act3
とりあえずどうする。
わたしは考えこんだ。
目の前に死体。
ココがゲームの世界。
考えれば考えるほど混乱してきた。
少年を追いかけるか。
死体を調べるか。
そう考えると追いかけるほうがいいに決まってる。
わたしは少年の逃げた方角へ走った。
が、その方角の廊下は実に入り組んでいて、もはや少年がどっちへ行ったか調べるすべがなかった。
……しかたない。
きた道を引き返した。
バラバラ死体なんて見たくもないが……。
「人生苦難があってもいいものよね」
震える声でそう呟いた。
バカがつくほど前向きなのはわたしのとりえだと思う。
「え、あれ?」
たしかにここにあったはずだ。
「う、嘘、死体が消えてる!」
そんなばかな。
血のあとはのこっていたが、あのバラバラだった死体が消えた。
ほんの30秒足らず目を離しただけなのに。
「ど、どど、どういうこと?」
急に恐ろしくなった。
あんなものが生きてるわけがない。
切断面まではっきり見えたのだ。
なのにこれって――。
「おい」
「きゃあ!」
「うわっ」
後ろから突然声をかけられた。
振り返るとそこにはちょっと不良っぽいチャラチャラしたニット帽青年と16、7ぐらいの白髪のショートボブの女の子のふたり。
白髪女の子の服装がタンクトップに森林迷彩の長ズボンと男っぽい。
女の子なのにミリオタなのか?
「びっくりさせんなよ」
それはこっちのセリフだ。
そういいたかったがぐっと飲み込んだ。
「アビリティ次第でおれらと組まないか? 悪いようにはしないぜ」
「ア、アビリティ? なにそれ」
「おいおいなにいってんだよ特殊能力に決まってんだろ。開始してから20分経ってんだ。さすがに見てないってことはないだろ?」
何の話やらわからん。
「御子柴くん、この子わかってないみたいですよ」
隣の白髪女子がニット帽にボソッという。
「もしかして初心者かコイツ。でもまったく知識ゼロってわけでもないだろ」
「さぁ、そういう子いるんじゃないですか? ルールもなんにもわかってないプレイヤー。わたしだってはじめはそうだったし」
「ウォッチかせよ」
ニット帽が手を伸ばしてくる。
「ウォッチってなに?」
「ポケットに入ってるやつに決まってんだろうが!」
ニット帽が怒鳴ってきた。
なんつー短気なヤローだ。
でもコイツのいうとおりポケットの中に何か入っている。
取り出してみるとそれはスマートフォンみたいな携帯機器だった。
「さっさとかせよ」
取り上げられた。
「おいおい、電源もいれてねーのかよ」
ニット帽がグダグダいう。
「で、どうなの? アビリティは」
「へっ、使えねぇクソアビだ」
ニット帽がそう呟いてわたしのほうに投げ返した。
見ると画面に文章が表示されていた。
『このアプリを発動している間、半径20m以内のレーダーをジャミングする。バッテリは1時間で5%減少』
どういうことだ?
「ちょっと待ってください」
「あ?」
「ここって本当にゲーム世界なんですか?」
「なにいってんだテメェ、たりめーだろ」
変な現実をつきつけられた。