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マイキッチン


『うぅー、頭が痛いのじゃー』


シロが二日酔いでダウンしていた。


「お前どんだけ飲んだんだよ」


宗太が呆れたようにシロを見たが、他にも二日酔いになってる魔物がちらほらいた。


『主が悪いんじゃぞ!初めて酒を出したかと思ったらあんなに上手い酒ばかり出しおって!……うがっ!いたたた!特にあのニホンシュというのはけしからん!飲みやすくてすいすい飲めてしまうのじゃ!……いたたた!』


「そうかそうか。じゃあ、もう酒は出さないことにするよ!」


シロはカッと目を見開いた。


『……それはいけないことじゃ、主よ。なんじゃ?何が欲しいのじゃ?隣国全てを捧げれば満足かの?』


「だー!なんでそんなにスケールがでかくなんだよ!分かったよ、たまになら酒出してやるからお前は何もするな!いいか、何もするんじゃないぞ?」


宗太は念を押して二度言ったが、まるで前振りのようになっていた。


そこへクロとゼルギオンがやって来た。


『ウォン!ウォン!』


『おはようございます主殿。先程クロ殿と一緒に朝食用の野菜と果実を集めて机に置いておきました』


「おおー!ありがとう!二人とも気が効くなー!余計なことしかしないどっかの誰かさんとは大違いだ」


宗太は薄目でシロを見たが、シロは二日酔いのため力なく鼻をフンと鳴らして寝そべった。


クロをわしゃわしゃと撫で、その勢いでゼルギオンの頭も撫でると、クロとゼルギオンは嬉しそうにした。


「んじゃま、従魔契約してから朝飯にするか!」


宗太達は朝飯だぞー!と、まだ起きていない魔物達を起こした。


「三番目に従魔契約するのは誰だー?」


宗太が呼びかけると上半身が人で下半身が羊の男が前へ出た。


(わたくし)でございます、我が主』


(おおー、こいつは確か……、だいぶ昔に人に仕えていたっていうサテュロスか!こいつの名前はすでに決めていたんだよなー)


「そうか、今から従魔契約をするけど構わないか?」


『もちろんでございます。また人にお仕えできるなど、まるで夢のようです』


サテュロスは恭しく宗太へ礼をした。


「わかった。お前の名前はセバスチャン。サテュロスのセバスチャンだ!」




パラパラパラ




【セバスチャン】


体力:C

攻撃:C

防御:B

魔力:B

魔攻:C

魔防:B

俊敏:C

器用:C

幸運:D


所持スキル

Bランク

・忍耐 ・回復 ・適応 ・言語理解

・収納 ・地図 

Cランク

・全状態異常耐性C ・雷耐性C ・雷魔法C

・魔力操作 ・感知 ・鑑定 ・執事極

Dランク

・料理人匠

Eランク

・主従の絆E


種族サテュロス。

B級モンスター。

国見宗太の従魔。

魔の森の一部を縄張りとして支配している実力者。

元奴隷で酷い仕打ちを受けてきたが主人に恵まれてからは人間を恨むことなく執事として活躍した。

元の主人が没落する際に解放されその主人の遺言に従い二度と奴隷にならないように魔の森に隠れ住んでいた。

得意技は特にないが耐えて勝機を伺う冷静な判断力がある。




(おおー、執事スキルが極まってるー!素晴らしい!素晴らしいぞ、セバスチャン!)


宗太は一人で興奮しながらこれからの優雅な生活を夢想した。

しかし、すぐに他の魔物達の腹減ったという声に我に返り、せっせと朝食の準備を始めた。


『主、朝食の支度は私がさせて頂きますので、どうぞ座ってお待ち下さい』


そのセバスチャンの言葉に宗太は目玉が落ちそうなほど感動した。


「ま、マジでか!?ありがとうセバスチャン!でも、一応俺がもてなす側だし、料理は俺のスキルで出してるから俺が用意するよ」


『かしこまりました。それでは私は主に用意して頂いた食事をお運び致します』


「ああ、頼むよ」


そのやり取りをクロとゼルギオンが食い入るように見ていて、自分達の立場を取られまいと必死にセバスチャンに続いて宗太のお手伝いをした。


「朝飯だぞー!」


おおー!と歓声が上がり魔物達はいそいそと席についた。既に胃袋を掴まれている魔物達は期待に胸を膨らませ口数も多くなり一気に賑やかになった。


朝食は軽めで畑の野菜と果物がメインで、後はパンを何種類もカゴに入れて好きに食べれるようにしてあった。


中にはパンだけかと残念がっている者もいたが、一口パンをかじるとモシャモシャととてつもない勢いで食べ、パンの争奪戦が始まった。


「はははっ!賑やかだなー。パンはまだまだ出せるからケンカせずに落ちついて食べろよー」


宗太がパンを出したらセバスチャンがカゴに入れて空になったカゴと交換していった。


クロとゼルギオンは食欲には勝てず、争うように食べていた。


『主のスキルは素晴らしいですね。このような香りの良いパンやまるで甘味のようなパンは初めて食しました』


セバスチャンは自らが料理をすることもあり、パンのあまりの出来映えに材料は何を使っているのか頭をフル回転させながら味わっていた。


「ああ、俺の具現化スキルは一度でも触れたことがあれば大抵のものは再現することができるんだよ」


『具現化スキル……ですか。私は聞いたことはございませんが、その性能は破格のスキルですね。さすがは我が主。しかし、そのような素晴らしいスキルは消費魔力も多いのではありませんか?』


「んー、まあね。俺は魔力多いほうだけど、さすがにこれだけ従魔契約して消費した後だと少し疲れるな。でも俺の場合、スキルで休めば回復するから意外と大丈夫だ」


『ふむ、左様でございますか。主であるからこそ可能となっておりますがやはり負担もおありのようですね。よろしければこのセバスチャンがこれから普段の料理を作らせて頂くというのはどうでしょうか?』


既に宗太がすごい人物だと分かっているセバスチャンだが、主の負担をいかに減らして快適に過ごしてもらえるかを考えるのが執事としての務めでありセバスチャンの誇りでもあるので、積極的に宗太に提案した。


「おお!人に作ってもらえるのって嬉しいなー!でもうちはまだ台所がないんだよ。そうだ!じゃあ、今日は台所作るから明日から朝と昼を作ってもらってもいいか?晩は俺のスキルで料理出すからさ」


『かしこまりました。主の負担を減らせるようにこのセバスチャン、腕によりをかけて料理を作らせて頂きます』


宗太とセバスチャンが話していたら、あっという間にパンがなくなりまた争いが始まったので慌ててパンを補充した。


食事が終わり一息ついてから、宗太はテンとセバスチャンを呼び台所作りを始めた。


クロとゼルギオンも手伝おうと駆け寄って来て、みんなで競うように宗太の役に立とうとした。


まずは以前クロが整地してくれた場所に、大量のレンガを出して、昔ホームセンターで買ったことのある強力な専用のボンドを出した。


本当はモルタルを作りたかったのだがセメントは触ったことがなかった為に具現化できず、接着剤はボンドで代用することにした。


一応、世界全書にも接着剤を聞いてはみたが、どれも魔の森では入手できそうもなく、前世の知識は世界全書では解説してはくれないので、全て宗太が考えねばならなかった。


宗太はそれぞれに指示を出して台所作りにとりかかった。


クロには板を用意してもらい、宗太とゼルギオンとテンとセバスチャンでレンガをボンドでくっつけて床に敷き詰めた。


そして壁を作る為に板を用意して、まずは宗太がお手本を見せて道具の使い方を教えて釘を打っていった。


初めから上手くいった訳ではないが、みんなコツを掴んだ後は単純作業なので慣れていった。


宗太は頭の中にある設計図に従って、みんなが難しくてできない作業をどんどんやっていった。


途中で昼休憩を挟んだが、畑の野菜と果物を適当にもいだだけの簡単な食事だった。

宗太は作業していない他の魔物に、食べ足りなかったら果樹園から適当にもいで食べるように言い作業に戻った。


トンカチをトントンする姿は人型に近いゼルギオンとセバスチャンはだいぶ様になってきた。

しかし、一番器用だったのはアーヴァンクのテンだった。小さく爪の長い手を器用に使ってトンカチを握り、釘を口にくわえるその姿はさながらベテラン大工のようだった。

なのでテンにだけ、単純作業以外にも手伝ってもらうことにした。


『俺っちこういの得意だもんね!』


鼻高々にトンカチを構えるテンを羨まし気に見つめるクロは、邪魔しないように端に座って待機していた。

そして誰かの釘が足りなくなると箱をくわえて届けに走った。


壁板を打ち終わるとゼルギオンとセバスチャンには板にレンガをくっつけていく作業をしてもらい、宗太とテンは屋根作りにとりかかった。


そんなに凝ったものではなく、雨風を凌げるだけの屋根でよかったので、壁板にレンガを張りつける作業より早く終わった。

ゼルギオンとセバスチャンに合流したが、なんだかんだで壁板にレンガを張りつける作業が一番時間がかかった。


そして簡単な扉をはめ込み台所が完成した。


「完成だー!もはや立派な家のようだな!」


『こんな立派な台所を作って頂けたなんて光栄の極みにございます』


『俺っちにかかればこんなの朝飯前だぜ!』


『一日でこのような建物を作れるんですね。僕お手伝いできてよかったです!』


『ワフワフ!』


みんなで達成感に浸っていると宗太が最後の仕上げ!と言い、家の中に台所を具現化した。


流し台は水の魔石で、コンロは火の魔石でIHのように熱で調理できるようにした。


温泉で水と火の魔石を使っていたからこそ、すぐに取りつけられたが、一度分解して台所の中に魔石を内臓させたので、思ったより時間がかかった。


後は食器棚を置いて食器や調理器具を適当に出してしまった。


内装まであっという間にやってしまった宗太を見てゼルギオン達は驚いた。


特にテンは宗太が流しやコンロに魔石を取りつける作業をジィーっと興味深そうに真剣に見ていた。


これだけの作業を終える頃にはすっかり夜になっており、作業組はお腹ペコペコだった。


みんなも腹を減らしているだろうと急いで晩ごはんの支度をしようとした宗太は他の魔物達を見た。


『主、遅かったのう。あんまり遅いからリンゴをたらふく摘まんでしまったではないか』


「悪い悪い。作業に夢中ですっかり遅くなっちゃって。他の魔物達ももしかして食事済ませちゃった?晩飯はいらない?」


『晩飯はいるに決っておろう!酒だけを楽しみに今日一日を過ごしておったのじゃぞ!つまみと酒の分くらい空けておいておるわ!他の魔物達も昼から今までダラダラと食っちゃ寝しておったが、主の用意する晩飯と聞けば皆食べるじゃろう』


「……そ、そうか。分かった。すぐ用意するよ」


宗太は軽くつまめるフライドポテトや居酒屋メニューのような料理を多目に出して酒も用意した。


「みんなー!遅くなってごめんなー!晩飯だぞー!」


宗太の言葉に寝てた魔物も起きだしてぞろぞろと食卓に集まった。


『殿!食事の前に拙者に名付けを頼むでござる』


二足歩行の猫、ケットシーが宗太の前にやって来た。


「ああ、そうだな。今、従魔契約してしまおうか」

(ていうか、殿?ござる?見た目は可愛らしいケットシーなのにずいぶん古風なんだな。ミケとかタマにしようと思ってたんだけど、喋り方と違和感あるよなー。んー、んー、そうだ!)


「お前の名前はコテツ!ケットシーのコテツだ!」




パラパラパラ




【コテツ】


体力:C

攻撃:B

防御:D

魔力:C

魔攻:B

魔防:C

俊敏:B

器用:D

幸運:D


所持スキル

Aランク

・心眼

Bランク

・空腹耐性B ・風耐性B ・剣技B

・適応 ・貫通

Cランク

・障気耐性C ・幻惑耐性C ・風魔法C

・聴力強化 ・夜目 ・感知

Dランク

・混乱耐性D ・出血耐性D

Eランク

・主従の絆E


種族ケットシー。

B級モンスター。

国見宗太の従魔。

魔の森の一部を縄張りとして支配している実力者。

アインヘル大陸の南方のケットシーの村で生まれ育ち見聞を広めるために旅に出た。

風来坊として各地を放浪としたが魔の森のケットシーに一目惚れし魔の森に居ついた。

得意技は剣技による貫通攻撃と風魔法を乗せた剣撃。




(おお!まさにサムライって感じだな。風来坊かー、名前はトラさんのほうがよかったかな。いやコテツっぽい顔してるからコテツで間違いないか)





今日も賑やかな晩餐でお腹いっぱいの者も初の居酒屋メニューを制覇するべく無理やりに胃に詰め込んでいた。


食事のたびに争奪戦が始まるのはもはやお約束となり、宗太は慣れたようにおかわりを出していった。


思ったより立派な台所を作れたことに満足しながら、宗太はマナキノコを食べて眠りについた。


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