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三女
「ねえ、あの噂知ってる?」
「何々」
話しているうちに夜になった。さっきまで夕日が出ていたと思ったけれど? はて?
「だからぁ、夜0時の学校だって」
「あぁ、私怖いの苦手」
「でも、やるよ」
「うん」
私たちは音楽室に向かって歩き出した。
防音扉は開けるのに苦労する。私たち二人は重い扉を二人で押した。ギギギと、不気味な音が耳につく。初めてのことのはずなのに、何回もきいたことのあるような音だった。
自然、私の足はゆっくりとそこに近づいた。
ピアノの真下の絨毯をはくると、地下への扉が顔を出す。たいして驚きもしなかった。初めてのはずなのに、何か、違和感を感じていた。
ノックしてみた。誰もいるはずのない地下からは、しかしノックの返事があった。ああ、またか。私は徐々に記憶を取り戻しつつあった。
トモコが虚ろな目を向けてくる。暗闇に映えるその目は、何かを欲しているようだった。私も同じような目をしているのだろう。私たちは鍵の解錠の音とともに、ゆっくりと扉を開けた。