Mission10.最終試験
お久しぶりです!投稿!
4名の追放者(一人は自主辞退)が出たその後は何事もなく過ぎて言った。
そして
訓練最終日
本日は自身の実力次第で自分の所属先が決まる大事な日だ。候補生全員の顔に緊張が宿っている。
「頑張ろうねくー兄、ちー兄、いち兄!」
両の拳を握り締めて光希が言う。国彦が光希の頭を優しく撫でると光希は嬉しそうに笑った。その時
「これより訓練の成果を見せて貰う!戦闘支部の全ての部隊の隊長が此処に出揃っている。自分の実力を精一杯発揮し、ライバルとの差をつけろ。お前達のような候補生を訓練出来て嬉しく思う……それでは、最終試験、模擬試合を開始する!!」
小乃刃教官の開始の声が響き渡った。教官の隣には戦闘支部の全ての部隊の隊長が候補生達の実力を見ようと立っていた。小乃刃教官によって呼ばれて行く候補生達。始まる戦闘。隊長達が小さい声で話し合いながら試合を観戦している。残りの候補生達は最終点検や最後の訓練をしたり気持ちを落ち着かせるために友人と会話したりしている。
「栗粟 壱華!」
〈我が主の番のようですね〉
壱華の名前が呼ばれ、彼が真剣な表情で行ってくると3人に頭を下げた。3人は壱華に頑張れと声をかける。壱華はシルクを一撫ですると2本の短剣になった彼を握り締め、前に歩み出した。
「今から呼ぶ者は準備を進めておけ。灮兼 光希!」
「うえ?!次ぃ?」
「頑張ってねみっちゃん」
「ヘマすんなよ」
「むっ!頑張るもん!」
緊張する光希に国彦と千聖が声をかけ、緊張をほぐす。光希はニッコリと笑って剣をバシバシと叩いた。剣から〈むにゃ…?〉と声が聞こえた気がした。光希はよしっと息巻いて壱華の後を追って走って行った。
「にしても…もう訓練終わりか」
「千聖はもっとやってたかった?」
ちょっと悲しそうに言う千聖に国彦が問うと千聖はそれもそうだけどな、と前置きした。
「友人と離れるのはツライなぁって」
〈ちーちゃんって案外寂しがりやだものね!〉
「亜矢都は黙ってろ!!」
〈ふふ〉
千聖を茶化すように亜矢都が言うと案の定、千聖の怒鳴り声が返る。なんとなく、照れ隠しのようだと国彦も分かってきていた。灯茉がクスクスと笑う。
〈照れ隠しが大声で怒鳴るとは…面白いのぉ〉
「あ、灯茉、それ言っちゃダメ!」
「面白いとか言うな!」
「ほらぁ!」
今度は灯茉に噛み付いた。それに灯茉と亜矢都が笑い出す。国彦も怒っていた千聖も笑い出す。なんだか緊張も不安も吹っ飛んだ。笑疲れた頃には小乃刃教官に「静かにせんか」と睨まれたが。
「千聖は大丈夫だよ、僕が保証するから」
「んじゃ俺も保証するな、お前がちゃんとやって行けるって」
「うーんでも、離れたがたいね。千聖の言う通り」
「だろ?」
千聖がなっ?と神妙な顔付きで国彦に言うと…しばらくして2人は笑った。今度は小乃刃教官に怒られないように小さく笑った。灯茉と亜矢都も小さく笑う。
「壱華さん、勝ちそうだね」
「まぁ壱華は身軽だからな」
「みっちゃんも勝つね」
「あんなちっこい体と最年少で剣振り回してんだからな」
壱華の模擬試合を見ながら2人がチームメイトを褒める。その隣では灯茉と亜矢都が〈チームメイトバカねぇ〜〉〈友人バカじゃな〉と呆れ声である。
「そういえば戦闘支部の部隊で一番強いのって何処だっけ?」
「お前なぁ…忘れちゃいけねぇだろ」
「ごめんー」
国彦の問いに千聖がオイオイと呆れる。国彦は恥ずかしそうに頬をかく。千聖は小乃刃教官の隣に立っている男性とその隣に姿勢を正して立っている青年を示した。
「小乃刃教官の隣の人いんだろ?戦闘支部第五部隊『黄金帝龍』の隊長。第五部隊が一番強い」
「へぇ〜千聖、よく知ってるね」
「お前が知らなすぎなんだよ」
千聖が軽く国彦の頭をどつくと彼はオーバーリアクションを取る。それにまた笑う2人。
一番強い部隊に全員が所属を望むが選ぶのは隊長だ。自分のわがままなんて通らない。
〈あ、あの…〉
「「?」」
その声に2人が振り返ると少年がいた。いや、正確に言えば頭からフードをかぶった性別不明の子。それでも男と分かったのは声だった。声変わりが終了したのか少々低い声。それが決め手だった。
「どうしたの?」
何処かで見たような…と国彦が思いながら少々しゃがんで少年に問う。と灯茉が何かに気づいた。
〈国彦、その童、あの時の神だ〉
「え?あの時の神?」
「嗚呼、あの時のかー」
灯茉の言葉に千聖が納得してうなずくが国彦はまだ分からない。
「ほら、あのバカ王太子の元臣下」
「嗚呼!あの子!?」
千聖の説明でようやっと記憶の底から出てきた。そうだそうだ。この子はあのバカ王太子の元臣下だ。治療が終わり、完全回復したのか。
〈はい、あの時はありがとうございました。あんの馬鹿から逃げる口実に失礼ながら利用させて貰いましたが〉
「はは…ところで何してるの?」
〈はい……実はと言うと、オレの新しい主が戦闘支部の部隊の副隊長をしてるんだ〉
〈敬語疲れるから素でいくな〉と少年はフードで隠れて見えないが意気揚々と話した。あのバカよりも良い主に巡り会えたのは国彦と灯茉のおかげだと何度も頭を下げた。灯茉は満更でもなさそうに笑っていたが国彦は「僕はなんにもしてないよ」と遠慮気味であった。
〈にして、お主の主とやらは?〉
〈嗚呼、今日の見学に隊長が急用で来られないから代理で来てる。ほら、あそこ。入り口の近く〉
そう示された場所には少女がいた。傍らの壁には武器が立て掛けられており、少年を見つけると笑顔で手を振った。
「良かったね良い主に巡り会えて」
〈うん、本当貴方達のおかげだ。ありがとう〉
少年はもう一度、お辞儀をして少女の元へと走って行った。入れ違いで壱華が戻ってきた。
「おかえり、壱華さん」
〈勝ちました!我が主の実力を認めてくれると良いのですが〉
〈大丈夫よ〜いちちゃんは強いものねっ〉
しばらくして光希の模擬試合を観戦し始めた。




