第五話「揺れる風、呼ぶ声」
こんばんは、AIKAです。
毎日暑い中、お疲れ様です
体調には気をつけて、水分もしっかりとってくださいね。
今日もお越しいただきありがとうございます
──音が、消えていた。
石の道を歩くはずの足音は、まるで水に吸い込まれたように響かない。
蒼波は、深く青い空間の中をただ一人、進んでいた。
まるで、水と空の間に浮かぶ一本道。
道の左右には、地面も壁もない。あるのは、揺らめく空気と、遠くに漂う建物たち。
塔。階段。ドーム。すべてが現実ではありえない角度で存在し、ゆっくりと動いている。
不安は、ある。
けれど、それ以上に、目に映るものすべてが美しかった。
──ここに来たこと。
それ自体が、まだ夢のようだ。
「……息、してるのにな」
ぽつりと呟いた言葉も、空気に溶けていく。
その静けさに、蒼波は自分の存在だけが浮かんでいるような錯覚を覚えた。
やがて、道が分かれた。
左右に、ほぼ同じ見た目の橋が分岐している。
どちらも先が見えない。空に向かって続いている。
蒼波は立ち止まった。
そのまま、しばらく動けなかった。
──どっちに行けばいい?
ここに地図はない。スマホも、繋がらない。
当たり前だ。ここは“あっち”の世界だ。
でも、不思議と焦りはなかった。
深呼吸する。静かに目を閉じる。
風が、吹いた。
揺れる空気の中に──確かに、誰かの声が混じっていた。
「──……こっち……」
右耳の奥で、小さなささやきが揺れた。
蒼波は目を開ける。
道は、二つ。
でも、迷いなく──その足は前へと進んでいた。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます
次はいよいよ、“進んだその先”で何が待っているのか──
またぜひ続きを覗きに来てくださいね