表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/17

精霊樹


『ウォンウォン!』


『おはようございます、我が主』


宗太はクロとセバスチャンに起こされ目が覚めた。


「ああー、二人ともおはよー」


『主は早起きでございますね。いつも日の出と共に起きるのが日課なのですか?』


「ん?ああ、クロがいつも早起きだから俺も早く起きるんだよ」


『左様でございますか。今度からは食事の用意ができてから起こしたほうがよろしいでしょうか?』


「あー!それいいな!なんか優雅な感じ」


『では、これからはそのように致します。それと主にお願いがございます』


「ん?なに?」


『実は台所の使い方を教えて頂きたいのです。何分、あのような立派な台所は初めてでして、使い方が分からず……』


「そっか、なんも説明してなかったもんな。ごめんごめん」

(かまどじゃなくていきなりIHだもんな。そりゃあ、分からんわな)


『私が浅慮なために主の手を煩わしてして申し訳ありません』


丁寧に頭を下げるセバスチャンを慌てて止めて宗太達は台所に向かった。




「これが流し台で、この蛇口をひねると水が流れるから、ここで野菜や食器を洗ったりするんだ。あ!台所用洗剤出さなくちゃ!これで食器を洗うと綺麗に落ちるからな。汚れや洗剤は排水口に流れて、中で聖の魔石で洗浄されてからまた水の魔石に水が供給できるようになってるから、蛇口をひねればまた綺麗な水が出るから安心してくれ」


セバスチャンは目を丸くした。


『そんな複雑な構造の魔道具だったのですか』


「あー、魔石使った道具は全部魔道具って言うのか。だったらこの流し台は魔道具だな!」


宗太はおかしそうに笑ったが、セバスチャンの目は真剣だった。


「次にこれがコンロ……あー、かまど?だ。この強と書かれたボタンに魔力を流すとここが熱を持つから、この熱で料理をするんだ。火を使わないから安全だ。そして使い終わったら、この切っていうボタンに魔力を流すと熱が引いてくから、使い終わったら必ず切に魔力を流してくれよ?因みに強ボタンの裏側には火の魔石、切ボタンの裏側には氷の魔石を使って熱量を調整してるんだ。魔石って便利だよな」


またもやにこやかに笑う宗太にセバスチャンは、


(魔石にこのような使い方があるとは……!貴族の家にもこのような使い方をしている家などどこにもなかった!我が主は、いったい何者……いや、何者であろうと私の主だ。私は私の全力でもってこの主にお仕えするだけ)


と、心の中で思った。


そんなセバスチャンの心中を知らずに宗太は続ける。


「んで、これが冷蔵庫な!食べ物を冷やす保存庫だ。一番下が冷凍庫で凍らして保存する場所で、上と真ん中は氷るほど冷たくないけどひんやりして保存できる場所だ。もちろん氷の魔石で調整して設置してある」


セバスチャンは驚きのあまり思考を停止させる寸前だった。


「まあ、実演してみせたほうが早いから今日は一緒に料理を作ろうか!俺も料理スキルあるしな」


宗太はそう言うと色々な調味料の説明をしながらセバスチャンと料理を作っていった。


セバスチャンは未知の調味料と料理を必死で覚えようとする傍らでクロは尻尾をゆらゆらと揺らしながら二人を眺めて座っていた。


炒め物やスープなどを中心に作り、パンは具現化スキルで出していき、朝食の用意を終えた。


(今度はかまども作ってセバスチャンに焼きたてパンやピザを作ってもらおう。それと米を炊きたいから炊飯器か土鍋でも用意するか)


宗太は実際に台所に立ってみて足りないものを次々に具現化していき、それらを見たセバスチャンが驚愕してまた宗太に教えを乞うということを繰り返した。




「朝飯だぞー!と、その前に次に従魔契約するのは誰だー?」


宗太の呼びかけに緑の精霊が無言で近づいてきた。


「ん?お前か?今から契約しても大丈夫か?」


『うん、だいじょーぶ。ケイヤクしておいしい畑のおやさいいっぱい食べたい……』


小さい声ながら強い意思表示をする緑の精霊に宗太は微笑んだ。


「分かった!契約したらいっぱい食わせてやるからな!」

(俺の作った野菜の良さが分かるとはなかなか見る目のあるやつだ。んーと、こいつの名前は……、うん、マリモだな。緑の丸い物体なんて他の名前は思いつかない)


「お前の名前はマリモだ!緑の精霊のマリモ!」




パラパラパラ




【マリモ】


体力:E

攻撃:E

防御:ー

魔力:A

魔攻:C

魔防:A

俊敏:E

器用:D

幸運:A


所持スキル

Aランク

・緑耐性A ・緑魔法A ・状態異常無効 

・植物操作 ・精霊体

Bランク

・同化 ・看破 ・適応 ・魔力強化

・成長促進 ・幸運 

Cランク

・感知 

Dランク

・光合成

Eランク

・主従の絆E


種族緑の精霊。

A級モンスター。

国見宗太の従魔。

魔の森の一部を縄張りとして支配している実力者。

魔の森で生まれ育ち千年になるが精霊の世界では子供とされる。

幸運の象徴とされる精霊は過去に乱獲され滅多に人前に現れることはないがマリモは他の精霊と出会ったことがなく過去を知らないため人懐っこい。

得意技は緑魔法による攻撃や防御。




(つ、つえー!マリモ先生つえー!精霊体だから物理無効で魔防も高いなんて無敵じゃねーか!しかも状態異常無効とか初めて見たし……)


『おいしいおやさいちょーだい』


「あ、ああ。ちょうど朝飯だしな、沢山食べてくれ」


呆けてた宗太だが気をとり直して席についた。


「『いただきます!』」


魔物達もすっかり宗太のやり方に染まり今では疑問もなく素晴らしい食事を当たり前のように食べていた。


「マリモ、野菜炒めはおいしいか?」


『おいしー。でもまりもはそのままのおやさいもスキー』


マリモは小さな震えるような声でしっかりと好みを伝えてくる。


「そうかそうか。マリモは素材の味が一番好みなんだな」


マリモの可愛さに宗太の顔は緩んだ。




食事を終えるとマリモが宗太へお願いしにやってきた。


『あるじー、まりもね、畑に住みたいのー』


「ん?畑に住むのか?家を作ろうか?」


そのやり取りを見てアウラウネが話しかけてきた。


『主さま!精霊さま……マリモさまは精霊の種を畑に植えたいって言ってるんだよー!』


「そうなのか?その精霊の種を植えるとどうなるんだ?」


『おっきく育つのー』


アウラウネはマリモを補足するように言った。


『精霊樹という木が育って周りを緑でいっぱいの豊かな土地にするんだよ!』


宗太はよく分からなかったが、土地が豊かになるならと二つ返事了承した。


「それなら別に構わないぞ。どこに種を植えたいんだ?」


マリモはふよふよと漂いながら畑のまん中で止まった。


『ここがいいー』


「おおー、ちょうど春夏秋冬の畑のまん中か!いいんじゃないか?」


『やったー。ここにおうち作るー』


『マリモさま!あたしも手伝うよ!』


『ありがとー、よろしくー』


そう言うや否やマリモから緑の光が出てきて地面に染み込んでいった。

マリモは植物操作スキルを使い種をぐんぐんと成長させていき、アウラウネは緑魔法で種に魔力を注ぎ込んでいった。


「お、おい……」


宗太はぐんぐんと大きくなる精霊樹を見上げながら、止めるように声をかけるタイミングを見失っていた。


精霊樹は大きくなりながら葉を繁らせ、小さな白い花を大量に咲かせ、拠点が全てが精霊樹で日影になる頃ようやく成長が止まった。


「で、でかすぎー!!」

(ああ、畑が精霊樹の根で変形しているー!後で直さないと……)


突如現れた巨大な木に興味を惹かれ魔物達が集まってきた。 


『ほう。小さいが立派な精霊樹じゃな』


シロの呟きに宗太は驚いた。


「え!?これで小さいの!?」


『そうじゃ。昔ワシが見た精霊樹はてっぺんが見えんほど巨大じゃったぞ』


『まりものちからじゃ、これがゲンカイなのー。これからもっと大きくできるようにがんばるー』


『マリモさま、あたしも手伝うよ!』


宗太は気軽に精霊樹を植えることに了承したこと後悔した。


『せっかくじゃし、精霊樹の花びらでも浮かべながらニホンシュでも飲みたいのう!』


シロに促されるままに放心した宗太は具現化スキルで酒をどんどん出していった。


あっという間にどんちゃん騒ぎになり、セバスチャンは料理やつまみをどんどん作っていった。


宗太は現実逃避しながら風呂場へ行き、お湯につかりながら上を見上げると精霊樹の花が見えた。


(はぁ。もうやってしまったことはどうしようもない。俺も風呂でゆっくり花見しながら酒でも飲むか)


一人で風呂で酒盛りしている宗太を追って魔物達がぞろぞろとやってきた。


以前から風呂が気になって者が宗太の真似をしながら体や頭を洗ったり、風呂で泳ぎ始めたりと大騒ぎになった。


酔っ払った風呂嫌いのシロが、風呂へドボンと落ちたが、風呂で温まりながらの酒盛りがいたく気に入ったようだ。


宗太はこめかみを押さえながらも酔っ払い達の要望を叶えるべく、具現化スキルでつまみや酒を出していった。


(まったく、こいつらは……。というか女湯も作らないとな。魔物とはいえ混浴はまずいだろ)


そう思い周りを見渡すと女はフェンリル、アウラウネ、精霊、ハーピー、ラミア、狐、アラクネ、ニワトリ、半サソリだったこともあり、宗太はまあいいか、と混浴で良しとした。


『俺っちが一番速いぜ!』


『ワフ!負ケナイゾ!』


『あたちが一番だよ!』


テンは持ち前の水中移動で、クロは犬かきで、ヒナは空を飛んで競争してた。


『飛ぶのはズルいぞ!泳ぎの勝負だ!』


『へっへーん!そんなの関係ないもん!』


『ワフ!』


『ああー!風の爪はやめてー!』


『おいクロ!お湯が吹き飛んじまうだろー!』


宗太はクロ達のやりとりをやれやれといった風に見ているとアラクネと目が合った。


アラクネは風呂の隅でただジーっと宗太を見つめていた。いつもストーカーのごとく見られている宗太だが、最近は視界に入れないように努めていた。


(し、しまった目が合っちまった!)


アラクネはのっそりとしかし素早い動きで宗太に近寄ってきた。


宗太は無表情で回れ右をして走り去った。




ぎゃーぎゃー騒ぎながらどんちゃん騒ぎが続きいつの間にか夜になっていた。




『主さまー!あたしに名前ちょーだい』


アウラウネがトテトテとやってきて従魔契約を持ちかけてきた。

給仕と逃走で疲れ果てていた宗太はボーッとしながら頷いた。


「ああ、お前の名前は……ハナだな。そうだ、アウラウネのハナだ……」




パラパラパラ




【ハナ】


体力:C

攻撃:D

防御:C

魔力:B

魔攻:B

魔防:B

俊敏:D

器用:B

幸運:D


所持スキル

Bランク

・障気耐性B ・毒耐性B ・麻痺耐性B 

・幻惑耐性B ・緑耐性B ・緑魔法B 

・成長促進 ・再生 ・回復 ・適応 ・探知

Cランク

・魅了耐性C ・呪い耐性C ・魔力操作

・擬態

Dランク

・光合成

Eランク

・主従の絆E


種族アウラウネ。

B級モンスター。

国見宗太の従魔。

魔の森の一部を縄張りとして支配している実力者。

魔の森で生まれ育ちその環境により非常に強い再生力を身につけた。

緑の精霊マリモを敬い守るためにマリモの縄張りの周囲全てを自らの縄張りとした。

得意技は回復力を生かした持久戦と緑魔法による搦め手。




(おー、結構強いな。持久型か。なんかうちの連中はみんな攻撃に特化したやつが多いから、ハナはマリモと一緒に拠点の守りに使えそうだな)


『主さま、ありがとー!あたし、これから主さまとマリモさまのために頑張るね!』


「ああ、ありがとう。頼むよ」


宗太は精神的にくたくたになりながら寝床へ行く途中でシロに足蹴にされているアラクネが見えた。


(ああ、シロが躾てくれてるのかー。助かるわ。これで安心して眠れる……)


マナキノコを口に放りこみベッドに倒れるように沈むと宗太はすぐに深い眠りについた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ