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ガリョウの描くエピローグ

今回は、あまり間が開かなかった! 偉い気がする。



……その分短いけど。


あ、あと今回で完結です。

それではどうぞ。







 さて、おれはいつものようにキュピリアに『カバー』をはずされ目が覚めた。


「おはようございます、ガリョウさん」

「キュピリア、おはよう」


 俺は普段通りにふるまう。どうせ後々ばれるのだがそれは仕方ないだろう。


 もうキュピリアは大丈夫、後は俺の……俺たちの作戦を成功させるだけだ。



  ~~~~  ~~~~



 さっそく俺は周囲に自分の体を作っているものと同じものがないか探った。キュピリアにこの行動が見とがめられないか不安だったが、絵に集中しているらしく問題なかった。そして、それは見つかった。部屋の片隅にある一つの紙束、それに描かれている内容を読み取ることが出来たのだ。


 それは画家ギルドからの通達だった。内容は最近の作品についてのもの、作品が多く出ているが、一つ一つは今までと劣ってしまっている、落ち着いて描いてみたらどうか、といったものだった。


 こんなものが届いていたのにあの叔母はキュピリアに多く描かせていたのか、時間をかければもっと上手に描けただろうと思うと、やはり純粋に怒りがわいてくる。きっとあの叔母の事だ、たくさん描いた方が儲かるとしか考えていないのだろう。画竜の記憶からもそうだろうと感じることが出来る。


 腹立たしいが、今は叔母に苛立っている場合ではない。さて、俺が思う魔法を使おう。



  ~~~~  ~~~~



 俺が考えていた魔法は自分の意識を黒のインクに移す事だ。そうすることで、画家ギルドへ主張が出来るのではないかと考えたのだ。画家ギルド側にあるインクへ自分の意識を飛ばすイメージで魔法を使った。


 この方法にはメリットとデメリットがある。メリットは単純に画家ギルドに確実に今のキュピリアの現状を知らせることが出来るという事、これは当たり前だな。そして、画竜が今まで俺が使っていた体を自然と使えるようになるという事だ。ややこしそうな話に思えるがこれも単純なことだ。要するに邪魔者は立ち去るってだけだからな。


 そして、デメリット。それは、俺が画家ギルドに向かい、キュピリアの現状を知らせた後は何もできないであろうということである。というより、俺は何もしない方がいいと考えている。なぜなら俺はこの世界にはそもそも存在しないイレギュラーだからだ。なんとなくだが、自然に消滅するんじゃあないかと考えている。だが、どうせ死んでいるので、何も問題にならない。だから俺はこの方法をとったのだ。


 さて、キュピリアに気付かれないようにこっそりと、だが確実に俺の意識は画家ギルドに向かっていった。後は頼んだぞ、画竜。



  ~~~~  ~~~~



 ねじ切れそうになりながらもなんとか意識がばらばらにならないようにしっかりと意識を保っていると俺は液体になっていた。おそらくここにいるのは画家ギルドの一人なのだろう。そう信じて俺は俺の体(インク)を動かす。


「な、なんだ!? ひとりでに動き出した!?」


 中年くらいの男の声が上から降ってくるが、今はそれに構っている暇はない、というより反応したくても声が出ない。そもそも口もない。俺にできることは正確にインクを動かして伝えるという事だけだ。文面も、もう考えてある。


『唐突にこのような形で対話することになり申し訳ありません。ですが、あなたが画家ギルドの者ならば俺には伝えなければならないことがあります。『ダブル・ヘッド・ドラゴン』の者たち(・・)の事です』


「……たち、か。『ダブル・ヘッド・ドラゴン』が一人ではないことを知る者という事か」


 偶然だが、予期せぬところから信頼を勝ち取れたらしい。このまま一気に行く!


『彼らの作品の質が低下していることはおわかりでしょう。そのことについての伝達も送っていましたから。俺はその件について知らせるべきことがあると判断し諸事情によりこのような方法で連絡をさせていただくことにしました』


 まさか、俺が元・元人間の元絵の竜で現インクだからこんな方法しか伝達手段がないなんて信頼がなくなりそうなので言えない。そう考えていると男の声が上から聞こえた。


「……お主は何者だ? よく分からん者の言葉を鵜呑みにはできん」


 ……これはどう答えるべきか、いや、考えるまでもないな。





『俺は、キュピリアという少女の絶対的な味方です』


 この世界で俺というものを定義するものは、それくらいだろう。何もない自分はキュピリアを頼りにしてきたわけだし、今もキュピリアのために動いているのだから。


「その子の名前を知っているということは……信用できる……か」


 どうやら、この人はキュピリアの事を知っているみたいだ。声に優しさというか、ほっとしているような雰囲気が宿った気がする。これは、キュピリアの現状を教えればしっかり動いてくれるのでは? この人が何者かは知らないが、しっかり動いてくれることを願おう。


『彼女の現状はひどいものです。彼女の叔母に『ダブル・ヘッド・ドラゴン』として絵を描かされています』


「なんだと! 彼らは今どうなっている? そんなことを許すような奴らではないぞ!」


『大変残念ですが……亡くなっています』


「なんだと……くそっ、じれったい。詳しいことは後で聞く! すぐに彼らのアトリエまで使いを出す、いや私自ら行こう」


 じれったいのは仕方ないじゃないか……テンポよく会話してるように見えるが、俺はゆっくり動くことしかできないんだ。当然文字を表すのも遅くなる。



 だが、何とかなりそうで良かった。人を動かせるような立場の人に接触できたのだから。



  ~~~~  ~~~~



 ……意識が薄れていく、時間の間隔もなくなってしまっているのであれから何日たったかは分からない。もともと自分の体ではないのだ。そもそも液体であるということがよく分からない。だが、元々もう死んでいるのだ。最後に誰かを救えたのならば、それはいいことだろう。


 俺の意識が消えかかっているとき、男が去っていった方向から足音が聞こえた。二人分の音でその音の間隔でそれが大人と子供のものだと分かる。


「ギルド長さん? なんで私をこんなところに?」

「君の両親の事とか聞きたいことは多くあるから、でも大変だっただろうし今すぐという訳じゃない、ゆっくり聞かせてもらえばいいんだが……」

「すぐに聞かないといけないこともあるってことですよね?」

「まあ、そうだな。まずは、君の絶対的な味方についてだ」

「えっ?」


 ちょっとやめろ! あれは、勢いで言ったとこもあって、後で思い出して恥ずかしくて悶えたんだぞ。事実だが!


 というか、この二人はキュピリアとあの時の男か。ちょうどいい、最後に一言遺しておこう。


「君は知らないのか? 君の絶対的な味方と名乗るものが君の事を教えてくれたんだ。不思議なことだったから気になってね。訳の分からないものに貸しを作ったままにはしたくない」

「もしかして、ガリョウさん? でも、あの後ガリョウさんは記憶が混乱して……」


 画竜はうまくやったみたいだな。これで俺はもう必要ないだろう。


「この部屋でやり取りをしたんだ。突然インクが動き出して……」

「これは……」



『約束は守ったぞ。きっと竜の目を埋められるはずだ』


 ただの男子高生だった俺が人をひとり救えたんだ。上出来だろう。


 そして俺の意識は消え去った。

祝! 初・完・結!!!


あー! やめてください! 石を投げないで! 雑って分かってるからっ!!



反省会を活動報告で行う予定です……

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