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あーしが勇者じゃダメなん?

 魔法陣の前で、一人の気弱そうな女性が手を組み祈りを捧げ続けている。魔法陣の光は強くなったり、弱くなったりを繰り返し、不安定だ。

 真っ暗で締め切った部屋に、ドカンっと、銃声にも聞こえる音でドアが空いた。そこに入ってきたのは、高そうな服に身を包んだ一人の男だった。

 

「まだ召喚出来てないのですか。全く、何をしているのです。」

「す、すみません……。」


 気弱な女は男の方は向かず、ただペコペコとあやまりつづけた。


「貴女にこのような仕事、任せられるわけ無かったのです。母上は何をお考えに……。」

「……。」

「貴女ごときが私の話を無視しましたね?」


 すると、魔法陣の光が一気に強くなった。さっきまで真っ暗だった部屋が一気に明るくなり……魔法陣の中央に一人の女性が立っていた。


「ヤッホー、あーしが……見参!」


 魔法陣がスっと消え、部屋は再び暗くなった。


「ちょ、暗すぎなんですけど〜。」

「あ、今灯りをつけますので……。」


 気弱そうな女はオドオドと立ち上がって、魔法で全てのランタンに火をつけた。


「え〜!?アンタすごくね?あーしも出来っかな。」

「あ、はい、出来ると思いますよ。」


 すると、後ろにいた男が地面で足をドンッと叩いた。


「何ですかこの、不届きな女性は。これが、我が王国の勇者とでも言うのです?ふざけるのも大概にしてください。」

「ヴィンセント様!」

「あーしじゃ不満ってこと?……もー、酷いなぁ〜。」


 召喚させられた女性は、ヴィンセントの方へ歩き、バサッと肩を組んだ。眩しいばかりの笑顔で言った、


「あーしに任せとけって!だってあたし、宇宙一天才美少女ギャルだし。」

「無礼、早々に離れなさい!」

「スキンシップ大事っしょ、あーし、アンタとも超仲良くなりたいし〜。」


 ウィングして、ピースした。いつもの決めポーズだ。


「あーし、ナナって言うの。アンタはヴィンセントっしょ?さっきランタンつけてたアンタは?」

「あっ、私は、サリアです。」

「ヴィンちゃんと、サッちゃんね!これからよろ〜って感じ。」


 ヴィンセントはナナを払い除けた。その反動でナナはバランスを崩し、床に尻もちをついた。


「貴女は私が誰だかわかっていないご様子。後々後悔することになりますよ。」

「この部屋にあるタペストリーとアンタのブローチの紋章は同じ。色も同じ。その服もあたしのいた世界でもなかなか着れないし。アンタはこの国の王子ってとこっしょ。あーし馬鹿じゃないし、そのくらい分かるし!」

「わかっててその態度ですか。では、馬鹿ではないでしょうか。」


 サリアが奈々に手を差し出し、ナナは立ち上がった。申し訳なさげな表情で、ナナの服のホコリを払った。


「すみません、ナナさん。ヴィンセントさんは私関連になると、私が気に食わないのか、いつもあんな感じで……。」

「あ、そーなん?」

「はい。改めまして、召喚にお答えくださり、誠にありがとうございます。これからのご案内をさせていただきます。」


 ナナは勇者として突然召喚されたのだ。彼女自身こそ、特に混乱している。ナナはサリアにつれられ、一時的に騎士団の見習として過ごすこととなった。


 ————————————————————


「ナナちゃんが来てからかれこれもう三ヶ月になるんだって。早いもんだね。」

「え〜!?体感一週間なんですけど〜。てかサッちゃん、何その荷物。」


 大きなカバンから、沢山の魔道具が飛び出ている。かなり重そう。あーしも手伝った方がいいかな?

 

「……あ、私ね。クビになったから。」

「は?ど、どうして?サッちゃんってめっちゃ優秀な魔法使いじゃん……。」


 サリアは俯き、目からポロポロと涙が出てきた。噂では隣の大国との関係があまり良くないそう、いつ戦争になってもおかしくないらしい。サッちゃんは本当にすごい魔法使いだから、なんでクビにすんだろ〜。戦力ガタ落ちじゃね?


「……ね、それってあーしのせいかな?」


 ヴィンちゃんも、呼ばれた勇者があーしみたいなので不満げだったし。そのせいで評判が悪くなってんなら、あーしがちゃんとしてたら良かったのかなって感じ。

 

「いいや、君のせいじゃないよ。私がダメなの、遅かれ早かれこうなってたと思う。」

「ちょっとあーし、ヴィンちゃんに聞いてくるわ。」

「や、やめてよ。何を聞くの。」

「あーしもクビにしてくださいってね。」


 あーしはサリアの制止の声も聞かず走り出した。

 ドンドンドンと、ヴィンセントの書斎室のドアを叩いた。特に声の返答はなかったので、「入っちゃうよー!」と声を掛けてドアを開けた。


「サッちゃんクビってマヂ?」

「フン、そうですよ。」

「なんでクビにすんのかさ、当ててもいい?当たったらあーしもクビにしてよね。」

「いいでしょう。」

「大規模な戦争が始まるからじゃないの?」


 ヴィンセントはあたしをじっと見た。

 

「なぜ戦争が始まったら、あの者をクビにするのです?むしろ戦場に駆り出して、死なせた方が早いです。……とりあえず貴女もクビですよ。」

「へ?あ、あってたってこと?つまりヴィンたそは、サリアがしんぱ」

「ええい、黙りなさい。私があの者を?そんなわけないでしょう。無能がいれば士気が下がるだけです、そんな邪魔者置いておく方が馬鹿なのですよ。」


 色々気になることはあるけど、まっ、クビになれたしTheハッピーエンドっしょ。

 あーしが部屋を退出するとき、ヴィンちゃんにボソッと言われた。

「どっかで死なれたら気分が悪いですので、貴女もアイツの無能さを味わってみたらいいんじゃないですか。」

 つまり、サッちゃんマジ心配だから、ナナちが一緒にいてあげてちょ♡ってこと。


「モチのロンっしょ。心配すんなし、あーしが絶対サッちゃん守るっしょ。」

「心配などしていません。……準備が出来次第、早々に立ち去ってください。」

「アンタも来たらいいのに〜。」

「私はこの国の次期国王です。逃げる訳にはいきません。」


 ダンっと音を立てて、書類を整えた。


「さ、早く行きなさい。この土地から遠く遠く、ずっと遠くの違う国まで。」

「……違う国まで?待ってヴィンセント、アンタもしかして、」

「いつまで騒ぐつもりですかね。鬱陶しいので早くご退出ください。」


 ヴィンセントに背中を押された。振り返る頃にはもうドアはしまっていた。

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