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現状分析とドラゴンの絵

投稿が済みほっとしていたら感想が何と二つもついていました。

ありがとうございます。

お礼に投稿を頑張ろうと思います。





 上にご飯を食いに行き、キュピリアがいない間、俺は先ほどのやり取りについて考えていた。


 俺は最初、キュピリアの家は貧しく、その中で内職がうまくいかないためキュピリアは殴られていると考えていた。


 だが、あの女性の服や飾りを見れば、その考えには違和感しかない。


 それに、あの女性はキュピリアのことを『金の生る木』と言っていた。養う相手を指してそういうことを言う、こういうことが『養っている』というなら、『養っている』という言葉が盛大にストライキを起こしそうだ。


 ちなみに、キュピリアの服装は大体察しがついているかもしれないが、ボロボロのワンピースのようなものだ。(だからキュピリアの家が貧しいのではないかと思ったのだが)


 とりあえず、キュピリアが食事を終えたら、あの女性についても聞かなければならないだろう。


 そうして、俺は現状を整理して、キュピリアに聞くべきことを考えていた。


 彼女の両親について。

 その遺作がなぜ重要なのか?

 俺が遺作だとはっきり言いきれないのか?

 俺の扱いはどうなるのか? 


 さっきの女性とキュピリアの関係は?

 『養っている』と言っていたが……この現状はそれに当てはまるのか?

 なぜ、キュピリアに絵を描かせているのか?


 魔法にはどんなものがあるのか?

 俺でも魔法は使えるのか?(だって男のロマンだろ!)


 ざっとこんなところかな?


 関係ないことだが、目の前で食事をされても空腹感を全く覚えなかった。やはりこれは俺が絵だからなのだろうか、なら本当に味覚について検証したのは無駄だったな、と、疑問をまとめ終わり暇になったので、キュピリアが食事を終えるまで、俺はとりとめもないことを考えていた。



 ご飯を食べ終わったキュピリアは戻ってきた後、最初のように俺に触れた。するとキュピリアの細い指先と俺(と言っても壁だが)が淡く光り、その光が収まると同時に俺の視界が再びよみがえってきた。


 この不思議現象についても聞かないといけないなと思いながら、俺は先ほどからまとめていた質問を繰り出す。


「キュピリア、さっきの女性は何者なんだ? お前の母親ではないだろ?」

「そうですね。母様ではないです。……あの方は私の叔母です」

「そうか……俺はキュピリアに触れられる前に少しだけ意識があったんだが……その時にお前、あの叔母に殴られていなかったか? 音しか聞こえなかったから確かではないが」


 あまり俺が喋れる前のことを聞きたくない。けれど、そのことを聞かないと先に進まないのだ。


「……その時にもう意識があったんですか?」

「ああいや、今みたいに喋れたわけじゃあない。何も見えない状態で、音だけかすかに聞こえるという感じだった。だから、あまりその時のことは分かってない。それに、俺が意識を持ってすぐのことだからそれ以前のことは分からないぞ」


 やっぱり言い訳みたいになるか……事実だから仕方ないとしても目の前で暴行が起こっているのに見ているだけだったから本当に罪悪感がひどい。やはり謝っておくべきか。


「何もできなくて……すまない」

「あ、いや、責めている訳じゃあないんです。ガリョウさんの意識が昔からあれば、両親の話を聞いているかもしれないと思って……」


 ……多少ほっとした。キュピリアが現状頼れる唯一の人物なのだ。その助けがなくならなくて本当に良かった。あとは、キュピリアが持つ問題を解決すればいい。


 ん? なにかおかしいな? と、どこかに違和感を覚えているうちにキュピリアの話は続く。


「それに、ガリョウさんが声をあげて誰かを呼んだとしても意味がありませんから」


 その言葉を聞いた時、俺は一瞬で自分の持っていた違和感を忘れキュピリアに話の続きを促した。


「どういうことだ?」

「えっと……気付いているかもしれませんが、私の両親はもう亡くなってます。そして私の『後見人』があの叔母なんです」


 あの女性はキュピリアの叔母だったのか……だが、絵を描かせていることに俺は疑問を持った。だから、単純に尋ねてみた。


「じゃあ、なんで『後見人』で『養っている』叔母がキュピリアに絵を描かせているんだ? そもそも、養うことが嫌ならキュピリアを引き取らなければよかったんじゃあないか?」

「そのことに答える為には、まず私の両親のことを話さないといけないんです」

「よし分かった。まずキュピリアの両親は何者だ?」


 こうしてキュピリアは、まず両親のことから説明をし始めた。



  ~~~~  ~~~~



 キュピリアの説明をまとめると次のようになる。


 キュピリアの両親は、二人とも画家だった。だが両者ともになくなっている。

 二人で一つの作品を作るというスタイルで、その絵がほとんどドラゴンの絵であることから『(ダブル・)(ヘッド・)(ドラゴン)』という名前で画家ギルドを通して売り出していた。

 『(ダブル・)(ヘッド・)(ドラゴン)』の正体を知る人は世間にはいなかった。

 だが、両親はキュピリアにだけ秘密を打ち明けていたらしい。


 これが、キュピリアの両親のこと。キュピリアが嬉しそうに話してくれた。この中でも重要なことは、『(ダブル・)(ヘッド・)(ドラゴン)』の正体を知る人が世間にはいなかった(・・・・・)ということと、、『(ダブル・)(ヘッド・)(ドラゴン)』はかなりの人気画家であったという事だ。


 両親が生きていた頃には、キュピリアは何不自由なく育っていたらしい。両親と同じように画家の仕事にあこがれ、両親の真似をして絵を描いていたそうだ。


 だが、両親が死んでしまい、キュピリアの平和な生活は崩れ去った。


 両親が死んだとき、キュピリアの『後見人』としてきたのが、あの叔母だった。


 叔母はどこで知ったのか、キュピリアの両親が、『(ダブル・)(ヘッド・)(ドラゴン)』であることを知っていた。


 そのため、叔母はキュピリアと、『(ダブル・)(ヘッド・)(ドラゴン)』の名前を利用して儲けようと考えた。


 キュピリアに絵を描かせてそれを、『(ダブル・)(ヘッド・)(ドラゴン)』の作品だと画家ギルドに送っているらしい。


 そうやって叔母は儲け続けている。


 こんなことをしておきながら、『養っている』などと堂々と言っていたあの叔母は相当面の皮が厚いのだろう。こんなことを考えておかないと、怒りのあまりどうにかなりそうなのだ。


 だがこれでキュピリアの現状はだいたい理解できた。


「そういえば、『画家ギルド』ってなんだ?」


 わからない情報はこれくらいだ。


「いろんな職業ごとに『ギルド』があって、ギルドに所属して腕前ランクが上がれば優先的に売ったりギルド専門として高く作品を買い取ってもらえたりするみたいです。私は大まかなことしか知らないんですけど……」


 よく知らないのは、キュピリアが幼いころくらいにしか教えてもらってないからだろう。両親たちは利用するけれど幼いころのキュピリアが細かいことを知る必要はなかっただろうからな。


 だが、少し疑問に思う、画家ギルドは書き手が死んだという情報を持ってないのか?


 その、画家ギルドにキュピリアのことは気づかれていないのか?


 そのあたりのことを質問すると、キュピリアは困ったような顔をした。


「さっきも言ったように詳しいことは分からないんです……」


 やはりというかなんというか、キュピリアはあの叔母にほぼ軟禁同然の状態にさせられているようで、そのような情報に疎いらしい。外と情報をやり取りすることも禁止されているみたいだ。


 画家ギルド動向については別のほうから調べないといけないみたいだ。



  ~~~~  ~~~~



 すべて説明を終えたキュピリアは、


「だから、両親の遺作が見つかれば、何か遺言とかあるかもしれないと思ったんですが……」


 と、つぶやいた。なるほど、どうりで俺が遺作でしかもその記憶もないと分かった時がっかりしていたわけだ。目の部分が未完成らしいのも遺作らしくて、そのうえ遺言のような内容を残す前に逝ってしまったと考えると俺にそのような知識がないことも辻褄が合う。


 キュピリアはそんなことわかりたくはなかったと思うが。


 また、この世界の芸術品には意思が宿ることがあるそうだ。作り手の思いがこめられた傑作にのみ見られる現象らしいが。


「とりあえず、また絵を描かなきゃ……」


 悲しそうに、辛そうにそうつぶやいてキュピリアは絵を描き始めた。それでも書き始めてしばらくすると丸い翡翠の目を細めて、本当にうっすらとほほ笑んだ。本当に絵を描くことが好きなんだなと思いながら、俺はその様子を見守った。そうして可愛いと思うより、愛おしいと感じた。……ちょっと待て、俺はロリコンじゃない。なんでこんなことを急に思ったのだろうか……



 すでにある程度でき上っていたようで、しばらくするとキュピリアは少し満足そうに顔をあげた。灰色の髪がそれに合わせてふわりと揺れた。


「ガリョウさん! 今日のは少し自信があるんです。どうですか?」

「いや、俺は芸術に疎いぞ? そんな奴の意見なんて参考になるのか?」

「私、両親以外に絵を見て直接評価してもらうのこれが初めてなんです。叔母はあんなですし……」


 あんまりな境遇に、俺はどんな絵が来ても全力で誉めてやろう、その上で何かアドバイス出来たらいい、と思っていたがそんなことを考える必要はなかった。


 キュピリアの絵を見た俺はすごいとしか言えなかったからだ。


 赤い翼を大きく広げ、堂々とそこにあるドラゴンという存在を主張している。その翼と同様の色のうろこに包まれた体躯はドラゴンの生命力の強さを表すようだった。そしてその表情に強い意志があるかのようで、今にもその咆哮が響くのではないかと見るものに感じさせる、そんな絵だった。


「すげぇ……ただ単純にカッコいい」

「……ありがとうございます」

「キュピリア! すごいな! こんなに上手かったのか」


 俺は感動のままにキュピリアのほうを見ると、キュピリアの丸い瞳には大粒の涙がたまっていた。


「おい!? 何で泣いてるんだよ?」

「嬉……しくて、ごめんなさい。嘘じゃないですよね?」

「俺はいい作品を見てその感動をそのままを伝えただけだ。キュピリアの実力だぞ? ウソなんてそんなことを言うなよ」


 きっと、キュピリアは褒められ慣れてないんだ、そう思って俺はキュピリアが少しでも自信を持てるように言葉をかけることにした。


 そうして、キュピリアは泣きつかれたのかそのまま寝てしまった。だが、その絵だけは汚れないように大切に抱きしめていた。


 ……これ、俺が寝れないのではないのか?


 眠りが浅かったのか、キュピリアはもう一度起き、そのとき俺が寝れないことを相談したら寝る前に『カバー』をしてくれることになった。そしてキュピリアは俺に触れ『カバー』とつぶやき、また俺の視界は暗転した。キュピリアはこの部屋の隅に毛布がありそこで寝ているみたいだ。



 とりあえず、よかったこれで寝れる……『カバー』とか言うこの不思議現象について聞くの忘れてた!

次回の投稿は5月27日の土曜日になります。

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