闇との契約
「……」
「……」
二人――敷島とブリュイは向き合う。
「なあ、『契約』ってなにすりゃいいんだ」
「んとね……」
距離を詰めるブリュイ。一瞬どきっとした。意識せず顔が熱くなる。
「えい。《バインド》」
「うぐああああっっ!?」
体に走る痛み。反撃しようにも腕が動かない。
「私の――ええとなんだっけ? そうそう。『下僕』っていうのかな? になる? ならないなら――」
どたばた。誰だ?
「ちょっとブリュイ、あんた何やってんのよーっ!」
「ん。契約」
「……」
「……」
二人の間で沈黙。
「いやいや違うでしょ? あれでもいいのかな?」
何もよくねえ。
「敷島! どうしたっ!」
「お、おう……恵庭か?」
「ああ。っていうかどうしたんだお前……?」
「そこの魔法少女に聞いてくれ」
予想のはるか上を超えるやり方をされた。恵庭みたいな告白とかかと思ったんだが、違うのか。
っていうかいてえ。早くだれかどうにかしてくれ。
「ん。多分契約完了。《リポーズ》」
「いってえ……」
「あの、ブリュイ? あんたって確か……」
「ん。属性は闇だけど」
……人類を救うやつの属性が闇でいいのか。確かに闇って言われると納得だが。
「これで二人目……焔と闇か。あとは何かあるのか?」
「あとは水、氷、雷、風、土、光――の六つです」
「そうか」
「恵庭。そうかじゃすまねえぞ?」
「へ?」
随分と間の抜けた返事だなおい。
「いや、つまりは――それだけの人数が魔法少女と契約してしまうんだぞ? 俺たちの特権じゃなくなるんだぞ」
「だからどうした?」
……わかってねーなこいつ。
「魔法を使えるっていう特殊能力が広まってどうすんだよっ!」
「あのー、ちょっといいですか?」
「あ?」
「別に、一人のマスターが何人の魔法少女と契約しても問題ありません。――あくまでも、魔力の問題ですが」
おお。つまり、ハーレム可能ってことか。まあ、魔力量はしらんが。
「あ、ちなみに敷島さんは、闇のほかは一般レベルです」
「なんだとおッ!?」
「さっきからうるせえぞおめえら! ……なんだお前らか。今日は終わりだ。帰れ」
「「わ、わかりました!」」
とりあえず俺たちはぶっこわれた教室から出た。
「恵庭」
「あ?」
「これからよろしくな」
「おう」
何あともあれ、講習はもうない――はずだ。
春休み明け。その時どうなっているかだな。
もしかしたら、魔法少女と契約する奴が出てくるかもしれない――
序章、終了です。
これから一章(春休みが明けた後の話)に入ります。