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閑話 魔石集め競争


『よし!よう言った!ではこれから日暮れまでに一番主を満足させる魔石を取ってこれた者が勝者じゃ!……始め!』




クロは一目散に飛び出した。


(土ノ魔石ハ俺ノ縄張リニ沢山落チテル。コノ勝負ハ楽勝ダ!)


獰猛な笑みを浮かべ、主が喜ぶ姿を想像してムッフーと笑った。




(アッタ!コッチニモアッタ!ムウ、コレ以上クワエラレナイ……)


クロは一旦こっそり拠点に戻って自分の寝床から宗太に貰った大きなリュックを取り出した。


それを器用に背負うと宗太に気づかれないようにそうっと駆け出した。


もちろん宗太にはバッチリ気づかれていた。


黒い大きな巨体は昼の明るさでは目立ちすぎだった。


(ヨシ、コレデ沢山魔石集メレルゾ!俺ガ一番主ニ褒メラレルンダ!)


クロは口に頬張れなくなったらリュックを下ろして魔石をしまって、またリュックを背負ってを日暮れまで繰り返した。


(キット俺ガ一番沢山集メタ!シロニモ、ゼルニモ負ケナイゾ!主!今帰ルー!)


自分の勝利を信じてクロは宗太の元へ駆けていった。








『よし!よう言った!ではこれから日暮れまでに一番主を満足させる魔石を取ってこれた者が勝者じゃ!……始め!』




ゼルギオンはすぐさまドラゴンに戻り空を駆けていった。


自分の地下の住処にも土の魔石はあるが、火山なため火の魔石のほうが豊富だった。


そのため資源豊富な山の中腹の洞窟に目をつけていた。

しかし、ゼルギオンの縄張りはあくまで山の下層。


((アネ)様に見つからないように、さっと魔石を取ってくれば問題ないはず!)


そう、山の中層はゼルギオンの姉の縄張りであった。

ちなみに上層はゼルギオンの母親の縄張りである。


(よし!姉様はいなそうだ。だいたい姉様はいつもどこかにフラフラと遊びに行ってまともに縄張り管理してないんだよなー。でも姉様がいないほうが平和だからいいんだけどさ)


ゼルギオンは洞窟内を細心の注意を払って探索し、大きめの土の魔石を二つ発見できた。


あまり洞窟内を壊したりしたらバレる可能性があるため、慎重に動いていたら外はすっかり日暮れとなっていた。


(最近は主殿の元へ頻繁に行ってご馳走になってるからな。ちゃんと役に立たないと僕の立場がない。主殿の一番の役に立てるなら、姉様の縄張りへ危険を冒して入るだけの価値があるというもの!どうせ姉様は気づかないし問題ないな)


フフッとニヒルな笑みを浮かべながら、ゼルギオンは急いで宗太の元へ向かった。









『よし!よう言った!ではこれから日暮れまでに一番主を満足させる魔石を取ってこれた者が勝者じゃ!……始め!』




(カーカッカッ!まんまとワシの策にハマりおったわ!土の魔石だけよりも緑の魔石があるほうが畑は段違いなのじゃ!……この知識もかつてシャンダルと共に旅して得たもの。懐かしいのう……)


先程までの悪そうな笑みから一転、とても寂しそうな表情になったシロ。


かつて英雄と言われたシャンダルと共に、魔王ヘルの圧政に苦しめられた人々の食料事情を改善するべく各地を奔走したことを思いだしていた。


当時は切羽詰まっており、誰もが余裕のなかった辛い記憶なはずなのに、シロはまるで楽しい思い出の一つかのように懐かしんでいた。


魔王を討ち滅ぼし人々を平和に導いたシャンダルとは比べ物にならないほど、宗太の性格は穏やかで小心者だったが、不思議とシロは宗太の中に英雄シャンダルを重ねていた。


(似ても似つかんが、とてつもない力を持ちながら詰めが甘いところは似ておるかのう。シャンダルと同じく、ワシが正しく導いてやらねば)


宗太が思っている以上にシロは宗太のことを考えていた。


いつもシロが何もせず手を出さないのも、クロに経験を積ませるためだった。


クロはガルムの中では突出していて、シロの縄張りに唯一戦いを挑んだ向上心溢れる優秀な魔物だったが、いかんせん経験が足りなかった。


いくら優秀でも見誤ったら次の瞬間には死ぬのだ。


そのことを分からせるために、クロからの挑戦を受けて立ち結果、死ぬ寸前までボコボコにしてやったのだ。

シロにとっては自分に戦いを挑んだ褒美として、今後無駄死にせずに済むように教えてあげた感覚なのだが、クロにはそんなこは分からないので未だに敵視されている。


なんとも報われないシロだが、当人はそれで良いと思っていた。


あくまで宗太のパートナーはクロなのだ。


クロ共に失敗し成長して絆を結び、互いを信頼し合うのが一番大切なことだとシロは知っていた。


シロがパートナーでは、宗太は頼ることはあっても信じることはないとシロは思っていた。


シロに頼れば頼るほど、信頼は遠のき依存するようになる。そうなってしまえば主を駄目にするただの愚かな従魔である。


プライドの高いシロは、そんなことは絶対に許せない。故に、常に一歩引いて宗太とクロを見て、時折助言をするに留めていた。


(まあ、そんなことは一先ず置いて、今はクロとゼルを叩きのめすとするかの)


ニヤリと不敵に笑ってクロとゼルギオンの驚き落胆する姿を想像した。


『カーカッカッ!』


勝利の高笑いが魔の森に響き渡った。


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