表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

目先の不幸

作者: naco

高校2年生のある日、私は今までの人生で1番好きな人に振られた。


最初の2日はなにも考えられなかった。

頭は真っ白で生きてくので精一杯。


次の2日はショックでいっぱいだった。

今までのはなんだったんだろう、とか。


そのあとの3日は死にたかった。

今までで一番好きだったのに。相手だってそう言ってたのに、他の女を選ぶって、嘘つきじゃない。

そんな風に思って色々な死に方を考えた。

考えただけで怖くてできなかった。


その次の日は屋上のフェンスの外に出た。

正直なことを言うと怖かった。

だからそこでしゃがみこんで泣き出した。


そんなとき、誰かの声がした。

「あなたはなんで泣いているんだい?」

答えたくもなかった。

でも答えてしまった。

「そうか。でも、あなたはまだ17歳だろ?80歳まで生きるならまだ4分の1だ。」

「確かに彼は今までの人生で1番だったのかもしれない」

「でもこれからの人生、もっと素敵な人に出会えるかもしれないよ。」

「そんな人ととても幸せになって、彼を見返してやればいい。」

「私みたいないいオンナ、捨てて後悔してるでしょ?って。」

「それから例えば彼が言いよってきても、もう遅い、あんたは見る目がないわね、って笑い飛ばしてやればいい。」

「どう?ここでもっと素敵な人を捨てて死ぬよりも、見返してやる方がとても幸せじゃないか?」

「あなたなら大丈夫。自信を持って。」


それだけ言われると顔を上げた時には誰もいなかった。



だから今でも誰の言葉かは知らない。だけど救いになったのは確かで、この日から私は今までで、1番、彼のずっとそばにいれるように、と思っていた頃よりも美しくなって、友達も増えて、人生は充実して行った。


それから数年後、私は普通の顔で、普通のサラリーマンで、普通の家系の人と結婚した。


それだけで幸せだった。


お互い愛し合っているのだから。


もうあの言葉は忘れかけていた。


でも子供が産まれた時、私昔は死のうともしたな、とか色々考えて思い出した。



そうだ、彼を見返すためだった。



でもそんなことは忘れていたのだ。彼なんて、たった17年の人生の中で1番だっただけなんだ、って。


でも彼がどうしてるのか、少しだけ気になった。



子供も少し大きくなって、実家に挨拶に行った時、母親が噂で聞いたんだけど、と、彼の名前を出した。



噂によると、

彼はあのあと色んなオンナに手を出して、最終的に美人局だかに合っただとか。

借金を払いきれずに首をつったらしい。


それを聞いて哀れだな、と思った。

もしも、あのころ私を捨てなければ、こうは、ならなかったのに。とか。


でもあの人と別れて、あの声と出会って、今の旦那と出会って私は幸せになれた。


だから、

あの声に言われたように、

私は笑い飛ばしてやった。

目先の不幸で泣いてた私に対しても。


旦那に不思議がられたけど、

私のことを捨てた男のお話、と言うと旦那は「もったいないことをしたんだね。」とお互い苦笑したのだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ