え、転生してますが????
こんにちは、そしてはじめまして。私、しがない美少女オタクです。え、美少女オタクがわからない?そのままですよ、美少女を何よりも愛し守り尊び崇拝する誇りある勇者です。はい。いや男とちゃいますよ?女性女性。亭年27の。……ああ、そうそう。
――私、死にました。
いや、どういうことかって聞かれても。こう……ぼーっと美少女を思いながら歩いてたら横からトラックにバ―――――ンッと。怖いとも思いませんでしたよ。一瞬一瞬。で、何で死んだはずの私が会話してるのかって?簡単ですね。転生しました。……いやそんな驚くことでもないですよー最近よくあることですって。何があったか簡単に説明するとですね。
①自称神様になんか突然転生の誘いをかけられる
②美少女につられておkする
③わーほんとに転生しちゃったやだー
はい、非常に単純明快かつ典型的な転生ですね。……って。
「なるかこらぁああああああ!!!!」
目の前には一面に広がる草原。後ろを振り向けば自分の住居でもある公爵家の城。空には美しい鳥たちと都市。……最後おかしいなおい。先ほどまで無垢な公爵令嬢だったはずの私は、全てを思い出した今わなわなと拳を震わせ声を絞り出す。
「なんで……よりにもよって……」
あぁ、改めて自己紹介をしましょう。アンネ・テレジオ・テオブローマ(公爵令嬢)、元一般日本人女性。
「乙女ゲームなんだよぉおおおおおお!!!!」
……どうやら、神様に詐欺られたようです。
しばらくして正気を取り戻した私は、ひとまずこの世界についての情報を思い出そうと頭をフル回転させていた。
「ぬぬぬ……これくらいしか思い出せませんわ……」
結果、何とか絞り出した情報をざっと整理すると。まず、現在のこの世界は前世の乙女ゲーム、「闇の乙女と光の騎士」に酷似した世界。しかも実はこのゲーム、私はユーザー……の中でもかなり重度な、課金ユーザーだった。美少女好きがなんでこんな乙女ゲームをしていたのか、疑問に思う人も多いだろう。その理由、前世の私のプレイ中の一言から引用して説明すると。
「あぁああああ愛してるよヒロインちゃぁああああん今日も可愛いねぇええええええ」
……そう、ヒロインが最っっっ高に可愛い。ほんとに可愛い。ルックスから生い立ちから各攻略対象とのストーリーでの反応から私の好みドストライク。……まあ分からないだろうしざっくり説明すると。
このゲームは忌むべき闇の属性を持ち、さらに忌まわしい黒髪赤目で生まれた少女がヒロイン。そのためかなり高い地位の家に生まれながら生まれた時から苦難を強いられ、愛を受けずに育っていた。塔の中で何もかもから隔離されて生きてきたヒロインは、国内の魔力を持つもの全員に義務付けられている魔法学校への入学を機に様々な男性と出会い、恋におちて心を取り戻していく――。みたいな感じ。はいごちそうさまです!!心を閉ざした少女とかもうほんと最高です!!しかも美少女!!!!万歳!!!!とまあこんな感じで前世の私はあっという間にこの子の虜になってしまった。そのおかげでシナリオもイベントもがっつりクリアで完全把握。だってリアクションが可愛いから。
「はぁああ……今思い出しても可愛すぎる……新規イベのスチル回収できないの悲しすぎ……」
と、一通りショックに浸ったところで。今度は今の私、アンネについて説明しよう。アンネはいわゆる悪役令嬢。攻略対象の一人であるライアの姉として登場する。ライアはかなりおっとりしていて幼顔で、守りたくなる年下系男子(年齢的にはヒロインと同い年)。危うい彼を守るため、アンネは相当苦労してきたらしく、ヒロインにちょっかいをだしてくるのもライアが変なのに狙われている!!という危機感から。
彼女はヒロインの前に完璧な姉として現れ、その才能でヒロインを圧倒する。その他にも色々とヒロインをライアから遠ざけようと画策してくるが、ヒロインはたゆまぬ努力の末に彼女に魔法勝負を挑み、見事勝利。今まで人を傷つけることを恐れて闇の魔法を嫌い、そしてそんな魔法を持つ自分自身をも嫌っていたヒロイン。しかし、その恐れを振り払ってまでライアに想いを届けようとするヒロインに心を打たれたアンネは、最終的には二人を祝福し、独り静かに姿を消す……が。
「ふざけんなよ攻略対象どもヒロインちゃんは私のもんじゃい誰にも渡さんぞ」
……もちろん美少女オタクの私がみすみす弟にヒロインをとられるのを眺めているわけもなく。
「そうよ、美少女ならいるじゃない……ヒロインが!!!!負けない、愛しのヒロインちゃんは私が攻略するんだああああ!!!!」
こうして、私の新たな転生ライフはその絶叫と共に幕を開けたのだった……。