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はじめての従魔




ここは魔の森。


障気におおわれ魔素がふき出し、その環境に適応した強力な魔物が闊歩する死の森。






「う、うぐ……ッ!ヴォエー」


宗太は障気に侵され死にかけていた。


(……し、死ぬ!ど、どうしたら!……あっ、多重結界!)


幾重にも重なる結界が宗太を障気から守った。


「……し、死ぬかと思ったー!そういや耐性系スキル全然取ってなかったわ」

(てか、結界あるから大丈夫だと思ってたけど、よくよく考えてみれば着いた瞬間は障気に晒されるわけだから、魔の森近くの安全な所から出発すればよかった)


今更ながらに後悔した宗太は現在地を確めるために、旅の小道具セットから地図を取り出した。


「……って!地図見たって現在地わかんねーよ!あっ、世界全書があったか」

(障気で死にかけてテンパッちまった。頭が上手く働かない。落ちつけ、落ちつけ俺!)


宗太は結界内の新鮮な空気で深呼吸を繰り返し気持ちを落ちつかせた。


頭で念じるとどこからともなく世界全書が現れた。黒みがかった茶色のシンプルな装丁は、どことなく黒本を連想させ宗太のトラウマを刺激する。


「え、えーと、ここは魔の森のどの辺だ?」


宗太のつぶやきに応えるように世界全書のページがひとりでにめくれ、魔の森の現在地を青い点で示した地図が現れた。


「おおっ、ビビったー!勝手に本がめくれるなんて軽くホラーだな。んー、なになに……、地図によるとちょうど魔の森の中腹辺りか。本当はもっと奥の山の手前くらいに住もうと思ってたけど、また何かの拍子に障気くらったらやばいからこの辺でいいか。中腹でも充分人なんて寄りつかないだろうしな」


そう呟きながら世界全書を閉じようとした時、地図に赤く点滅する印が表れて宗太のいる所にとてつもない勢いで近づいてきた。


(な、なんだ!?え、これは敵対者の印だってー!?)


『グゥルルル、ガァオー!』


「あ、あれは狼!?や、や、や、ヤバいヤバい!多重結界!多重結界!」


宗太はパニックになり、もう既にかけている多重結界を更にかけようとしていた。


そして真っ黒い闇を纏ったような大きな獣は宗太のすぐ目の前まで迫っていた。


『グゥルアー!』


口を開けた大きな獣を見た宗太はもう駄目だと思ったその時、目が合った。




『クゥン、クゥーン』


突如大きな獣は腹を見せて甘えるような情けないような声で鳴いた。


「な、なんだ、どうなってる!?」


世界全書を見ると赤かった印が緑に変わっていて、味方を意味する色になっていた。


「あ、あー、俺魔物支配スキル持ってたわ。いや、今みたいな魔物の脅威を怖れて計画的に取得したスキルだけど、実際ビビるって!」


誰かに言い訳するように叫ぶ宗太に、大きな獣が話しかけてきた。


『参ッタ、降参スル。ゼヒ従魔ニシ欲シイ』


「え!?お前喋れるの?」


『俺ニンゲン語喋レナイ。主ガマジュウ語喋ッテイルゾ』


「ああ、世界全書の翻訳機能か!魔獣語も翻訳対象だったんだな」

(それにしても大きな狼だな。なんて狼なんだろ)


宗太の疑問に答えるように世界全書のページがめくれガルムの図鑑が現れた。




【ガルム】


種族平均

体力:C

攻撃:B

防御:C

魔力:D

魔攻:C

魔防:D

俊敏:B

器用:E

幸運:D


所持スキル

Bランク

・毒耐性B 火耐性B ・障気耐性B

・千里鼻 ・適応

Cランク

・爪術C ・火魔法C・悪食

・夜目 ・追跡 ・感知

Dランク

・風魔法D ・毒牙


B級モンスター。

炎を吐き毒の牙と爪を持つ狼。

火山や障気の濃い環境を好み生息する。

特に魔の森に生息する固体は魔素を吸ってより強力な固体となる。

雑食性で毒耐性が高く毒を帯びたものも平気で平らげる。

自らの縄張りを持ち繁殖期以外では他のガルムの縄張りには入らない。

繁殖力は低く数も多くはないので群れることは少ない。

とても素早く攻撃力も高いため冒険者の間では出会ったら死を覚悟しろとの意味を込め死の番犬と呼ばれている。




(つ、つえー!ガルムさんつえー!攻撃と俊敏がBとか物理特化かと思いきや魔法も使うとは!こ、これは先生とお呼び致したほうがよろしいのではないでしょうか)


「……ほ、本当に俺の従魔になってくれんの?」


宗太は恐る恐るガルムに問いかける。


『モチロンダゾ、主!』


腹を見せながらガルムはくぅんくぅんと肯定した。


「そ、そっか……!よ、よかったあー。じゃあ、これからよろしくな」


『ウォン!ヨロシク主ー!』


ガルムは起きあがって宗太に近づき顔をペロペロと舐めだした。


(まだちょっと怖いけど、こいつ犬っぽくて可愛いな)


『主ー、名前ツケテ欲シイゾ!従魔ケイヤクダ!』


「おー、よしよし。名前かあ、お前性別どっちなんだ?」


『俺オスダゾ!』


「んー、オスかあ。んー、名前、名前。むむむ、よし!お前は今日からクロだ!」

(決して考えることを放棄したわけではない。考えに考えた末に、真っ黒な毛並みに相応しい名前にしたんだ)


『俺、クロ!ワーイ!俺ノ名前!クロダゾーーー!』


クロは宗太の周りをワフワフとはしゃぎながら駆け回った。


(ぐ、なんだか異様に疲れたな。どうしたんだろ)


世界全書のページがパラパラとめくれ従魔に関する説明が載っていた。


(なになに……、従魔契約とは魔物を屈服させ己の魔力を使い名を与え服従させること。なるほど、なるほど。名前を自分の魔力で縛るってことか。んで、魔物が強ければ強いほど縛る魔力も多くなると。あー、それでこんなに疲れを感じるのか。魔力めっちゃ消費したんだろうな、クロ強そうだし)


また世界全書のページがパラパラとめくれ、今度はクロの説明が載っていた。




【クロ】


体力:B

攻撃:A

防御:C

魔力:B

魔攻:B

魔防:C

俊敏:A

器用:E

幸運:D


所持スキル

Aランク

・毒耐性A ・障気耐性A ・火耐性A

Bランク

・麻痺耐性B 呪い耐性B ・爪術B ・火魔法B 

・適応 ・千里鼻 ・猛毒牙

Cランク

・睡眠耐性C ・風魔法C ・悪食 ・夜目 

・追跡 ・感知 ・麻痺牙

Dランク

・幻惑耐性D ・強化魔法D

Eランク

・主従の絆E


種族ガルム。

A級モンスター。

国見宗太の従魔。

魔の森の中腹の一部を縄張りとして支配している実力者。

魔の森で生まれ育ち大量の魔素を体内に蓄え通常のガルムより遥かに魔法攻撃力が高く接近戦も中距離戦もこなせる。

得意技は風の爪や麻痺や毒の牙での攻撃と炎のブレスによる火魔法。




(つ、つえー!クロ先生つえー!一般のガルムよりはるかにつえー!えっ、魔の森の一部を支配とかマジッスか!?これは俺がクロ先生に仕える立場なのでは?)


「な、なあクロ。お前ってこの辺牛耳ってんの?」


『ソウダゾー!俺ココ縄張リ!突然知ラナイ臭イシタカラ、ビックリシテ駆ケツケタラ主ダッタ』


「そうかそうか。えーと、もしさ……、俺がクロの縄張りに住みたいって言ったらどうする?」


『嬉シイゾ!従魔ニナッタラココ離レルト思ッテタ。セッカク頑張ッテ手ニ入レタ縄張リダカラココニイタイ!』


「おおー、それはよかった。俺はこの森に住みたくて場所を探してたとこだったから、クロの縄張り住まわせてもらえるのはすごく助かるよ」


『ウォン!俺主ノ従魔ダカラ俺ノ縄張リハ主ノ縄張リダゾ!コレカラ主ノタメニ縄張リ頑張ッテ広ゲルゾ!』


クロは誇らし気に宣言した。


「ほ、ほどほどでいいからな。クロがケガしたら俺悲しいからさ」

(スローライフ送りたいのに縄張り争いなんかしてたらそれどころじゃなくなるからな)


『ウォンウォン!』


クロは宗太の言葉に感動して、はしゃぐように甘えた。

そんなクロの頭を撫でながら宗太は、どの辺に家を建てようか考えを巡らせていた。


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