初女
夕日が沈む。太陽が消える。終わりが見える。昼休みが、終わる。
私は今、教室にいた。夕日が見える。トモコがいる。トモコが言う。
「ねえ……」
夕日が沈む。太陽が消える。終わりが……
「ねえ、あの噂知ってる?」
「何々」
昼休みが終わる。太陽が沈む。ぐらぐらと、視界が歪んで……。
「ねえ、あのうわさ、しってる?」
「なになに」
ヒルヤスみがオわる。タイヨウがシズむ。ぐらぐらと、シカイがユガんで……。
暗転した。
「ねえ、あの噂、知ってる?」
「何々」
放課後の教室、夕焼けが私たちを包む。辺りには誰もいない。私とトモコの二人だけ。トモコは噂話が大好きなのだ。
「だからぁ、夜0時の学校だって」
特に怪談話を好んで話したがる。あまり付き合いは長くないのだが、トモコは私と仲がいい。お互いに昔から知っているような、そんな錯覚に陥ることもある。
「あぁ、私怖いの苦手」
「でも、やるよ」
昨日もそんなことを言っていた気がする。深夜0時の学校に侵入。音楽室に行くと地下への扉が開くらしい。
「やだよー。怖いよー」
半分グズってトモコの同情を誘う。
「あかん、やるよ」
まあ失敗するわけだ。トモコはやると決めたら止まらない。私じゃあ止まらない。もっと優秀な人を呼んでおくべきだったのだけれど、そんな機転は効かなかった。
夕日が一瞬で沈んだ気がした。