呂布召喚
そんな時、
「きゃああああああああっ」
叫び声が、木霊する。先ほどの、商人の夫婦の声だ。
「……さて、行くか」
逆方向に進む。
リア充など世界からいなくなればいいと思っているプロニートである。心の底から知ったことではない。
しかし、そんな柴田の想いとは裏腹に商人夫婦はこちらに向かって逃げてくる。
襲ってきている相手は、野盗であった。
「パラメータ」
早速相手のスキルを確認する。3人いるが、とりあえず一番強そうなやつを。
名前:バシモモ
レベル:12
称号:首領
スキル:なし
HP:52/55
MP:0/0
力:20
防御:7
器用さ:15
素早さ:14
魔力:2
運:4
瞬時に、木との同化を試みる柴田。勝てるわけない……自分より10倍以上ステータス……勝てるわけがない。
「助けてください! ねえ、妻を助けてください!」
夫の商人が、葉っぱ族にすがりつく。木との同化作戦は、残念ながら失敗したようだ。
「YATTA! YATTA! YATTA! YATTA! YATTA! YATTA! YATTA! YATTA!」
言葉通じない作戦。
アナタ……ナニイテルノ……ボク……ハパゾクダヨ……である。
「……なんだ、この裸の男は?」
一方、クールな野党の首領は婦人を片手にはべらせながらこちらを睨む。
「お、お願いします! なんでも持って行って構いません。だから……妻と命だけは……どうか……どうか……」
葉っぱ族の助力を早々にあきらめ、何度も何度も土下座する。
「はっは! ダメだ! こんないい女、お前にはもったいない」
そう言いながら、夫人の頬をベロリと舐める野盗の首領。
確かに美人だもんな、とは葉っぱ族の所見である。
「そんな……どうか……後生です!」
「ククク……心配するな。貴様らは、この場でバラバラにしてやるから」
ら?
自分も含まれていることに気づいて、汗が噴き出す葉っぱ族。初めて、生命に危険を感じる。
「YATTA! YATTA! YATTA! YATTA! YATTA! YATTA! YATTA! YATTA!」
再び、言葉通じない作戦。
アナタ……ナニイテルノ……ボク……ハパゾクダヨ……である。
「……目障りだな。こいつから、殺すか」
どうやら、逆効果だったようだ。
柴田は観念して、大事に手をかざす。
<<古の英傑よ 我が右腕となり 蹂躙せよ いでよ 呂布奉先>>
特に詠唱せずとも問題はない。
気分の問題である。
すると、大地からまばゆい光が発せられ、魔方陣が生成される。その中から、2mを軽く超える巨大な男と巨大な馬が出現した。
「あが……あがががが……」
野盗は、その威圧感に本能的に唸って数歩下がる。
呂布奉先
言わずと知れた一騎当千の代名詞。三国志最強と呼び声の高い猛将である。
「パ……パラメータ」
名前:呂布奉先
レベル:96
称号:一騎当千
スキル:蹂躙
HP:982/982
MP:0/0
力:1003
防御:365
器用さ:55
素早さ:895
魔力:0
運:60
ば……化け物じゃねぇかよ――思わず、震え上がる葉っぱ族。
「おい!」
猛将が裸の柴田を睨みつける。
「あ……う……」
あまりの威圧感。うまく言葉が出てこない葉っぱ族。
「こいつらを殺ればいいのか?」
もはや、言葉にできそうもなかったので、震えながら頷く。
瞬間、
パーン
呂布の持った巨大な矛が一瞬にして野盗の首領を粉々にした。
「ひっ……ひいいいいいい」
恐怖に怯え、本能のままに逃げ出す野盗たち。
「……赤兎」
そう、両足で激を飛ばし疾風のような速度で野盗に迫る。
「た……たしゅ……おあがっ!」
パーン
「い、いのちだけ……しゅぴーーーー」
パーン
野盗は、またしても呂布の矛で粉々に砕け散った。
人って……弾けるんだ……柴田は、あまりの恐怖で、他人事のように驚いていた。