み、僕の額を右手でつつく。
「おはよー。シクラくん、朝から元気ね」
「キララさん。良いところに、助けてくれませんか?」
「どうしよっかなー」
キララは人差し指を唇の横に当てた。
「え?」
「嘘嘘、真顔にならないでよ。それより、どうして落とし穴に落ちたのよ」
「それは、気づかなかったから」
「罠探知の魔法、覚えてないの?」
「魔法?」
「うん。この落とし穴。仕掛けたの私だから」
「どうして?」
「シクラくんの実力を試すためよ。昨日、あんなに鮮やかな戦いをして見せたんだかから、落とし穴ぐらい余裕で避けるだろうなーって、普通思うじゃない?」
「すいません。僕、まだLV2なんで」
「LV2!?」
彼女は立ち上がり後ずさった。
「昨日のアレは?」
「アレは」
なんと説明したら良いものだろうか。
僕はラコルを見る。
シロネコは首を振った。
「そのネコ」
キララがびしっと指さした。
ラコルがぎょっとして瞳を大きくする。透明化しているはずである。しかしキララは見破ったようだ。
「なんなの?」
「あ、あの、後で説明」
「今して」
「後で」
「今」
「時間が」
「シクラくん。昨日私のこと、好きだって言ったよね?」
「説明させてください」
「はい」
キララはやっと笑顔を浮かべた。エンジェルスマイルである。
僕は昨日からの出来事をかいつまんで説明した。