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波間に揺れる異界の扉  作者: AIKA
第1章「扉の気配」
3/75

第3話 [扉の前で、波は静かに満ちていく]

ようこそ、今日も読みに来てくれてありがとう。

今回は、蒼波の中で何かが動き出す話です──

蒼波は、波の音で目を覚ました。


いや、正確には──目覚める前から、聞こえていた。


夢と現のあいだ。

その境界で、静かに打ち寄せる波の音が、彼の意識を深く揺らしていた。


いつもの部屋。

カーテンの隙間から差し込む、白く濁った朝の光。

だが、その空気はどこか“違って”いた。


「……また、か」


自分でも分かっていた。

夢ではない。けれど、現実でもない。


スマホの時計に表示されていた時間は──午前五時二十三分。

なのに、まるで水中にいるように、時間すら歪んで見える。


耳元で──波が呼んでいた。


蒼波はゆっくりと体を起こし、立ち上がった。

窓の外を見た。まだ空は暗い。

けれど、風は吹いていないのにカーテンが揺れている。


──行かなきゃいけない気がした。


理由なんてなかった。

ただ、心がそう言っていた。


自分でもおかしいと思いながら、ドアノブに手をかける。

けれど、その先にあるのは、いつもの廊下ではなかった。


視界が揺らぐ。

空気が震える。

足元が沈むような感覚──


一歩、踏み出す。


周囲の色が静かに変わり始めた。


畳の感触が消え、足元に広がるのは濡れてもいないのに湿った空間。


そして、目の前に──それは現れた。


──扉。


古びた木製の、どこか懐かしい雰囲気を纏った扉。


まるで、最初からそこにあったように。

けれど、確かに現実には存在しないもの。


蒼波はその前で、静かに立ち尽くした。


息を吸う。

少しだけ震える指先で、ノブに手をかける。


「……これが、俺の……」


言葉にならないまま、思考は波にさらわれた。


迷いも、恐れも、期待も──

すべてが波に包まれていく。


そして──


蒼波は、静かに扉を開けた。


その先には、まだ何も見えない。

ただ、光と空気と、揺れる気配だけがあった。


一歩、また一歩。

扉をくぐり──蒼波は、“こちら側”を離れた。

挿絵(By みてみん)


ここまで読んでくれてありがとう。

次回、扉の先は──

また続きを読みに来てくれたら嬉しいです。これからもよろしくお願いします

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