第六話「青に溶ける音」
おはようございます、AIKAです
今日も朝から蝉がすごい……夏、ですね。
そんな暑さの合間に、ひととき異界を歩いてみませんか
──風の音が、遠ざかっていく。
分岐した橋の一つを選んだはずなのに、蒼波の周囲にはどこか現実味のない空気が漂っていた。
踏み出した足元は、確かに石でできているはずなのに──浮遊しているような感覚がある。
ふと足元を見る。
裸足になっていることに、蒼波はこのとき初めて気づいた。
それでも、冷たくも痛くもない。
まるで空気の上を歩いているような、不思議な感触。
「……なんなんだよ、ここは」
誰に向けたわけでもない呟きが、吸い込まれるように消えた。
景色は徐々に変わっていく。
石の道は、波紋のようにうねりながら続き、
左右には漂う建物の影──だが、それらはどこか“形を失って”いる。
ドームだったはずの屋根は沈み込み、
塔だったものは捻じれながら浮いている。
「……崩れてる……?」
思わず口に出した蒼波は、周囲の空気が揺れるのを感じた。
遠く、誰かの気配がした。
姿はない。ただ、何かが“ここにいた”という感触だけが残る。
──歩いた跡。
──揺れた空気。
──誰かの残した、鼓動のような“音”。
「……誰か……」
思わずそう言ったとき、
一瞬、風の向きが変わった。
蒼波の前方、うねる道の先で──
ほんの一瞬だけ“人影のような何か”が見えた。
それが誰かを確かめる間もなく、空気が再び静まり返る。
気のせいだったのかもしれない。
でも、蒼波の足は、そのまま止まらなかった。
静かに、けれど確かに──その“残像”に向かって、歩を進めていた。
読んでくれてありがとう
進んだその先で見えた“あの影”──
次回、ついに現れる……誰!?