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第五話 お茶会


 ウィリアム司教に相談をした日からあっという間に3年半という月日が経ち、私は12歳になった。

 未来の私と会った日から4年以上経過したことになる。


 この3年半、悪魔について様々な書物を読み調べてはいるが、残念ながら未来の私が契約をしたかもしれない『時を操る悪魔』についての情報は得られていない。

 ウィリアム司教も教会の書物を調べたり他の司教達に聞いたりしながら『時を操る悪魔』の情報を探してくれているが、やはり私と同じ状況だ。


 悪魔についての情報が手に入らない以上、今できることをやるしかない。

 あれから毎日、ウィリアム司教からお預かりしているロザリオを首から掛け、朝晩ロザリオを手に神様へ祈りを捧げている。

 未来の自分を連想させる薔薇は徹底的に避け、12歳の誕生日にお母様からいただいたアイリスの香水をつけている。アイリスの香水は、薔薇の香水よりも優しく柔らかな香りがしてとても心が落ち着く。

 それに、アイリスの花言葉は“希望“。

 アイリスの香りを身につけ、未来を変えていきたい。


 オーウェン様との関係は順調……のはずだった。 

 お互いの家で定期的に開いているお茶会では、鉱物の話に加えて、最近では領地経営を学んでいるオーウェン様と共にダーズビー侯爵領の特産物や新しくできたお店について話すのがとても楽しい。


 我が伯爵家で交流する際は、毎度ニコラが乱入しようとしてはお父様達に叱られていたのだが、最近ではオーウェン様がいらっしゃるときはお母様と買い物に行かせたり厳しい家庭教師のマナーレッスンを入れたりすることで乱入が阻止できるようになった。


「お姉様ばかりずるいわ!私だってオーウェン様とお話したい!オーウェン様だって本当は私と話したいに決まっているもの!」


 ニコラがそう言って私に詰め寄る度に、お父様達に揃って「それはない」と否定されているにも関わらず、ニコラは諦める様子がない。

 ニコラは年々私の物に対する執着が増してきている。

 ついに先日、私の部屋に忍び込みオーウェン様からいただいたネックレスを首につけて夕食に現れてからは、私が部屋にいるいないに関わらず、私の部屋は鍵を閉めるという決まりができた。

 お父様お母様から強くお叱りを受けたニコラは、これを機に護衛という名の監視がつくことになり、勝手な行動ができなくなったため、いつ私の物がニコラに取られるかという不安からは少しずつ解消されてきている。


 悪魔のことは未だにわからないが、オーウェン様との関係は順調に進んでいると思っていた。

 しかし、先日のお茶会で話が盛り上がっていたかと思うと、ふとした瞬間オーウェン様の表情が曇る瞬間があり、私は妙な胸騒ぎを覚えていた。


 そして今日、同年代の貴族の子息子女が集まるお茶会に参加していた中で、オーウェン様のご様子から、もしやもしやと恐れていた事態が起こった。


「聞いていらっしゃいますか?」

「私達の話など聞く価値もないと思っていらっしゃるのでは?」

「私達が格下の家柄だからといって、酷いですわね」


 オーウェン様との事を思い出していたところから現実に引き戻される。

 私の目の前には怒りを隠せない、いや隠さないといった様子で私を睨みつける3人のご令嬢がいた。

 私から見て右にいるのがフォード子爵家のアンナ様、左にいるのがオークランド子爵家のリア様。

 そして中央にいるのがルース男爵家のロージー様だ。


 怒りを露わにしている3人を前に心臓が痛いほど脈打つが、動揺を悟られないようにフーッと静かに深呼吸をしてから答える。


「聞いておりますわ。しかし信じられません。オーウェン様からはそのような事、一度もお聞きしたことはございません」

「だから、それはソフィア様に気をつかって言い出せないだけなんです!!本来ならソフィア様が察して身を引くべきなんですよ?!愛し合う2人を引き裂くだなんて、本当に酷いわ!!」


 そう言って手で顔を覆い泣き出したロージー様を、アンナ様が心配そうに支え、その様子を見たリア様は私に怒りの目を向ける。


「ロージー様とオーウェン様は愛し合っているんです!いい加減、オーウェン様に縋り付くのはやめて身をおひきになったらいかがです?」

「リア様のおっしゃる通りですわ!ロージー様の方がオーウェン様に相応しいですもの」


 最近、オーウェン様の時折見せる曇ったお顔から、もしや想い人が現れたのでは?と不安に思っていた。

 そんなはずはない、と自分に言い聞かせてはいたが、こうやって今目の前にオーウェン様と相思相愛だという令嬢が現れてしまったのだ。

 オーウェン様と相思相愛だというロージー様は、ふわふわした金の髪に美しい薔薇の装飾をつけ、ピンクの瞳に涙を浮かべながらも私に強い眼差しを向けてくる。


 やっぱりという気持ちと、そんなはずはないという否定したい気持ちがごちゃごちゃになり頭が真っ白になってしまったその時、耳馴染みのある声が後ろから聞こえてきた。


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