第四話「水の底、空のひかり」
こんばんは、AIKAです。
今日も読みに来てくれてありがとう〜
──まるで、水の底に沈んだようだった。
扉をくぐった瞬間、蒼波の視界は深い青に染まり、すべての音が遠ざかっていった。
呼吸はできている。けれど、肺に入る空気さえも、どこか異質で。
重く、冷たく、そして……美しい。
「……ここが、あっち……なのか」
ぽつりと呟いた声が、自分の耳にさえ届かないような静けさ。
足元は硬い石の道だった。
それは細く、まっすぐと前へと続いている。
だが、周囲には地面がない。道の下は、深い深い空。
──空、なのに、水のような。
空気が波打つように揺れている。
石橋の先には、ゆがんだ建物群がゆるやかに浮かんでいた。
塔のようなもの、歪んだドーム、斜めに傾いた階段──
まるで絵の具が滲んだように、形を保ったまま、揺れている。
蒼波は思わず、足を止めた。
体は軽いのに、心が追いついていない。
「……すごい……」
この言葉だけは、自然とこぼれた。
その瞬間、胸の奥にひとしずくの熱が灯る。
いま、自分は──確かに“こっち側”にいる。
──カラン。
小さな音が、背後から響いた。
振り返ると、あの“扉”はもうなかった。
そこには、ただ澄んだ空間があるだけ。
引き返せない、と理解した。
でも、怖くなかった。
「奏……いるのか?」
返事はない。
けれど、不思議と寂しくはなかった。
ただ前へ。
道が、まだ続いているから。
──どこかで、誰かが呼んでいる気がする。
最後まで読んでくれてありがとう〜!
また次も読んでくれたら嬉しいです