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波間に揺れる異界の扉  作者: AIKA
第1章「扉の気配」
2/69

第2話 [波間に揺れる記憶]

読みに来てくれてありがとうございます。


本作は第1話に続き、世界観を丁寧に描きたくてリライトしました。

日常のすき間に“異界”がにじみはじめる──そんな違和感と静かな気配を感じてもらえたら嬉しいです。

翌朝──

蒼波は寝起きから、何かが引っかかっていた。


昨日の夢。

海辺のような景色。

白いワンピースの少女。


──かなで

名前も、顔も、確かに覚えているのに。

まるで“見てはいけない何か”に触れたような感覚が、心の奥に引っかかっていた。


登校の道すがら、信号待ちの交差点で立ち止まる。


目に映る世界は変わっていない。

けれど、どこか“薄い”。

空も、風も、人の流れさえ、どこか現実感に欠けていた。


「……海の匂いがする」


誰に言うでもなくつぶやいたその瞬間、

すれ違う女子高生に「えっ今なんて?」と変な顔をされた。


蒼波は気まずそうに笑って、その場を歩き出す。


潮の香りなんて、あるわけがない。

この街に、海なんて近くにないのだから。



放課後、寄り道せず帰宅した蒼波を、

穏やかな声で出迎えてくれたのは、祖母──おばあちゃんだった。


「おかえり、そうちゃん。今日はいつもより静かに帰ってきたねぇ」


「……なんか、疲れててさ」


「ふふ、そういう時期かねぇ」

湯飲みを差し出してくれたおばあちゃんは、

昔から少しだけ不思議なことを言う人だった。


「おばあちゃんさ、夢の中の“音”って、聞こえる?」


蒼波の問いに、おばあちゃんは一瞬だけ手を止めた。


「……波の音かい?」


「……うん。どうして分かるの?」


「昔ね、そうちゃんがまだ小さかった頃、

よく“海の夢”を見たって言ってたんだよ。覚えてる?」


思い出せない。でも、どこか懐かしい。


「ほら──『波の向こうから、女の子が呼んでた』って言ってたよ」


手のひらが、じんわりと汗ばんだ。

息が浅くなっていく。


「もしかして、また見たのかい? その夢」


「……うん。名前、奏っていう子。どこかで会ったような気がした」


「奏……ねぇ」


おばあちゃんは湯飲みのふちを指でなぞりながら、

まるで“知っている”ような顔をしていた。


けれど、それ以上は何も言わなかった。



夜──


蒼波はまた、枕元のスマホを見つめていた。

流れるBGMも、SNSの通知も、どこか現実感が薄い。


ふと、部屋のどこかで水音がしたような気がした。

イヤホンを外す。


しん、とした部屋の中。

外から車の音もない。


なのに──


耳の奥で、かすかに波の音が響いていた。


「……まただ」


気のせいなんかじゃない。

この音は、現実のどこにも存在しないはずなのに、

はっきりと“呼ばれている”と感じた。


──奏。

あの子は、誰なんだろう。


いや、違う。


どうして俺は──

“あの場所”に、行こうとしているんだ?


答えは、まだ波の向こうにある。


【第二話:了】

読んでくださって、ありがとうございます。


少しずつ異界の気配がにじみ出てくる──そんな感覚を楽しんでもらえたら嬉しいです。

これからも応援よろしくお願いします。

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