Mission25.ヤキモチと『真珠石』
少し時間は遡って、一方その頃、臣下組はーーー
不機嫌そうな表情で弥厳は花のように草から生えた白い真珠を取った。太陽の光によって美しく輝く石、花のように生えているこれが『真珠石』である。何故、人間にはこの美しい石が見えないのだろうと思いながら弥厳は持参の小さな袋に石を入れた。
『真珠石』は加工すれば人間でも目にする事ができるがその前では人間の目にはただの石ころにしか見えない。
〈ねぇ、弥厳。機嫌直して?〉
背後、少し遠くの所から亜矢都の声。今の弥厳はフードをかぶっているが不機嫌なのはフード越しでも分かる。
〈オレ、機嫌悪くないけど?〉
〈そう言っとる所が機嫌悪いんじゃろうが〉
ん、と自分が持っている『真珠石』を弥厳の持参の小さな袋に入れようと横から灯茉が腕を伸ばした。弥厳が袋の口を開け、灯茉がその中に『真珠石』を入れる。その後に灯茉が弥厳のフードを外すと彼は抵抗せずにそのままだった。フードの下はやっぱり、不機嫌だ。
〈けいちゃんには弥厳がいるから狙わないわよー〉
亜矢都がやって来て袋に『真珠石』を入れる。亜矢都の弁解を聞いても弥厳の機嫌は良くならない。亜矢都が任務に行く前に言った事が原因ではないとしたら、なんだろうか?
灯茉は何か分かったらしく、小さく笑った。
〈螢の事が気になるのだろう?〉
〈あら、そうなの?……あ、そっか。あっちってけいちゃん、女の子一人きりだものね〉
亜矢都がなるほどなるほどと、パンと手を叩いた。図星のようで弥厳の顔がカッと赤くなった。
〈ちがっ〈言い訳しても無駄じゃぞ〉……うん、そうだよ〉
弥厳が図星なのを認めた。それに亜矢都は〈あら〉、と微笑ましそうに笑った。
〈いつも一緒だったから離れたらなんか不安で……最初はこの任務、楽しそうだと思ってたけどさ…うん〉
〈ヤキモチ焼いておるのか?〉
〈そっ?!そんなんじゃねぇ!〉
灯茉の言葉に弥厳が言い返すが灯茉と亜矢都から見れば分かれて行動している彼らにヤキモチを焼いているようにしか見えない。弥厳はなんとか言い訳を考えているようだったが何も思いつかなかったらしい。降参、と手を挙げた。
〈分かった、認めるよ〉
〈ふふふ、年頃の子って感じねぇ〉
亜矢都が微笑ましそうに弥厳の頭を撫でる。弥厳はなすがままだ。しばらくしてやめろと亜矢都の手を軽く払った。
〈………こんぐらいで良いかな〉
〈かわしよって〉
弥厳がその話題を逸らそうと小さな袋の中の『真珠石』をジャラジャラと揺らした。灯茉は〈本にお主は子供じゃな〉とクスクスと笑った。弥厳は『真珠石』が入った袋を腰のベルトに結んだ。しっかりと結ばれたのを確認して弥厳がよし、と頷く。と亜矢都が自分の腕を弥厳の首に回して楽しそうに言った。
〈ホントこの子、弟に欲しいわ!ねぇ灯茉、ダメかしら?〉
〈螢に聞け。妾は知らん〉
〈悪いがオレ、螢のもんなんで〉
〈〈ホント、リア充〉〉
弥厳が当たり前のように言った事に2人が呆れたように言う。ぷっ、と3人同時に笑い出した。何が可笑しいのかも分からないが3人は笑い続けた。
しばらく笑い、灯茉が言った。
〈さて、国彦達と合流しよう〉
〈そうね、合流しましょうか。ワタシはイヤホン持ってないから連絡はどっちかがしてチョーダイッ!〉
亜矢都が他人事のように言う。弥厳が呆れたようにはいはいと耳に入れたイヤホンからマイクを伸ばす。
〈おーい、隊長。こっちの任務完了した。合流したいんだが【-ガキン!!-】?!〉
〈?!今の刃物の音か?!〉
〈え、ナニ?なんなの?!〉
灯茉が耳に入れたイヤホンに手を当て驚愕した様子の弥厳と顔を見合わせる。その横で何も分からない亜矢都が灯茉を見たり弥厳を見たりとあっちこっち見ている。弥厳は緊張した面持ちでマイクに向かって叫んだ。
〈おい!どうした?!〉
【-ギンッ-…おお!弥厳か!悪りぃな。今ちょっと『忌鬼』と戦闘中、でっ!】
【え、今のやっくん?】
〈!螢!大丈夫か?!〉
【大丈夫大丈夫!!】
弥厳があちらと会話している間に灯茉が亜矢都に事情を説明する。亜矢都は慌てたように〈ちーちゃん大丈夫かしら?!〉と叫んだ。それを灯茉が落ち着かせる。
【悪りぃが応援に来てくれや。数が多すぎ、るぅ?!っと、あっぶねぇな!?】
【西珠!集中しろ!!】
〈分かった、今からそっち行く!〉
弥厳が電源を切り、2人を振り返る。2人は力強く頷き返した。
〈お助けに行くわよー!〉
〈さて、行くか〉
〈臣下組、移動開始〉
3人は彼らがいるところに向かって大きく跳躍した。
さあ、主様を助けに参りましょう
これはヤキモチと云うのか疑問……




