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幻想世界の放浪者

幻想世界の放浪者

作者: 紫貴

 22世紀、現実世界とは別に電脳世界が確固たるもう一つの世界として存在していた。

 脳波に干渉する専用端末がどの家庭にも一つ、いや、一人一機が当たり前の時代。

 そんなヴァーチャルリアルティが当たり前の世界で、とあるIT企業が最新の端末機器とオンラインゲームの制作を発表した。

 従来のVRで体感できる電脳世界は視覚と聴覚、簡略化した触感のみの再現であった。だが、最新型は目と耳は当然として簡略化されていた触感をより鮮明に、嗅覚や味覚までも体感できるようになる代物だった。

 そしてその最新型端末を最大限に活用できるゲームが同時に開発され、世界中で話題となった。

 先進国全てに拠点を持つ開発元のIT企業はテスターを世界中から募集、彼らにゲームをプレイさせることで端末のテストを行い、同時にテスター達の意見を元にオンラインゲームの完成度も上げていった。

 そして開発発表から一年以上たったある日、企業は新型端末販売の数日後にオンラインゲームのオープンβテストも開始すると発表。

 既に世界中で話題となっていた事、新型端末の値段が高価に違いないが、十分に一般家庭の手の届く範囲に入っていた事、オンラインゲームをプレイする分には従来の端末でも可能だった事から参加登録する者が万単位で殺到した。

 企業はより多くの人に新型端末でのプレイを経験してもらう為のキャンペーンなども開催し、現実世界と電脳世界ともに大きな賑わいを見せた。

 だが、オープンβテストが開始されてから数日後、誰も予期していなかった事態が起きた。

 プレイヤー達のログアウト不可。外部との連絡遮断。モンスターによって倒されたプレイヤーが壮絶な悲鳴を上げて消滅し、復帰しない。そしてプレイヤー達の前に現れる不気味なGM。

 ゲーム内での死は現実世界での死を意味し、最高と称えられたVRMMOは悪魔のゲームと化してしまったのだった。

 残されたプレイヤー達は生き残る為、現実世界に帰る為にも、ゲームクリア条件の魔王達を倒すために広大な電脳世界の旅へと出掛けていった。


 ――が、そんな事は俺にとってどうでもいい事だった。

「腹減った」

 平原の真ん中でテントを張り、即席かまどの上にサバイバルキットの鍋を乗せ、鍋の中のシチューをぐりぐりとかき混ぜる。

 PL達の多くは魔王達を倒すために頑張っているようだが、俺は特に現実世界に帰りたいとは思っていない。だからと言って死にたい訳でもなく、ゲーム内で骨を埋める気もない。

 要は誰かがどうにかしてくれるのをこの広大な世界を放浪しながら待っている。

 そんな他人任せで無気力なPLが俺なのだ。

「ん?」

 気配探知スキルが自動で何かが接近するのを察知した。

 亀のようにゆっくりと近づいてくるそれに視線を向ける。

 草の中、地面を這って進む生き物がいた。というかどう見ても人、しかもPLだった。

 PL(男)はパンツ一丁で瀕死の状態だった。

「他のPLに強盗されたか」

 モンスターだったら単に食い殺されるだけだろうし、知能の高いNPCの魔族なら身ぐるみを剥ぐこともあるが結局は殺す。なら、瀕死状態で放置するなんて半端な事をやるのはPLだ。

 PK上等でまともな治安機構も法もないこの世界、強盗紛いの事をやるPLも結構いる。

「運が無かったな。まあ、女プレイヤーと比べればマシだろ」

 強盗にソッチの気があれば別だが。

「た、助けてくれ……」

「えー」

 見たまんま何も持ってない奴を助けて何の利があるのだろうか。

「ひ、ひどい」

「しょうがない」

 男の目に希望の光が浮かぶ。

「シチューが出来て、それまで生きてたら助けてやる」

 そして一気に絶望に落ちた。

 弱いながらも毒を食らっているらしく、男の体力は徐々に減っているようだ。どのみち瀕死状態でこんなフィールドにいればモンスターにやられるだろうが。

「お、鬼……」

 死に体の言葉など無視して鍋をかき混ぜる作業に戻ると、少し遠くから俺の名を呼ぶ声が聞こえた。

「クゥさーん」

 声のした方角に振り向けば、夕飯の材料として狩りに行っていたアヤネとソフィーが戻ってくるところだった。

「クマのお肉が――わぁっ!? どうしたんですかこの人!?」

 白いロープの裾をはためかせ、駆け足で近づいてきたアヤネがパンツ一丁で倒れている男を見てびびる。

 まあ、当然だが。

「だ、大丈夫ですか? 今、回復させますから」

 そしてこの善人っぷりである。

「ぉ、おお……あなたは天使だ」

 アヤネの治癒魔法を受けて回復してきたパンツ野郎が調子のいいことを言い始める。

「クゥ様、こちらの変質者はなんですか? ご同類の方でしょうか」

 少し遅れてソフィーが到着する。喋りながら、エプロンドレスのポケットから食材アイテムの熊肉や野菜を取り出して鍋に放りこんでいく。

「違う。なんだよご同類って。それよりも肉をホイホイぶち込むな」

「入れてしまえば一緒でしょうに」

「その通りだが、メイドロボのくせに何て言い草だ」

 と、俺達が言い合っている内に男の治療が終わった。

「もう大丈夫ですよ」

「ありがとうございます。おかげで命拾いしました」

 パンツ男が起き上がり、見た目の変態さとは裏腹に礼儀正しく頭を下げて礼を言う。

 が、アヤネの顔を見るといきなり驚きの声を上げた。

「ま、まさか歌姫!?」

「え? え、ええっと……」

 助けを求めるチワワの視線を向けられたけど無視。

 アヤネはゲーム開始時から歌スキルの熟練度を上げていた。本人が歌うのが好きという理由で自然と上昇していっただけなのだが、この歌スキル、初期の頃は戦闘では大して役に立たない死にスキル扱いされていた。

 だが、このスキルは一定の熟練度を超えたところで化けた。

 集団戦においては他の追随を許さないほどの支援スキルになったのだ。

 容姿とスキルの熟練度とは別に歌唱力の高さから歌姫と、歌スキルの真価を目撃したPL達が騒ぎ始め、あまつさえファンクラブまで作る勢いでアヤネの人気は上昇していった。

「あのっ、サイン下さい!」

 言ってミーハーパンツ男は何かサインできるものがないか探し始める。しかし彼はパンツ男なのだから、パンツしか持っておらず色紙代わりになるものなんて当然持っていない。。

「これにお願いします!」

 叫び、男は後ろを向いて尻を突き出した。

 変態だ。それ以外表現のしようがない。

「はい、そこまで」

 そこに、ソフィーが割って入った。

 彼女はモップ(水属性の槍装備)をクルッと回して男の股間を殴打する。

 リアルに近いこの電脳世界において、性別:♂に対しての股間攻撃は当然クリティカルヒット扱いだ。

 変態パンツは悲鳴を上げ、セガレを押さえながら倒れる。

 ソフィーは中堅PLなど相手にならないほど強いので、下手したら一撃で死んでいた。まあ、その当たりの加減はちゃんとしているだろう。

「チッ……」

「………………」

 この女、生きてる変態パンツを見て舌打ちしやがった。

「アヤネ様と話をしたいなら、ますこちらを通してください」

「お前はマネージャーか」

「あ、あはは……」

 アヤネがどうしていいか分からず苦笑いで誤魔化す。

「治療してもらっただけでも感謝してください。……これをどうぞ」

 俺の言葉とアヤネの苦笑いを無視して、ソフィーが一枚の札を取り出した。

「これで始まりの街に戻れます」

 街に行けば倉庫もあるし、始まりの街周辺に出るモンスターなら裸一貫でもなんとかなる。

 それらを考慮して上で帰還札を渡したようだ。

「か、重ね重、ね、すみ、ません…………。そ、それと、大変失礼しました」

 かわいそうにまだ痙攣するパンツマンはさっきの非礼を詫びて、帰還札で転送されていった。

「まったく、最近あのような輩が目立つようになりました」

「お前が言うな」

 良くも悪くも肝が据わってないと生きていけない世界なのだ、このゲームは。


 バチッ、と空気の割れるような音が焚き火からした。

 なんとなしにアヤネの方に視線を向けると、毛布にくるまって小さな寝息を立てながら眠ったままだ。

 パンツマーンが去ってから数時間後、飯を食い終え、野宿の準備を完了すればちょうど夜になった。

 街道からも外れ、草原フィールドの真ん中にあたるここでは焚き火によって赤く照らされた場所以外は完全な暗闇。

 やれる事も少ないこの時間、早々に寝て日の出と共に起きるという現実世界ではあり得ない健康的な生活習慣がPL達に出来上がっている。

 草の絨毯の上で横になった俺はアヤネから掲示板へと視線を戻す。

 宙にに浮かぶワイド画面のモニターから見る事のできる雑談スレは、就寝前のPL達が意味もなく書き込みを続けていた。

 このゲームには専用のネットワークがあり、通常の電脳世界と同様の操作方法でPL達が立てた掲示板を閲覧することができるのだ。

「何か面白い情報でもありましたか?」

「いんや。ただ、武闘派ギルドの連中が集まって、魔王退治に行く準備をしてるらしい」

 ソフィーはまだ起きていて、何か編み物をしている。

 彼女の種族はウォーカロン。世界設定では太古の昔に作られた機械人間、つまりロボットだ。

 そもそもソフィーはPLではない。俺があるイベントで手に入れたNPC、高度な感情プログラムを持つAIだ。俺達PLと違って睡眠など元より必要ない。

「魔王退治ですか。私達には関係ありませんね」

「そうだなー」

 とうとう魔王の一人に挑戦とか言ってスレは盛り上がりを見せているが、クリアを他人任せにして目的もなくブラブラしている俺には関係ない事だった。

 NPCであるソフィーはゲームのメタな発言やシステムの話題が出ると総スルーか世界設定にあった解釈をする。

 だから、こいつ相手にゲーム云々言ってもしょうがない。

 アヤネは…………アヤネはどうなんだろう。

 ソフィーは俺の所有物扱いなので一緒にはいるが、アヤネとはパーティーも組んでいなければ同じギルドにも入っていない。

 ただ単に、彼女が俺の後ろをついてくるのだ。

 アヤネとの出会いは、ログアウト不可と判明した直後だ。

 死ななければいいだけだとすぐに割り切った俺は始まりの街を出、モンスターでも狩ろうかとフィールドを彷徨っていた時、人目のつかない林の中でPL同士のいざこざを発見した。

 どうやら、事態を冷静に受け止めれなかったPLが錯乱し、他のPLに乱暴を働こうとしているところだった。

 興味ないので、最初は立ち去ろうとしたんだが、その襲おうとしている側のPLに見覚えがあった。

 学生の頃、俺をリンチにかけた男だった。他人の空似でなければ間違いない。

 顔を見るまで私刑の事なんて忘れていたのだが、思い出したら腹が立ってきた。

 なので、奴が装備を脱ぎ始めた瞬間を狙って殺してやった。その時に組み伏せられていたのがアヤネだった。

 それからだ。アヤネと縁が出来たのは。

 結果的に一人の少女を救ったことになるのだが、俺は殺した相手の所持品を売るためにアヤネを放置して次の街に向かった。しかし、それから何度か出会い、時にはパーティーを組み、面倒なクエストを共にクリアし、その度に置き去りにした。

 そうしたら、なんだかいつの間にかこんな形に収まってしまっていた。ううん、謎だ。

「歪んでますね」

「なにが?」

「ここの編み目が」

「…………」

 また、音を立てて焚き火から火花が散った。

 俺はソフィーを無視して、別スレの『ギルド<鈴蘭の草原>応援スレ』を見る。

 打倒魔王に意気込むスレと違って、何故かこっちはフェチについて熱く語り合っていた。阿呆だ。

 応援するギルドの団長が巨乳巫女な上に副団長が人妻シスターだけあって、それのファンをやっているこのスレの住人はどこかズレている。

 巻き込まれるのは嫌だが、端から見る分には面白い。

 ゲラゲラと馬鹿の馬鹿騒ぎを笑ってみていると、いきなり別ウィンドウが空中に投影され、フレンドチャットが立ち上がった。

「ああ?」

 チャット用のウィンドウに表示された文字列を見て、俺は眉をしかめた。


 翌日、俺達はフィールド上に存在するショートカット用の転送装置をいくつか経由して、とある大きな港町に来ていた。

 アヤネやソフィーからは街に入ったところで見つからぬように抜け出して、俺は裏通りを進み、段々と治安の悪くなる方向へ行く。

 そして時々ガラの悪そうな連中がたむろしている裏通りから出ると、そこはいかにも怪しげな店が立ち並ぶ大通りがある。

 繁華街のような妖しさと賑やかさを見せる港町の裏、暗黒街だ。

 俺にとっては慣れた場所で、真っ昼間なのに酒に酔ったNPC達を避けながら道を進み、特に派手な館の近くまで来る。

 その館は訪れる男達を優しく包み込み、一夜の夢と希望を見せ、安らぎを与えてくれる場所。

 つまりは娼館だ。しかも高級。ここ大事、すっごく。

「久々だな」

 この街に来たら、まずこの場所に足を運ぶのが俺の習わしだ。

 と、いつものように正面から堂々と入ろうとしたところで足を止める。

 娼館の前、普段なら艶めかしい薄着の格好をした女どもが客の呼び込みをしている場所に一人の屈強な男が立っていたのだ。

 軽装の金属鎧、背中に担いだ大剣と盾、鷹のように鋭い眼光。腕を組み、仁王立ちするその男は誰が見ても歴戦の勇士であり、娼婦達の色気もどこ吹く風と言った様子だ。

 まさに男の中の男、漢がそこに立っていた。

「クゥ、見つけたぞ」

「いや、何やってんすか? キリタニさん」

 俺を見つけ、ようやく娼館から離れた漢の名はキリタニ。日本のサイバーテロ対策課の隊長であるサイバーポリスだ。

 ログアウト出来なくなって数ヶ月後、キリタニさんを含めて数名のサイバーポリスがゲームにログインしてきた。

 彼らサイバーポリスは、外部との通信プログラムを始めとしたいくつかのプログラムを持ったままログインし、中からシステムを修正できないかという実験の為にログアウト不可のデスゲームにわざわざログインした面々である。

 結局は全てのプログラムが弾かれて、ゲーム参加者の数を僅かに増やしただけに終わってしまった。

 だが、彼らは外の現状や自分の肉体、家族の事が気になっていたPL達に覚えている限りの事を教えてくれた上、積極的にゲームクリアに動いてくれている。

「アールが言っていたのだよ。クゥはまずこの娼館を訪れて、数日出てこないと。それでは困るから迎えにきた」

「チッ、あの犯罪予備軍め」

 要らん知恵ばかり働かせる。

「ほら、城に行くぞ」

「はいはい」

 遠くから成り行きを窺っていた娼婦達が客を目の前で逃がされて文句を言ってきた。というかこの波動……。

「おいコラッ、そこのサキュバス! 魅了かけようとすんな!」

 一喝するとサキュバス連中が館の中に逃げていく。

 領主のせいで人間亜人魔族の混成っぷりがひどい。

「今更だけどいいのかよ、警察の人」

「郷に入れば郷に従え、だ。それに二十歳未満は入れない仕様にされているからな」

 抜け道あるけどなー。

 まあ、見るからに未成年なPLはNPCの方が相手にしないけど。


 というわけで、サイバーなポリスメンによって俺は港町を見下ろせる高台に建つ城の中に連行された。

 通された場所は玉座の間。しかし、その椅子に座る者の姿は無い。代わりに、裏生地が赤の黒いマントを羽織った若い男が玉座の側に立っていた。

「やあ、早かったねクゥ。アヤネちゃん達には君が来るまでと思って、従者にお茶を振る舞わせているんだけど、意味がなかったかな」

「うっせぇよ、アール。腹空かしてるだろうし、別にいいだろ」

 吸血鬼と間違えそうな格好の男の名はアール。ここの領主の側近で……まあ、軍師みたいなもの。多分。

「君を呼んだのは他でもない。大変困ったことが起きてね。チャットでも言ったけど」

「大馬鹿が馬鹿に攫われるっつー馬鹿をやらかしたんだって?」

「そうそう。うちの馬鹿殿が誘拐されちゃって、困ってるんだよ」

「君達、いくら親しいからと言ってあまりバカバカ言うものじゃないぞ」

 比較的真人間のキリタニさんがツッコミをいれてきた。

「まあ、ともかく話を始めよう。うちの馬鹿殿を誘拐したのはNPCの盗賊団さ。どうやらこの街のイベントクエストだったらしくて、領主がPLに代わっても実行されちゃったんだよね」

 そう、この城の主である領主はプレイヤーだ。

 人族の支配領土である小さな大陸に存在する四つの国をはじめとしたこのゲームの偉い奴は全員NPCだ。

 なので、この港町を治める領主も当然NPC……だったのだが、馬鹿がそれを乗っ取った。

 領民を扇動し、反乱を起こし、領主を倒したことでまんまとその座を手に入れたのだ。

 NPCからその役職を奪うイベントなんて当然ないし、後に真似をし始めるPLはいたが、誰もが領主などは殺せてもその地位を奪うことはできなかった。

 どうやら肝は領民のNPCをいかに味方に引き込むかにあるらしい。

 そんな常識外れの事をやってのけた。だからあいつは馬鹿なのだ。

「街の規模も防衛能力も桁違いに上がって、馬鹿殿の行動も前の領主とまったく違うのによく誘拐したものだよ。システムのアドリブの高さにはホント驚きだ」

 アールの言うシステムはそのまんま電脳世界の法則、このゲームを構成し管理するシステムの事だ。

「それで馬鹿は生きてんの? 死んでくれてたら個人的に安息の日々が過ごせる」

 ジョークでも何でもなく、本気でそう思う。

「生きてるよ。生きてなきゃ誘拐なんて言葉使わない。だいたい、確かに性格に問題はあるけど彼がいなきゃ僕達PLは魔王軍に対して劣勢に立たされる」

「その通りだ。万が一彼が死ねば多くのPL達の死を招く事態を招くことになるだろう。彼の代わりを出来る者などいないだろうからな」

「同感したくないが、その通りか……」

 それが馬鹿の厄介なところだ。

 奴は領主になってからはNPC相手に商売を始め、悪徳商人も真っ青なNPCとの駆け引きに勝ち続けた。

 ある程度の財力を得た馬鹿はその後、PL達に仕事を斡旋し始める。

 まずは死に直面するのが怖くてなかなか熟練度が上がらず、他のPL達と引き離されてしまった臆病者どもを拾った。

 PLを遊ばせておく手はないとして生産系スキルを中心に熟練度を上げさせていき、一定の生産力を得ると今度は生産したアイテムを安く、戦いに赴けるPL達に売っていったのだ。

 回復アイテムなどの消費アイテムは大量に消費される傾向にある。それが安く、しかもNPCの店で売っている物よりも効果の高いアイテムを作れるPLが生産した物なのだ。売れない筈がない。

 更に武器や防具、魔法を使うための媒体などを売り始める。すると話を聞きつけたPL達が自然と集まり、馬鹿の領土は発展しくいく。

 次に馬鹿がやったのはギルドへの支援だ。有力(馬鹿にとって有望な)ギルドへ武具やアイテムを優遇し、集めた情報を元に狩り場やレアアイテムの入手方法などを教え、ネームドモンスターを倒す際に戦力が足りなければ信用できる他PLを傭兵として寄越すなんてこともする。

 キリタニさんらサイバーポリスに対しても、途中参入で装備も熟練度も低かった彼らを保護し最大限にサポートして公僕に対して信頼を得やがった。

「助けるのはいいけどよ、何で俺を呼んだ。他の連中は?」

 ここにいるのは俺とアールとキリタニさんだけだ。他のギルドの連中の姿が見えない。

「スポンサー様の危機に、あいつらシカトか」

「呼んでないだけ。殿が誘拐されたことも知らないよ。これは君を呼んだ理由にも繋がるんだけど。……まあ、とりあえず本人から説明してもらおうか」

 そう言って、アールはマントの内側に手を突っ込んで、手のひらに収まる宝石のようなものを取り出した。

「投影石か」

 遠く離れた場所にいるPL同士がコミュニケーションを取ろうと思えば、掲示板や通常の文字チャットの他に、特定のアイテムで行えるものが二つある。

 ボイスチャットと双方向映像通信だ。アールが出したのは映像通信を使用する為のレアアイテムである。

「それ使えるのかよ。イベントクエストで攫わわれたのなら、普通使用できないだろ」

「ああ、結界が張ってあった。でも、使えるように無効化したから」

「………………」

 一部地域、ボスのいるダンジョンや特定のクエストではそれらが使用不可になるか使用が限定される仕様だ。本来は。

 だが、アールはそれを無しにしてしまったのだ。

 実はこのゲーム、プログラミング技術があればオリジナル魔法などが作れたりする。

 現実世界でプログラマーだったアールはいくつもの魔法や魔法の武具を作り、PLの冒険に役立てていた。

 ちなみに、そう言ったハッカー達の一部にはゲームを内側からクラッキングして出られないだろうかと、システムに侵入を試みた奴が何人もいる。

 そいつら全員は脳が焼き切れて死んだ。

「じゃあ、繋げるよ」

 アールが投影石に念を込めると、石から光が溢れて投影モニターのよう四角い画面を作り出す。

 次の瞬間、通信相手の姿が映し出された。

 画面に映ったものは、仰々しい椅子に腰を下ろして赤ワインの入ったグラスを片手にふんぞり返っている男の姿だった。

『やあ、遅かったじゃないか』

 白い歯を覗かせて、その馬鹿は笑った。

「おい、これのどこが誘拐された人間なんだよ。滅茶苦茶くつろいでるぞ」

 しかも、絨毯や絵画があったりなど部屋の内装が豪華だ。

 映像の映る壁の一面が鉄格子が無ければ、俺は誘拐事件はドッキリだと断定して帰っていたに違いない。

『これはNPCの盗賊団首領に待遇改善を要求し交渉した結果だ』

 どんな交渉すればそこまで良くなるのか。

『これも私、ゴールド・メラーの持つカリスマのなせる技だな』

 サラ~~ッンという感じで馬鹿が前髪をかき上げた。

「…………」

 あながち間違ってないから質が悪い。

 馬鹿――ゴールド・メラーは隠しスキルのカリスマを持っている。

 このゲームはスキルの熟練度を上げていって強くなるシステムなのだが、隠しスキルというものが存在する。

 この隠しスキル、一定の熟練度に達しなければ効果は発動していてもステータス画面に表示されないので分かりにくい上に誰もが持てるわけではない。

 ゲーム開始直前に読みとられた生体データや心理テストで隠しスキルの有無が決定されるので、隠しスキルを持てないやつは永遠に手に入らない。

 そしてそんな選ばれた奴しか持てない隠しスキルの一つ、カリスマの効果は魅了系のスキルやテイマー・召喚系の補正を得る。

 だが、カリスマの恐ろしいところはそんな別スキルへの補正などではなく、その真価はNPCに好かれる事にあった。

 アイテムの値引きや買い取り増額は当たり前。NPCがクエストで積極的にカリスマ持ちPLに協力したり、街を歩いていると老人NPCがお菓子くれたりする。

 そして、あまつさえ馬鹿のようにNPCを煽った上で領主の座を奪い取ることもできるのだ。

 馬鹿に才能を持たせると本当にロクな事がない。

「それで、俺を呼んだ理由はなんだ? 助けろって言うなら、キリタニさんとか他のギルドがいるだろ」

『ああ、それなんだが』

 グラスの中のワインを回すというカッコつけた事をしながら馬鹿が説明を開始する。

『このイベントクエストは領主が私になったことで盗賊団のレベルや数が増えているが、それは些細な事だ。問題は、PLの姿がその中にあったのだよ』

「PLが?」

 このゲームの自由度は厄介なほどに高い。馬鹿のようにNPCを従えることも、逆に敵NPCの手下になることもできるのだ。

「ああ、だから俺か」

『そうだ。酌量少量の余地はあるかはまだ分からないが、場合によっては…………』

「PK、つまり殺せってか」

 ゴールドが鷹揚に頷く。

 ゲーム内での死が現実での死というのは、キリタニさんらの情報で確実な事実となっている。

 つまり、ゲーム内での殺人は現実世界での殺しと同義だ。

「なら、他のギルドの連中は呼べないよな」

 自分の身を守る為に場合によっては、PKと戦ってそういう必要があるという事はギルドの連中も分かっているが、奴らにはその経験がない。

 いざという時躊躇ってしまう可能性がある。

 だから既に何度かPKの経験があり、その手の事に躊躇のない俺が汚れ仕事を任されたというわけだ。

『彼らは我々PLがゲームを無事にクリアする為の貴重な戦力だ。要らない負い目は出来るだけ与えたくない』

「俺はいいのかよ」

『君はそんなこと歯牙にもかけないだろ』

 その通りだが釈然としない。

『まあ、それにだ。相手の出方しだいでもある。PKは最悪の事態なだけで、捕まえて牢屋にブチ込むだけで済む可能性もある』

「向こうが抵抗しなきゃな」

「抵抗した場合はこちらも反撃する。それは仕方ないものとして割り切るしかない」

 キリタニさんが目を伏せたまま言った。

 警察として今の会話はいいのかと疑いたくなるが、言ってしまうとこれは物取りだ。凶悪な犯罪者を捕まえるのと変わらない。

 向こうが大人しく捕まるのなら良し。ダメなら力で訴える。その時に向こうが怪我を負ってどうなろうともしょうがない。自業自得という面もあるのだから。

 実際に現実世界に当てはめれば、敵は銃を持っているようなもので熟練度が高ければ人型の戦車と言ってもいい。

 ならば相手をするこちらも相応の暴力で対抗しなければならないのだ。

「まあ、事情はわかった。それで俺はどうすればいい?」

『引き受けてくれるか。なら、クエスト自体はこちらでなんとかするから、君はキリタニらと一緒にそのPLの対処をしてくれ。詳しい情報は既にアールに渡している。では、アデュー』

 なんかまたカッコつけた挨拶で、映像通信が切れる。

「そういうわけだから。クエ自体はこちらで既に情報を集めて攻略を練っている。例のPLへの道はこっちでお膳立てするよ」

 言って、アールが投影石を仕舞った。

「準備が出来たら呼ぶから、それまでゆっくりするといい。ああ、城からは出ないでね。歓楽街に行かれても困るから」

 チッ…………。

 釘を刺されては大人しくするしかない。

 その時、後ろの扉がNPCの兵士によって開き、外からアヤネとソフィーが入ってきた。

「あっ、クゥさん。もう来てたんですね」

「早かったですね、色々と。私の知らないところで解消してたんですか?」

 頭(AI)の中が腐ったメイドはとりあえず無視する。

「お話は終わったんですか?」

「ああ。仕事を受けることにしたけど、お前はどうする?」

「ゴールドさんを助けるんですよね。手伝わせてもらおうと思ってます」

「ふぅん」

 アヤネは後方支援向きで、アール達もそれをよく分かっているから矢面に立たせることはないだろう。

 ソフィーに視線を向けると、わかっていると言わんばかりにメイドは小さく頷いた。

 本当にAIらしからぬAIだ。

「ところで……」

 と、アールが何かを思い出したかのように声を上げた。

「用意する部屋、ベッドは一つで良かったよね?」

「部屋を! 二つだ!」


 それから数時間後、準備はとっくに出来ていて段取りの最終確認するだけだったらしく、夜になってすぐに馬鹿救出作戦が始まった。

 森の中で、拠点としている洞窟から出てきた盗賊団のNPCと馬鹿の所有する騎士団NPC達が戦闘を繰り広げる様を、俺は山の高い傾斜から見下ろす。

 馬鹿お得意の戦法だ。

 知能の高いボスが拠点としているダンジョンにPLやNPCの種別を問わず一定数のキャラクターが近づくと、ダンジョンから敵が迎撃に出る傾向がある。

 ダンジョン内に在留するモンスターの数は上限が決められていて、それ以上増えない。

 外に迎撃を出ている間も同じで、ダンジョン内はボスと最低限の守りしかいなくなる。

 その間に精鋭であるPLが突破し、要らない消耗がない状態でボスの首を獲る。

 それが馬鹿のやり方だった。

 普通のダンジョン攻略と明らかに違う。

 現に、他の攻略組は正統派(と言うのか知らないが)らしく、モブ敵を倒しながら少しずつマップを制作していき、ボスの居場所が判明次第念入りに準備して複数のパーティーで攻略する。

「トラウマにでもなってるのかね」

 ボスというのはダンジョンの奥で腰を深く下ろしている。それがRPGなどのゲームの定番で常識だ。

 だが、このゲームは強い奴ほど高度なAIを積んでいるせいか予想外の行動を取る場合がある。

 ダンジョン最深部にいる筈がダンジョン内を意味無く徘徊していたり、ダンジョンの入り口に現れて日光浴していたりなど予想の斜め上な行動を取ることがある。

 なにより、ボス自らがPLを狩ろうとフィールドに出たりする。

 ゴールドと知り合ってから大分後になって知ったことだが、ある街で近隣のボスがモンスターを引き連れて街を襲撃するという事件が起き、多くのPLが命を落とした。

 後の調べでどうやら一つの街に一定数以上のPLが集まることがトリガーとなってボスが街を襲う、そういう仕組みのクエストが存在していることが判明した。

 それの生き残りであるゴールド曰く、ボス攻略は戦争なのだとか。

「おっ」

 昔の話を思い出していると、盗賊団の一翼が文字通り吹っ飛んでいく光景が見えた。

 それをやったのは大剣に分類される野太刀を振り回す老人だ。

 老人はサイバーポリスと共に、身内もおらず老い先短いからからと志願してやってきた定年間近の警官だ。

 時代遅れの年寄りなど盾ぐらいの役にしか立たないだろうが、と最初は嘯いていたらしい自称役立たずは現実世界での免許皆伝の剣術と槍術や空手、柔道の腕前をこちらでも遺憾なく発揮していた。

「しっかし、なんかトロいな」

 戦力は盗賊団よりも多く、質も高い。それなのにまだ戦っている。

 手際が悪いとかではなく森の中だということもあるだろうが、交代で戦いながらあえて戦闘を引き延ばしているように見える。

 というか、全員が戦いを経験できるようにしている?

 この程度の敵相手に熟練度を稼いでもしかたないと思うのだが。

「オレたちゃみんな土の人~」

「掘って掘って掘りまくる~」

「石と鉄が友達さ~」

「…………」

 そろそろ聞こえてくる歌を無視できなくなったので山の斜面を振り返る。

 そこには人二人が余裕を持って通れそうな大きな穴が開いており、奥からランタンと野太い男の声が漏れている。

「……まだ?」

 俺は穴の前で作業を見守っているキリタニさんに声をかけた。

 すると、キリタニさんの代わりに穴の奥でマッチョな男連中が答えた。

 土で汚れた真っ黒な顔に反した白い歯が輝く。

「おう、もうすぐでさぁダンナ! もうちょっと待っててくだせぇ! 今でっけぇ穴を開けっからさぁ!」

 ダンナ言うな。

 連中は馬鹿お抱えの生産職、採掘や金属武具の生産を担当するPL達だ。

「暗闇の中を突き進む~」

「掘って掘って掘り進む~」

「愛しい愛しい鉄に逢うために~」

 ボイスチャットで外に漏れないからと言って、その阿呆な歌はどうにかならないのだろうか。

 まあ、歌はともかくとして、さすが熟練者だけあってツルハシの一降りで壁が丸く抉れていく。

 崩れた土はNPC達が邪魔にならないように外へと運んでいっている。

 アール達の作戦によると、盗賊団のアジトである洞窟前で戦闘を行っている間に、洞窟に繋がる新しい道を作り、そこから俺が内部に侵入してPLを捕まえ、できればそのまま馬鹿を救出するという段取りになっている。

 ダンジョンに新しい道を造るとか、本当にあいつらは馬鹿だ。

「ダンナァーッ!」

 堀り終えたのか、穴の奥から呼ぶ声が届く。

「ようやくか――ん?」

 行こうとした時、戦場となっている森の方からどよめきが聞こえた。

 見てみると、盗賊団側からアンデッドモンスターが出現し、NPCの兵士達に襲いかかっていた。

「……情報通りだな」

 問題になっていた盗賊団に味方するPL、そいつがネクロマンサーだという事は判明している。

 一体どこでそんなスキルを覚えたのか不明だが、レアドロップで魅了魔術系スキルを手に入れたテイマーが派手に騒ぎを起こしていたこともあったので、このゲームだと割とよくある事なのだが。

 僅かに混乱が見えたNPC達だったが、直後落ち着きを取り戻した。

 歌声が聞こえてきたのだ。

 戦場となっている森の中、馬鹿側の軍勢の最後列にアヤネの姿がある。その傍には護衛としてソフィーも立っている。

 アヤネは普段の大人しい様子と違い、堂々とした態度で声を張り上げ、透き通るような詩を歌っている。

 さっきのマッチョな男共のトンチキで下手クソな歌とは天と地、月とスッポン、巨像とアリほど違う歌声だ。

 アヤネの歌スキルは呪歌と言ってもいいほどのレベルに達している。

 味方の力を引き上げ、敵を弱体化させる呪歌は支援魔法と違いパーティー単位ではなく範囲内にいるPC全てが対象だ。

 今のところ全プレイヤーを通して一番歌スキルの高いアヤネだけが出来る芸当であり、生半可な熟練度では同様の効果は得られない。

 アヤネ本人の美声もあって、集団戦闘において心強い支援と同時に指揮も上げる。

 アヤネの歌声によってNPC達が落ち着きを取り戻し、盗賊とアンデッドの混合軍に立ち向かっていく。

 分かりやすい連中だ。

「向こうはもう大丈夫だろう。あとはアール達に任せて、私達の仕事を始めよう。予測時間にはまだ余裕はあるが、早いことに越したことはない」

「まあ、馬鹿がアンデット化して操られたら面倒だもんな」

 馬鹿の力量自体は中堅クラスだが、万が一操られてしまうものならその影響力は計り知れない。あれでも領主なのだから。

 俺とキリタニさんは男共が掘った穴の奥を進み、突き当たりで立ち止まる。

 キリタニさんは剣と盾を持ち、俺はダガーを二本持つ。

 キリタニさんが、突き当たりの所に立っていた男に向かって頷いた。

 男はツルハシを頭上に持ち上げると、壁に向かって一気に降り下ろす。

 ツルハシの尖った先端が壁に振れた瞬間、壁が崩れてその向こうから光が入り込んでくる。

 盗賊団のアジトと繋がった瞬間だった。

 俺とキリタニさんは同時に穴からアジトの洞窟内中へと飛び入り、すぐに左右へと別れて別々に馬鹿の探索を行う。

 ネクロマンサーのPLの目的は馬鹿をアンデッド化させて操る事だ。

 権力、それとも私怨かは分からないが、理由なんて腐るほど思いつくのでそれについては保留。

 ともかく、PLをアンデッド化させるには色々と準備や条件があるらしく、とっとと殺せばいいものの馬鹿はまだ生きている。

 最後の映像通信から、馬鹿はアジトの奥にある広い場所に連れていかれたのまでは分かっている。

 なので、ショートカットを経由して奥の方から探すしかない。

「『足跡探索』『罠察知』『気配探知』発動」

 レンジャー系に分類される探索スキルで拾得できる特技を使い、走りながら馬鹿を探す。

 視覚には足跡や罠と思われる物が緑色にはっきりと映り、頭の中にぼんやりとキャラクターの位置が浮かぶ。

 馬鹿を救う為に動いているPLの中で、探索と戦闘を両立してできるのは何人もいるが、スピードを優先した単独行動でそれをこなせるのは俺とキリタニさんしかいない。

 だからと言って俺が彼と同等に強いわけではない。キリタニさんは戦闘寄りで、俺は逆にレンジャー寄りだ。

 スタミナを消費させながら走っていると、馬鹿の足跡を見つけた。

 あいつの靴は特徴的なのですぐに分かる。

 足跡の周囲には別に五人分の足跡も見つけ、内四つが同じものだ。なら、消去法で残った一種のがネクロマンサーのものなのだろう。

「キリタニさん、馬鹿の足跡を見つけた。他に五人分あって、おそらく例のPLのもある」

 耳につけたイヤリング、ボイスチャット用の特殊アイテムに触れながらキリタニさんへ知らせる。

『そうか。ダミーの可能性もある。念のためこちらの捜索を続行するが、姿を見たら知らせてくれ』

「了解」

 簡潔にボイスチャットを終わらせ、足跡を追う。

 盗賊団の首領含めたNPCどもは外の迎撃に忙しいのか、洞窟内で敵に出会うこともなく俺はあっさりとその部屋にたどり着けた。

 アジトの奥、いかにも怪しげな両開きの扉があり、足跡もそこで途切れている。

 なんだか『気配探知』を使わずとも分かる妖気みたいな怪しい雰囲気を感じる。

 そっと聞き耳を立てると、怪しい呪文も聞こえてきた。

「……死んだかな」

 もう手遅れだったりして。

 念の為に『罠探知』で扉に罠が仕掛けられてないか確認し、そっと音を立てずに扉を僅かに開けて中の様子を窺う。

 一言で言うなら、黒ミサが行われていた。

 紫色に灯る明かりを頼りに暗い部屋の中で、装飾過多なアクセサリーを身につけ、ローブを羽織った男が杖を掲げてブツブツを呟いている。その後ろには護衛と思われる四人の武装した盗賊団のモブも立っていた。

 そして男の前には儀式魔術用の魔法陣があり、魔法陣の中央には椅子に縛られた馬鹿がいた。

 馬鹿は間抜け面を露わにデカい欠伸をかましている。

 見捨てよっかなぁ。

 なんだか途端にやる気が殺がれた。元々あんまりなかったがな。

 とにかくキリタニさんに通報しよう。その後にバックレるか決めよう。

「――ん?」

 と、ボイスチャットを使おうとした時、謎の直感で馬鹿がこちらの存在に気づいた。

 そして、何を思うてかくそムカつく笑みを浮かべ――

「やあっ、クゥ。早く助けてくれたまえ!」

 ワザとらしく声を張り上げた。

「あんの馬鹿ッ!」

 男達が一斉にこちらに振り向くが、俺はそれよりも早く扉を蹴破って走る。

 駆けながら進行上の障害となるモブ二人に持っていたダガーを投げつける。

 投擲スキルを遺憾なく発揮した結果、二本のダガーはそれぞれ二人の肩に突き刺さる。

 現実では重傷だが、ここは仮想現実。さすがにザコモンスターと違い、ダガー程度が刺さったぐらいでは死なない。

 ただ、怯ませることには成功した。

 その間に俺は背に手を伸ばす。背には袈裟に巻いた武器収納専用ベルトが巻かれている。

 アイテムを雑多に収納する通常のアイテムボックスと違い、武器しか入れられないベルトは特定の箇所に触れただけでそこに登録した武器が取り出せる。

 二刀流や弓などを使う連中がとっさに武器を代える為によく使っている物だ。

 俺は片刃の剣を取り出して、擦れ違いざまに怯んだモブ二人を切り捨てて馬鹿に駆け寄る。

「お前、なにバラしてんだよ!」

 言いながら、馬鹿を拘束している縄を剣で切る。

「帰りたいとか思っただろ? 君、そういう思いつきを本当に実行に移すから予防線を張ったのさ」

「おかげでバレたけどな」

 文句を言いながら、魔法陣の中心から下がりつつ、剣を馬鹿に渡す。

 儀式魔術は陣内の所定の位置に術者や対象がいないと効果は発揮しないので、何をやろうとしていたのか知らないがとにかく魔法陣の中心から離れれば安全だ。

「き、貴様、何者だ!?」

「ふふふ、彼こそはぐっ!」

「お前黙ってろ」

 勝手に人の名をバラそうと馬鹿を肘鉄で黙らせる。もし仲間が他にいて、名前覚えられたらどうすんだよ。

「くっ、ふざけやがって。やってしまえ!」

 男の号令でモブ二人が武器を構え突進してくる。

「たった二人で何を?」

 だが、その直後にローブの男が何か呟くと、切り倒した筈のモブが起きあがってきた。

「どうやら、NPCの死体なら速攻で操れるようだ。もしかしたら熟練度に関係しているのかもしれないけど」

「おいおい…………」

 確かに拡張された視覚情報にある体力バーが元に戻っている。それに、『見破り』で視れる相手ステータスの種族分類が人間からアンデットに変わっていた。

 しかも、男の足下が光ったかと思うとそこから剣と盾を持ったリビングボーンが三体現れた。

「言い忘れていたが、彼の本職はサモナーのようだ」

「遅ぇよ!」

 とか言ってる間にも合計七体のNPCが俺達めがけて襲いかかってくる。

 サモナーはサモナーで魔法の詠唱を始めているし。

「ああ、くそ! キリタニさん、馬鹿発見! 襲われてる! サモナーにアンデッドだ!」

 ボイスチャットでめっちゃ省いた報告をして、俺は背に右手を回して左手を左太股に持っていく。

 今行く、という返事を耳にしながらベルトから武器を取り出す。背の収納部分からは槍を、太股に設置した所からは投げナイフを取り出す。

 先頭を走るモブの盗賊にナイフを投げて牽制後、槍を構えて迎え打つ。

「補助頼む!」

 ちょっと嫌だけど、馬鹿にパーティ登録を申請。

「任せたまえ」

 それを受諾した馬鹿が魔法の詠唱を始める。 詠唱と言っても本当に何か呪文を言っているのではなく、魔法が発動するまでの時間が表現されているに過ぎない。詠唱が終われば、発動キーとなる魔法名を言うか、自分にしか見えないウィンドウのボタンを押すかだ。

 モブ盗賊やら低級アンデッドは俺一人だけでも何とかなるし、馬鹿だってこの程度一人で突破できる。

 問題はサモナーだ。見たこともない儀式魔術といい、簡単にアンデッドを使役していることといい、ネクロマンサーなのは間違いない。

 だとすると、全く未知の魔法を仕掛けてくる可能性がある。

「マナプロテクション」

 馬鹿が支援魔法、魔法への抵抗が一時的に上がる魔法を使用。

 俺達の体を一瞬淡い光が包んだ。

「その程度で防げると思うな!」

 光のエフェクトで俺達はマナプロテクションをかけたことに気づいたのだろう。それでもサモナーは詠唱を止めない。

 対象指定の魔法らしく、男が杖の先端を俺に向けた。

「カース・オブ・ワード!」

 魔法が唱えられると、杖の先端に小さな魔法陣が広がり、それを発射口にして黒い塊が発射された。

 丁度、槍でゾンビ化したモブを倒した俺に向かって塊が迫る。

 避けきれるか怪しい上に、後ろには馬鹿がいる。

「――チッ」

 仕方ないので敢えて受け止める。

 だが、覚悟していた衝撃は一切こなかった。代わりに黒い霧のような物が俺を包み込む。

「なっ!? なんだコレ!?」

「はははははっ! カース・オブ・ワードは心的恐怖を強制的に与える魔法だ! 魔法抵抗力を上げた程度じゃ、どうにもならないぞ!」

「心的恐怖……だと? まさかそれは!」

 黒い霧に包まれた俺の代わりに、馬鹿が声を上げる。

「そうだ! 四つの上位属性である空に属していながら、別個の抵抗値が必要な幻術や魅了と一緒で、カース・オブ・ワードは精神抵抗値が高くなければ防げない!」

 このゲームには下位属性四つと上位属性四つの計八属性がある。PLも含め、人やモンスターは必ずこの八属性のどれかを自分の特性として持つ。

 そして、ステータスには八つの属性抵抗値というパラメータがある。それに魔法抵抗値を加えて魔法に対するダメージや効果を軽減する。

 だが、もう一つ別に抵抗値が存在する。それが精神抵抗値だ。

 魔法や特技の中で空属性のモンスターが使う幻術や魅了など、物理的な効果ではなく精神に直接影響を与えるものがある。それに対する抵抗力だ。

「くっ……それが貴様の手に入れた魔法か!?」

 ノリノリだな、こいつ。

「そうだ。死霊系モンスターのレアドロップであるグリモワールを手に入れて得たこの力は実に素晴らしい!」

 そしてこいつも、いかにも悪の魔法使いって感じでノリノリだ。

「死体がある限り兵を量産でき、誰もが抵抗の低い精神作用系の魔法まで扱える!」

 そう、精神に作用するもの厄介なところは扱う奴が少ないところにあった。

 抵抗値の熟練度はその属性を受けることで上がっていくマゾ仕様。敵に使い手がいなければ、当然抵抗値も上がらない。

 それに幻術や魅了という絡め手は基本的に一見必殺。喰らったPLは基本的にその場で死ぬ。

 今ではアイテムやアクセサリーを準備していればなんとか対抗できるが、昔はバカスカ人が死んだ。

 …………主に男が。

「この力で、私はお前以上の支配者になってみせるぞ!」

 ああ、こいつ馬鹿に嫉妬してるクチか。バカだな。馬鹿にかまうとバカになるっていうのに。

「くっ、なんてことだ! 大丈夫か!? クゥ!」

「くくくっ、無駄だ! カース・オブ・ワードはダメージを与えないが相手を恐怖のどん底に叩き落とし、行動不能にさせる魔法だ! そいつはもう恐怖に身を竦ませ、なに一つでできない無能者となったのだ! だが安心しろ。殺した後にアンデッドに――」

「誰が無能だ!」

「――おごぉっ!?」

「あっ、ヤベ」

 思わず持ってた槍を投げてしまった。もう少し時間を稼ぐつもりだったんだが。

「な、なななぁ!? な、何故動けるのだ!?」

 肩に刺さった槍を抜き、サモナーが困惑した様子で叫んだ。

 うん、血が出ないせいで逆にシュールな光景だ。

「お、おおっ、さすがは勇者! 恐怖などには負けないということだな!」

「いや、その茶番もういいから。それに誰が勇者だ」

 馬鹿の臑を蹴る。

「いたっ」

「まったく……」

 鬱陶しく纏わりつく黒い霧も手で払ってかき消す。

「ど、どういうことだ、一体……」

 サモナーはまだ状況が分かっていないようだった。

「あー……俺、精神抵抗値の熟練度、エキスパートクラス超えてんだよ」

「な、なんだとぉ!?」

 熟練度の値で順にルーキー、ベテラン、エキスパートとランク分けされている。エキスパート以上の呼称についてはPL間で議論されているが、一流と呼ばれるPLは何かしらのスキルがエキスパートクラスだ。

「精神抵抗値がエキスパート以上、だと? ま、まさか貴様、精神抵抗値に才能が…………」

 熟練度はエキスパートクラスになると極端に伸びが悪くなる。決して成長しないわけではないのだが、どんなに高レベルのモンスターを狩っても効率が悪い。

 だが、隠しスキル同様にゲーム開始前の生体スキャンなどによって、数あるスキルの内最低一つはエキスパートになっても伸びが良いものがある。それが才能だ。

 剣だったり魔法だったり、あるいは複数持っていたりとそれぞれだが、才能のあるスキルは伸びが良い。

「い、いや、待て! 例え精神抵抗の才能持ちだとしてもエキスパート以上の熟練度など一体どこで稼いだ!?」

「ああ? そんなの言うわけ」

「サキュバスとイチャコラした結果らしいよ」

「だからお前黙れよ。それとも死ぬか?」

 本格的に殺意が沸いてきてしまった。

「く、くそっ! だが、数ではまだこちらが勝っている! それに武器を捨てた貴様に何ができる」

 捨てたというか、投げたんだけどな。

 それに、PLと戦う時は相手の装備とかちゃんと見ろよ。

「行け!」

 サモナーの号令に従って剣を振りかざし、突進してくる三体のリビングボーン達。

 俺は右腰に手を伸ばし、そこに登録した武器を取り出す。そのまま引き抜くかたちで一度頭上に上げて振りおろしながら横に振る。

 蛇の尾のような柔軟性のある革の鞭が唸りを上げ、迫り来たリビングボーン達を粉々に打ち砕いた。

「なにィ!?」

 自分に馴染む武器が見つからず色々試した結果、俺の各武器熟練度は平たいものになった。

 だからと言う訳では無いが、俺は各武器を持ち歩いている。

 投げナイフにダガー、剣に大剣、槍、斧、棍、鞭、弓矢など全部だ。歩く武器庫とか器用貧乏など言われたりするが、状況に合わせて使い分けられるので何が出るか分からないフィールドを歩き回る上ではむしろ都合が良い。

「く、くそ、くそっ! これで終わったと思うなよ!」

 リビングボーンが破壊されたのを見てサモナーが踵を返し、悪態をつきながら部屋の出口に向かって走り出した。

 だが、明かりを漏らす出口に差し掛かった所で、廊下側から一つの大きな影が飛び出した。キリタニさんだ。

 キリタニさんは前方に構えた盾の表面を向けたままの状態で、サモナーに体当たりを食らわせる。

 突然出てきたキリタニさんの攻撃に対応できなかったサモナーは盾による攻撃を受け、たたらを踏みながら後ろに下がった。

 盾スキルの一つ、シールドアタックだ。

 名前のまんま盾でぶつかる攻撃なのだが、相手をノックバックさせる効果がある。

 サモナーに体勢を整える隙を与えず、キリタニさんは剣を捨てながら男との距離を詰め、相手の方に手を置いた。

「――紫電掌ッ」

 雷属性の格闘スキルが発動し、部屋が一瞬閃光に包まれる。

 元の暗い部屋に戻ったときには、サモナーが痙攣しながら前のめりに倒れた。

 どうやらバッドステータスの痺れを受けた上で気絶したようだ。

「無事のようだな」

 それを受け止め、顔を上げてキリタニさんが俺達を見る。

「見ての通り。それより、もしかして出待ちしていた?」

「違う。たまたまタイミングが良かっただけだ」

 まあ、何にせよこれで終わったわけだが。

「うむ、事件は解決。手間を取らせてしまったな二人とも、ご苦労だった」

「うざ……」

「外の戦いも終わる頃だろうし、民のために顔を見せて無事を知らせなければな」

「って、おい! まだ盗賊が残ってるかも知れねえのに、先に行くな馬鹿」

 こうして馬鹿誘拐事件はあっさりと解決した。

 やっぱり、俺が出張らなくても良かったんじゃないのか。


 あれから洞窟を脱して外に出てみれば、盗賊団は首領ごと騎士団によって倒されていた。

 自分の無事を宣伝し、NPC達の喝采を受ける(何でだ?)馬鹿から離れ、俺は騎士団の指揮をしていたアールのもとに行く。

「金寄越せコラ」

「ガラ悪い上にカツアゲにしか見えないよ。はい、今回の報酬。お金と、一人分の食料二週間分」

「いちいち量を言うな」

 金と食料を受け取って、アイテムボックスに放り込む。四次元なポケットみたいで場所を取らないが、スロット数が決まってる上に重量だけはしっかりとある。

「これからシルフォーニアに行くのかい? 転送装置使えば一瞬、中継の装置を使えば二日なのにわざわざ徒歩で行くなんて本当に物好きだよね」

「うるせえ」

 消費したナイフや足りてなかった回復薬をついでに騎士団の物資から頂いて、旅の準備を整える。

 そうしてとっとと出発しようと思った時、馬鹿が戻ってきた。

「また助けられてしまったな」

「報酬もらってるから、別に……」

「そうかい。それはそれとして、近々魔王に挑むつもりだ。その時は君も参戦してほしい」

「はぁ?」

「今日ので、PLを含めNPC達に戦争を経験させることができた。課題点はあるけど、大方訓練通りだ。予定通り、地の魔王の討伐に挑んでいるギルド連合が失敗した後にこちらもボス攻略に移る」

「あいつらじゃ地の魔王に勝てないと?」

 突っ込みどころは他にもあったが、とりあえずそれを聞いておく。

 そいつらの事はよく知らないが、たしか相当強いギルドが集まった筈だ。それをこの馬鹿は失敗すると言い放った。

「事を起こすのが早急で、情報が足りてない。それにギルド間の協調が取れていない。表面上上手くやっているようだが、先に進めばどうなることやら」

 まるで自分のところは問題ないと言いたげだ。

「なら、なんでそっちの方に強力しない」

「地理的な問題でちょっと遠い。あと、面子」

「あっ、そう」

 その辺りの邪魔くさい思考は面倒なのでこれ以上聞くのはやめる。

「近くの風か水の魔王を攻めようと思っている。どちらも先遣隊として送ったギルドのおかげで完成度の高いマップとモンスターデータも手に入れた。後は各ギルドのスケジュールの最終的な調整だけだ」

「ふぅん。どうでもいいが、もう行っていいか?」

「返事はまだ聞いてないんだが?」

「気が向いたらな。だいたい、お前が欲しいのはアヤネだろ。俺を通すなんてまどろっこしい事せず本人に直接言えよ」

 アヤネの歌スキルは広い戦場において非常に有効な能力だ。魔力ではなくスタミナを消費するので、ちょっと休ませればまたすぐにスキルを使うこともできる。

 アールの奴が歌スキルをより強化する手段を作っている事も知っているから、嫌味混じりでそう言ってやると馬鹿はニヤニヤとしたクソウザい笑みを浮かべやがった。

「だってアヤネ君だけ参加したら君、彼女置いてどっか行くだろ?」

「………………」

 その通りだが、お前らには関係ないだろ――とはさすがに言えなかった。

「クゥさーん」

 俺が馬鹿二人を睨んでいると、向こうからソフィーと共にアヤネが駆け寄ってきた。

「間に合ったな」

 とか言って馬鹿が立ち去ろうとする。こいつ、時間稼ぎしてやがった。

「アヤネ君だけじゃなく、君にも参加して欲しいのは本当だ。風と水の上位属性である空属性をだから、風と水の抵抗も高いだろ」

 そう最後に言い捨てて、馬鹿はアールを連れだって離れていった。

 本気であの時見殺しにしとけばよかった。

「ゴールドさんとのお話はもういいんですか?」

「おかげさまでな」

 俺はアヤネに背を向け、戦勝に盛り上がるNPC達とは反対方向の森へ向かって歩く。

 その後ろをアヤネとソフィーがついてくる。

「予定では、シルフォーニアに行くのでしたね。ここからだと、だいたい徒歩で一週間ですか」

 何で知ってるのか、コイツは。

「どこかで保存食買わないと」

「私は主人であるクゥ様から魔力やらなんやら貰えばいいとして、アヤネ様もクゥ様から食料を奪えばいいんですよ」

「さすがにそれは……」

「いいんですよ。どうせ余分に持ってるんですから。それに、いざとなれば現地調達という手もあります」

 後ろから聞こえてくる会話を無視して俺はどんどん先に進む。

 そして、いつものように歩幅の小さな足音と極力音を立てずに歩く気配が後ろからついてくる。

 こうしてまた、奇妙な追跡者を連れての俺の旅が再開されたのだった。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 第一話ということで、世界観と序盤の重要人物が登場する今回のお話。 設定が細かく練られていて、さらにその世界観を表現する筆力も十分あると思います。 またダンジョンに通じる新しい道を作るな…
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