第八話 わっかと裸
「あのさぁ」
俺はたまらず口を開いた。
周りの視線が痛い。
俺のせいではない。
後ろにいる天使二人組のせいだ。
「その天使のわっかってしまえないの?さっきから周りの人の視線と思考が・・・」
[うわっ天使のコスプレしてる]
[あの男が強要してるに違いない、かわいそうな二人だ]
[あの男絶対変態だよ]
などと俺の心をえぐってくるのだ。
ほんとに使えない能力だ。
今のところ全く役に立ってないじゃないか。
「天使のわっかですか?しまえますよ」
「おお、それはよかった。じゃあしまってもらえるか?」
「なっ!公衆の面前でわっかをしまえだと!」
ヒカリはなぜか顔を赤らめてプルプル震えている。
何かまずいことを言ったのか?
思い当たる節は全くない。
ピッピッピッ
この機械音は・・・
[なんかコスプレの子顔真っ赤じゃね]
[きっと怖い目に合ってるに違いない]
[警察呼んだ方がいいかなぁ?]
まずい!警察はまずいぞ!
「ヒカリ、ガイアさんこっちに来てください」
俺はたまらず逃げ出した。
人目につかないところはますます怪しまれる。
どこか落ち着いて話ができる場所。
しばらくして最近流行りの個室タイプのカフェを見つけ、そこに入った。
「いらっしゃいませ~お客様三名様ですか?」
[天使のわっか!?こんなことさせる人ここら辺にいるんだ]
「そうでしゅ・・・」
「では、こちらへどうぞ」
[噛んだwww]
はぁ、短い言葉を噛んでしまった。
慣れないとこに来るといつもこうなんだよなぁ、俺。
「そうでしゅだって!そうでしゅ!聡何噛んでんの」
「まだ廊下なんだから静かにしろよ・・・」
ヒカリはゲラゲラ笑って俺のことをバカにしてくる。
自分でも顔が真っ赤になるのが分かった。
マジで恥ずかしい・・・
「こちらの席になります」
案内された席は二人掛けの椅子が二つ向かい合って並んでいた。
俺一人が、ヒカリとガイアと向かい合う形で座った。
「とりあえずブレンドコーヒー三つ」
俺は廊下に貼ってあったポスターに書いてあったものを注文した。
「かしこまりました」
さっきから店員の吹き出しは恥ずかしくなりそうで見てられない。
「ところでさっきの話だが、わっかをしまうことって何かまずかったか?」
「まずいも何も聡さん、天使にとってわっかを外すことは裸になることと同義なんですよ」
「ほんとよ!私のことを公衆の面前で・・・」
「すまない!そんなこと俺は知らなかったんだよ!」
「ま、まぁ謝るんなら許してやるわよ」
「ありがとう」
俺は素直に感謝をし、人間の世界では天使でいう裸は常識だということを伝えた。
そのことを聞いたヒカリは、
「やっぱりそうだったのね。うすうす気づいてはいたけど本当にそうだったとは・・・」
「うすうす気づいてはいたんだな」
ならなんで俺にその疑問を聞いてこないんだよ・・・
たぶん恥ずかしかったんだろうな、かわいいとこもあるな。
「で、ガイアさんなんですけど、いつわっかとったんですか?」
「店に入る前だけど」
この人は羞恥心が少し欠けているらしい。
まぁいいだろうあとはヒカリにわっかをとってもらうだけだな
「なあヒカリ早くわっかを外してくれよ、そうしないと外歩けないんだよ」
「絶対に外さないわ」
困ったなぁ、なんかいいアイデアないかな?
そうだ
「なあヒカリちょっといいか」
「?」
俺は二人を連れて店を出た。
「これ!これがいい!」
「気に入ったのがあってよかった」
「私もこれ欲しいです聡さん」
「ああ、いいよ」
「ありがとうございました」
俺たちはカフェを出て帽子を買いに来ていた。
帽子なら、わっかを隠せると思ったからだ。
「二人ともよく似合ってるぞ」
「当たり前だ」
「ありがとうございます聡さん」
正反対の反応だ。
「じゃあ銭湯に向かおうか」
「「おー」」
・・・・・・・
なんてことだせっかくここまで来たのに
『本日をもってこの銭湯は閉めることにします
銭湯屋』