第七話「揺らめく記憶、浮かぶ影」
こんばんは、AIKAです。
台風の気配も近づいてるみたいですね……
不安定な天気が続きますが、今日も静かな異界の一歩をどうぞ
──気のせいじゃ、ない。
蒼波はそう思った。
さっき見えた“影”は、風や光の揺らぎなんかじゃなかった。
確かに“誰か”が、そこにいた。
ゆるやかにうねる石の道を踏みしめながら、蒼波は先を見つめる。
景色は変わらず、青と白に包まれていた。
だけど、その中に──色がひとつ、混じっていた。
人影。
形を保っているとは言いがたい。
輪郭がぼやけ、ゆらゆらと溶けそうなその影は、確かに“人”の形をしていた。
近づくにつれて、空気が重たくなっていく。
胸の奥に、湿った違和感が広がる。
どこかで──いや、以前にも、この感覚を知っている気がする。
「……誰?」
声をかけても、応えはない。
それでも、その影は確かにこちらを向いて──
……いや、“見ていた”気がした。
影は、風に溶けるようにゆらぎ、形を失っていく。
けれど、その場に残った空気には、確かな“誰かの存在”が染みついていた。
そして蒼波は──立ち尽くしたまま、ふと、ある記憶を思い出す。
──あのとき。
──雨の日。
──見送りもなく、ひとりで帰った放課後のこと。
肩に感じた重さ。
誰もいないはずの通学路で、ふと後ろを振り返ったときのあの感覚。
「……まさか……」
胸の奥がざわつく。
記憶の断片と、目の前の影が結びつきそうで──まだ、繋がらない。
そしてまた、風が吹く。
誰かの気配を残して、ただ、風だけが通り過ぎた。
最後まで読んでくださり、ありがとうございます
あの影が“誰”なのか──
次回、もう少しだけ近づける……のかも?