逃走、そして飛翔魔法
「うわああああっっ!?」
「待てや恵庭あっ!」
脳筋、が来たぞおぉぉっ! ええい畜生!
「アイシャ!」
「恵庭さん?」
「あいつを吹き飛ばせないのか!? 魔法で!」
「ええと? ああ、そういうことですか。でもですね。私のはちょっと殺傷能力が高くって」
てへ、とはにかみながらそんなことを、って。
「殺傷能力が高い?」
聞き間違いだろうか。
「はい」
「属性は?」
「焔ですね。なぜか上級、超級しか使えませんが」
なるほど? いやなるほどじゃねえ。使い勝手、悪すぎんだろ!
あれだろ? 上級とか超級とかって、馬鹿みたいに魔力食うやつだろ? ああそうだろうな。
「じゃあ、俺に魔法を教えてくれよっ!」
確か中級までならいける、とか言ってたぞこいつ。
「ええ……!? ちょっと、その、なんというか……」
ちょっと間が開いて。
「正直、あいつら倒すのに必要なのは、中級程度なんですよ」
なるほど。俺に教えると自分の必要価値がないってことか。
「いや、別に邪魔もの扱いはしねえから。ていうかそれこそ魔王クラスとかきたらどうすんだよ? そんなん上級だかなんだか知らんがそういうのじゃないと無理だろ?」
そういや俺の魔力量自体は魔王クラスらしいが、だからといって上級のは使えねえのか。まあそりゃそうか。たかだか人間だしな。
っていうか。
「くそ、行き止まりか!」
話すのに集中していて周りを見てなかった。くっ……なにか打つ手はないのか!
見渡す限り教室だな。あとは――女子更衣室か。いや、何考えてんだ俺。確かに講習期間中は部活もないし使われないからある意味では安全だが、あいつに見られたら死、確定だ。
ていうか鍵開いてないじゃん!? 俺バカか!?
残った道は――
「窓か」
ちなみにここは四階である。まあ、何とかするか。別に超人じゃねえがな。
「うおおおっ!」
「えっ! ちょ、ちょっと――わきゃああっ!?」
なんでお前も来たんだよ!
「え、えと、飛翔魔法って、ええとお……」
こんなに混乱している中で行けるのか。
いや待て。もうすぐ地面が――
「『ブラスト』!」
地面がめくれ上がった。
「あ?」
爆風に体が吹き飛ばされる。
「ごふっ……!」
生きてるみたいだ。なぜだ。わからん。
「ここは、屋上か……」
へえ、意外と見晴らしがいいもんだな。本来学生立ち入り禁止だからな、ここ。
「うきゅう……」
魔法少女はぐったりとしている。何やってんだお前は。
「で、あれ、飛翔魔法じゃねえだろ」
「はい……うう、ぎもじわるい……。ええとその、あれは超級魔法です。爆風で吹き飛ばせば空飛べるかな、って思いまして」
わかった。こいつ馬鹿だ。絶対バカだ。確かに助かったぞ。だが、助け方が違うだろ。
「で、飛翔魔法ってのは?」
「ええと……」
回復したらしい。早いな。
「『フライア』!」
ふわーっと体が浮き上がる。便利そうだなあ。
その小柄な体が徐々に浮き上がって……おいまってくれ。
「おま、スカートだってこと忘れたのかよ!」
上を見ないようにして叫ぶ。
「はえ? わきゃああああっ!?」
悲鳴。墜落。
「うう、痛い……」
……もはや何も言うまい。ていうか、こんなバカに人類は救われるのか……
なんとも言えない気分になった、恵庭であった。
昨日は将棋で忙しかったのです。僕の通っている道場では毎月リーグ戦があるんですけど、昨日は四勝一敗でした。負けた将棋、勝てたなあ……と思ってますが、もう遅い。手順前後した僕が弱いだけだ。うん。なんであれを手順前後するかなあ?
もっと勉強しないとだめですね。