第八話「青の奥に響く声」
こんばんは、AIKAです。
夏も本格化してきましたね
今日は冷たい飲み物片手に、静かな異界の一歩をどうぞ
──風の音が、変わった。
それは、ただの気のせいではなかった。
今までの揺れる空気とは、何かが違う。
蒼波は歩くたびに、自分の足音ではない“何か”を感じていた。
石の橋を踏みしめる音に、わずかに重なるような──別の足音。
振り返っても、誰もいない。
けれど、その気配は確かに、すぐ後ろにあった。
「……気のせいじゃない」
小さく呟いて、目を閉じる。
風の中に、微かに“音”が混じっていた。
耳元に直接囁かれるような、柔らかい響き。
──蒼波。
それは、確かに“名前”だった。
自分の名前を、呼ばれた気がした。
「……誰だよ、今の……」
鼓動が速くなる。
背中に汗が滲むのに、空気はひんやりとしていた。
蒼波は、歩みを止めなかった。
止まってしまえば、何かに追いつかれてしまいそうだった。
見上げた空は、紺と白が混ざり合い、淡い光が滲んでいた。
どこまでも続くように見える橋の先。
その奥に、“誰か”がいる──そんな確信があった。
──そして、蒼波は気づく。
今、自分は確かに“導かれている”。
誰かの声。
誰かの記憶。
誰かの気配が、蒼波を深く、深く……
異界のさらに奥へと引き込んでいた。
最後まで読んでくれてありがとう
“名前を呼ぶ声”──それは誰なのか?
次回、姿がついに現れる……かもしれない──誰!?