第七話 天使と大家
今何と言った?
飯が食いたい?
まさかな、天使であるヒカリがご飯を必要とする理由がない。
「ヒカリは飯なんか食わなくても生きていけるんだろ?俺の食費を削るような真似はやめてくれよ」
「ごめん冗談、少し興味があって食べたいって言っただけだから」
「なんだ冗談か~」
ヒカリの顔は少し寂しそうだったが、俺の食費には代えられない・・・
はずだったのだが・・・
「微妙な味ね・・・」
結局ヒカリに飯をあげてしまった。
やはり良心には逆らえない。
損な性格だ・・・
しかし・・・
「人の料理食べといて微妙とか失礼だとは思わないのかよ」
「全く思わないわ」
「薄情な奴だ」
「天使なんてこんなもんですよ、聡さん」
などと和気あいあい?の会話で盛り上がっている時。
「折田さん。さっきすごい音がしたけど大丈夫かい?」
と上の階に住む大家さんがやってきた。
俺は玄関の戸を開けた。
「やあこんにちは」
この人は大家の“竹道 花音”さん既婚で、俺と同じくらいの娘がいる美人な方だ。
何回か話すうちに俺でもしっかりと話せるようになった。
「ああ大家さんこんにちは。ちょっと友達が遊びに来てて。」
「元気だね~、私の娘とも遊んでほしいくらいだよ~。」
「また機会があれば」
「ところで友達というのは親子なのかい?」
「誰が子供だ!」
ヒカリが飛び出しそうなところをガイアが押さえつけてくれた。
ヒカリは自分が子供だと思われたと思い文句を言おうとしたようだ。
頼むから面倒ごとを起こさないでくれと思いながら。
「恵まれない子と、恵まれた子なんです」
と説明したところ、
「なるほどねぇ。まあ、あんまり羽目を外さないようにね」
と言って大家さんは帰って行った。
「・・・」
「・・・」
「子供とか言うなー!」
ヒカリの声だけが部屋の中に響いている。
いつまで騒いでるんだあいつは・・・
「そろそろ静かにしてくれよヒカリ、また大家さん来るかもしれないぞ」
「・・・子供って言われたくないから静かになってやるよ」
ここまでくるとなんとなくだがヒカリの性格が分かるようになってきた。
オネイロスと会う時は、猫をかぶって俺の妹になりきり外面を良くしようとする。
だが友達や全く知らない人の前では素の自分を出し、何かから解放されたように好き勝手している。
性格は自分に自信を持っていてバカにされるのが嫌いってところか。
「そういえば」
ヒカリが口を開いた
「聡さぁ、さっきオネイロスと、私が禁忌だって話してたよね」
!?
聞かれてた?
あれはこいつに対しての秘密なんかじゃなかったのか。
てっきり秘密かなんかだと思って話さないようにしてたじゃないか
「してたけど、それがどうかしたのか?」
「その話したってことは、私がどうして禁忌かって理由も聞いた?」
「聞いてないな」
「あっそ、じゃあいいや」
どうやら教えてくれる気はないらしい。
「でもその話って本人には内緒っていうのが普通だと思ってたけど違ったんだな」
「いいえ、秘密ですよ」
ガイアがそう言い、話を続けた。
「もともと天使にも学校というのがあってそこで一つだけ能力をもらうことができるんです。私の場合ですとさっきやろうとしたように、能力を少しの間だけ奪うとかですね」
「ガイアその話はやめてくれる」
ヒカリがそう言うとガイアは話すのをやめてしまった。
もう少し天使の世界のことを聞いてみたかった。
まあ、ヒカリにとってこの話はあまり思い出したくない話なのだろう。
「ヒカリちゃんに怒られちゃいました、ガイアとても悲しいです。」
「あ~あ、ヒカリ~、ガイアさんのこと泣かした」
「なっ、私のせいじゃないわよ!もとはといえば言わないでってお願いしたことを言おうとするからいけないんでしょ!」
ごもっともだった。
確かに約束を破るのはいけないことだぞガイアよ。
「じゃあ私はお風呂入るから。お風呂入れてくれる聡」
「あ~言ってなかったがこのアパートに風呂はないぞ。ていうかまだ昼だし」
「お風呂がない!?じゃあどこで体を洗えっていうのよ」
「銭湯だ」
「「銭湯?」」
こうして俺たちは昼にもかかわらず銭湯に行くことになった。