第十三話『ゆらぎの中の“君”』
こんばんは。今日も立ち寄ってくださってありがとうございます。
8月に入って少しずつ夏らしくなってきましたね。
季節の変わり目とともに、物語の中でも新たな“誰か”が動き出します。
この先の出会いが、どんなものになるのか──
ぜひ、そっと見守っていただけたら嬉しいです。
空気が、震えていた。
目の前にいる“それ”が、確かに人の形をしていると気づいた瞬間、
蒼波の心臓は大きく跳ねた。
──人影じゃない。
──誰かが、そこにいる。
揺らめく霧の奥、少女のような細いシルエット。
淡い光に浮かぶ長い髪。顔はまだ見えない。
「……君は……誰?」
蒼波は、喉の奥からようやく絞り出すように言葉を投げかけた。
しばらくの沈黙のあと──その影が、首を傾げた。
「……あなたこそ、誰……?」
かすれたような声だった。でも、やわらかく、どこか懐かしい響きだった。
蒼波は戸惑いながら、自分の名を名乗る。
「……蒼波。春坂、蒼波」
少女の影は小さく頷いた。でもその表情には、どこか曖昧な迷いが残っている。
「そっか……蒼波くん、なんだね……」
「君は……?」
問い返すと、少女はほんの少しだけ目を伏せた。まるで“何かを探すように”。
「わたしは……えっと……」
言いかけて、口をつぐむ。
「……わからないの。思い出せそうで、思い出せない……そんな感じ」
世界が、わずかに揺れた。
浮かぶ石畳がきしむように震え、辺りの空気がわずかに色づいた。
淡い青と紫が交じり合うような、幻想的な波紋。
少女はその中で、静かに立っていた。
まるでこの揺らぎの中に“溶け込んでいる”かのように。
「……でも、なんとなくわかる気がするよ」
蒼波が息を呑む。
少女は、ほんの少しだけ微笑んだ。
「また……来てくれたんだね」
その言葉に、蒼波の呼吸が止まった。
──また?
──会ったことが……ある?
問い返す前に、霧が深くなった。
その姿は、またふっと霧の中に溶け込むように、かき消えていった。
ただ、その言葉の余韻だけが──蒼波の胸に、確かに残っていた。
最後まで読んでくださってありがとうございます
ついに現れた“彼女”。
でも、まだ何もはっきりとはわかりません──
次回をお楽しみに。
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