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禁忌×戦闘ディストーション  作者: Riviy
第一章 戦闘支部第十五期候補生
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Mission11.最終試験終了と所属決定



国彦の番が来た。まさかの相手は千聖だった。


「手加減無しだよ千聖」


灯茉が持つ大太刀の柄を持ち、スラッと抜き放つ。千聖も大斧をブンッと振って構える。


「そっちこそ」


小乃刃教官の「始めっ!」と云う声と共に2人は大きく跳躍した。

ガキンッと2つの刃が交差する。千聖が大斧を振り、国彦の武器を弾く。国彦は後退した後、一気に加速し、上段から大太刀を振り下ろした。千聖はそれを受けるわけにはいかないと判断し、避けた。ガンッ!と大太刀が床に叩き付けられる音が響く。国彦が悔しそうに顔を歪めながら振り返るところに大斧を振り回す。


「うわっ」

「気ぃ抜くと実戦で死ぬぞ?」


紙一重で大斧をかわし、千聖のおちょくるような物言いに国彦はプクウと頬を膨らませた。そして大太刀から手を離し、そのまま千聖に向かって蹴りを放った。その蹴りは顔を狙ったのか肩を狙ったのか、千聖は紙一重で顔をそらしてかわす。


「おっまっ!?あぶねぇ!」

「実戦の話したのはそっちでしょー」


今度は回し蹴り。千聖は腕でギリギリ防いだので少し痺れたくらいだったが、ブンッと国彦に向かって大斧を振る。それを空中で一回転してながら国彦はよけ、大太刀を再び持つ。そして2人は刃物を交差させ合い、弾き合うのを繰り返した。激しい攻防に模擬試合が終わった候補生達も終わっていない候補生達も部隊の隊長達も全員が見入っていた。緊張が空間を支配する。


ーガキンッー


火花が散った。ビリッと千聖の手元に痺れが走る。痺れに顔を歪ませる。それを見逃さなかった国彦。国彦は千聖の大斧を持つ手元目掛けて足を振り上げた。


「いっ?!」


千聖の手元から大斧が弾かれ、空中に投げ出された大斧を灯茉が何気無く空中でキャッチした。このまま大斧が落ちて行ったらある意味大惨事なので許されるだろう。

千聖は痛みを堪えながら国彦のように蹴りをお見舞いした。がそれを国彦はいとも簡単にかわすと千聖の足を刈った。バランスを崩した千聖はガンッと頭を床にぶつけた。痛む頭を庇いながら体を捻って立ち上がろうとする。


「っ」


がそれより先に千聖の首筋に大太刀の切っ先が突きつけられた。


「おしまい、だよ千聖。まだ千聖がやるってんならこの刃どいてみせて」


国彦が挑発的に笑うがそもそも武器である大斧がない以上、千聖の攻撃パターンは限られる。それに、もとより国彦に勝てるとは思っていない。一本取れるかな、くらいには思っていたが。

千聖はその挑発を嘲笑すると「降参」と両手を挙げた。


「降参降参。クッソ」

「……まだやると思ってた」

「俺は自分の引き際くらい分かってるつぅうの。手、貸してくれ」


ポカン…とした後、国彦はクスッと笑うと千聖に手を貸した。立ち上がった千聖と国彦に周りから称賛の拍手が送られた。それに2人が恥ずかしそうにはにかんだ。


〈お疲れ様!ちーちゃん、国ちゃん!〉

〈お疲れ〉


頭上から大斧を持った灯茉が降りてきた。灯茉から大斧を受け取ったところで拍手が止み、小乃刃教官が「次の者!」と叫んだので慌てて光希と壱華がいるところへ退場したのは云うまでもない。


**


「全員の模擬試合が終了した。ではこれより戦闘支部の各部隊の隊長が自分達の部隊に入れる候補生の名を呼ぶ。呼ばれた者は前へ出、所属の意を示す事。それでは第一部隊隊長から」

「第一部隊隊長だ。候補生からはーーー」


着々と運命の所属が決まって行く。

戦闘支部の部隊は防衛部隊と一昨年新しく出来た部隊を合わせて十四部隊ある。一部隊の人数はその部隊によって異なっている。部隊ごとに受け持つ仕事が異なる事もあるが大体は『忌鬼きおに』討伐である。防衛部隊は『忌鬼』によって被害を被った地域の復興と防衛を主に扱い、他の部隊へ協力要員として出向く事もある。


「あー悪りぃけど、乱入させてもらうわー」

「防衛部隊隊長!今は第五部隊だろう?」


突然、第五部隊隊長の言葉を遮るように言い放ったのは防衛部隊隊長。防衛部隊隊長は「だから悪りぃって言ってんだろ」と悪びれる様子はない。


「いっつも第五部隊に優秀な候補生やつら持ってかれるからよぉ、先に言わせてくれよ」

「そういえばいつも持っていくもんね」

「第五部隊は最後に回した方が良いと思いまーす」

「優秀な候補生じんざいよこせー」


防衛部隊隊長の言葉に第五部隊にいつも優秀な候補生を持っていかれる第六部隊以下の隊長達が抗議した。それに第五部隊隊長は迷惑そうに眉を潜めたが「言えよ」と最後に回る事を承諾した。よっしゃ!と喜ぶ第六部隊以下の隊長達。まだ所属が決まっていない候補生にとってはまさかの展開である。見事、戦闘支部で一番強い部隊から許可を取った防衛部隊隊長が満足げに候補生の名を呼んだ。


「防衛部隊は灮兼みつかね 光希みつき栗粟くりあわ 壱華いちかを貰うぜ」

「「?!」」


呼ばれた2人は驚いたようだったが一歩前に歩み出て承諾の意を示した。


「戦闘支部第十五期候補生、灮兼みつかね 光希みつき、戦闘支部防衛部隊への所属、承諾致します」

〈同じく戦闘支部第十五期候補生、栗粟くりあわ 壱華いちか、戦闘支部防衛部隊への所属、承諾致します〉


光希と壱華の代わりに代弁したシルクの意を受けて防衛部隊隊長は再び満足げに笑った。


「宜しくな、2人共!」


防衛部隊隊長が言う。2人は頭を下げ、列に戻る。そして第五部隊を抜かして他の部隊隊長が候補生の名を呼んでいく。


「第十部隊は隊長が急用で来られなくなったので代理で副隊長が名前呼びまーす」


第十部隊。隊長の代理で副隊長と聞いて国彦は副隊長を見た。副隊長は模擬試合をやる前に話していたあの少年の主だった。少女は名を呼ぶ前、国彦と千聖を見た気がした。


「第十部隊は神居かむい 国彦くにひこ斬原きりはら 千聖ちひろを指名します」


呼ばれた2人は顔を見合わせた後、一歩前に出て承諾の意を示した。


「戦闘支部第十五期候補生、神居かむい 国彦くにひこ、戦闘支部第十部隊への所属、承諾致します」

「同じく戦闘支部第十五期候補生、斬原きりはら 千聖ちひろ、戦闘支部第十部隊への所属、承諾致します」


2人、主に国彦が頭を下げると副隊長はうん、と嬉しそうに頷いた。


「うんうん、宜しく」


着々と所属が決まって行き、候補生全員の所属が決定した。明日からは所属先の部隊で『忌鬼きおに』討伐などの任務に専念する事になる。


「いち兄と同じ場所ー!また宜しくねー」

〈はい、宜しくお願いします、光希様〉


光希が壱華に笑顔で言うと壱華も笑ってまた宜しく、と頭を下げた。


「千聖、まだ宜しくね」

「嗚呼、まだ、な」


国彦と千聖はクスクスと笑い合う。さっきまで「離れたら」なんて話をしていたのに一緒の部隊。心配した意味がないじゃないか。


「本日で訓練は全て終了!明日からは所属先で頑張れ。お前達ならそれぞれの所属先でやって行けるだろう…それでは、解散!!」


小乃刃教官の誇らしそうな笑顔と挨拶に候補生全員がピシッと彼女への感謝の意として敬礼する。


『ありがとうございました!!』


誰ともなく叫んだ言葉が重なる。小乃刃教官は嬉しそうに笑い、敬礼を返した。


戦闘支部第十五期候補生、全日程の訓練終了


第一章、終了

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