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未来からの忠告と選択  作者: もちまる


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16/19

番外編 叶わぬ想い(ニコラ・コークラン)


 あれから半年。

 恐れていたことが起きた。


 その日食堂に入ると、アダムお兄様しかいなかった。


『あれ?お父様お母様は?お姉様もまだなの?』


 いつも私より早く席に着いている3人の姿が見当たらない。


『ああ、3人は少し用事があるらしいから僕たちだけで食べよう』


 なぜだか妙な胸騒ぎがした。

 気遣うようなお兄様や使用人の視線。

 腫れ物に触るような態度。


 まさか……。


『お兄様、3人はどこへ出かけたの?』

『んー?わからないな。僕は用事で出かけるとしか聞かされていないからね』

『マリーは何か知ってる?』


 メイドのマリーに聞くが口ごもるばかりで要領を得ない。

 その場の誰に聞いてもそれは同じだった。


『ダーズビー侯爵家』


 私がその名を口にするとマリーがギョッとした顔をした。


『ダーズビー侯爵家なのね?!どうして3人だけで行ってしまったの?!』

『はあ……どうしてお前はこういうところだけ勘がいいんだろうな』


 溜め息をつくお兄様に詰め寄る。


『やっぱり!!教えて!!今日はお姉様のお茶会の日じゃなかったでしょ?!それなのになんで……』

『僕からは何も言えない』

『なんで?!どうしてよ!!』


 泣いても喚いてもお兄様は何も教えてくれなかった。

 仕方なく3人の帰りを待っていたところ、それから2時間くらいして窓辺から馬車が帰ってくるのが見えた。


 急いで3人の元に駆けつけると、一番聞きたくなかった言葉を聞かされることになってしまった。


 私の必死の抗議は誰にも届かず、お母様に部屋へと強制連行されてしまった。

 お母様の腕の中で泣き続ける私の背中を、お母様はずっと撫でてくれた。


『ニコラ、初恋は必ず叶うというわけではないわ。お母様もお父様が初恋の相手ではないの。それでもお母様は幸せよ。初恋は叶わなかったけれど、また恋をしたの。お父様にね』

『いや!!いやだ!!私はオーウェン様と結婚したいの!!オーウェン様じゃないとだめなの!!』

『ニコラ……』


 お母様の言葉も私には何も響かなかった。


『なんでこんなことに…こんなのおかしいわ!!何かの間違いよ!!』


 そうだ、何かの間違いに違いない。

 ダンスが苦手なお姉様がオーウェン様と結婚して侯爵夫人になるだなんて笑えない冗談だ。

 泣きながらそう言った私にお母様はため息をついた。


『あなたは今までソフィアの何を見てきたの?ニコラ。最近のソフィアのダンスの授業は見ていないでしょう?ソフィアはここ半年、必死にダンスを練習して今はもうどこに出しても大丈夫だって先生のお墨付きよ。ソフィアが頑張り屋さんなのはあなたもよく知っているでしょう?』

『うそ……』



 私が唯一お姉様に勝てていたところだったのに。


 

 その後お母様が何を言っていたのかわからない。お父様も私を慰めにきてくれたが、誰のどんな言葉も私が欲しい言葉ではなかった。

 それならば、と私はお姉様を説得することにした。優しいお姉様なら、私が泣きながらお願いすればオーウェン様との婚約を代わってくれるのでは?だがその希望はあっさりと砕け散ってしまった。


『ニコラ、それはできないわ。私とオーウェン様の婚約は正式に成立したの。それにね、私もオーウェン様をお慕いしているの。こればかりはニコラのお願いでも譲ることができないわ』


 初めて見るお姉様がそこにいた。

 凛として有無を言わせない雰囲気。

 決して折れないという強い意志を宿した瞳。


 私は結局すごすごとお姉様の部屋を後にするしかできなかった。


 部屋に戻った私は先程のお姉様の姿を思い出していた。



 お姉様、すごく綺麗だった。

 物語に出てくる何かの宿命を背負ったお姫様みたいだった。

 昨日までの穏やかでいつもにこにこしているお姉様とは何かが違う。すごくかっこよかった。


 どうして?1日で何が変わったの?

 ……婚約だ。オーウェン様との婚約がお姉様をあんなに綺麗に輝かせているんだ。

 羨ましい。私だってお姉様のようになりたい。私だってあんな風に輝きたい。

 やっぱり、オーウェン様を諦められない!!



 何としてもオーウェン様を私に振り向かせたい、その一心でその後私が立てた作戦はことごとく失敗してしまった。


 "お姉様とオーウェン様のお茶会に乱入して私の良さをわからせる作戦"

 乱入をしてもお姉様の目配せで使用人たちに強制的に退出させられてしまうし、いつの間にか乱入できないような妨害工作をされるようになってしまった。


 それならばと考えたのが"周囲を味方につける作戦"

 まずオーウェン様からお姉様への贈り物を私が身につける。お姉様がもらったネックレスはお姉様の燻んだ髪よりも、金色に輝く私の髪によく映えるはずだ。ネックレスを身につけた私を見て家族も使用人もこう思うに違いない。


 ソフィアよりニコラの方が似合っている。

 ニコラの方がオーウェン様に相応しい。


 だが、意気揚々とネックレスを身につけ夕食の場に現れた私にお母様は『ヒイッ』と珍しく悲鳴を上げ、お父様はギョッとした顔をした。お兄様は口をぽかーんと開けて信じられないものを見るような目で見てくるし、お姉様はというと……すごく傷付いた顔をしていた。

 すぐにネックレスは取り上げられ、護衛という監視がついて身動きが取れなくなってしまったのが私が11歳のころだった。


 それから4年。

 私の努力もむなしく、お姉様とオーウェン様は結婚してしまった。結婚式当日は大勢の監視の元屋敷に置いてけぼりにされてしまったし、結婚してお姉様がダーズビー侯爵家に嫁いでいってしまってからはこちらに顔も見せに来なくなってしまった。


 それならばと私から会いに行こうとしても全て妨害され、社交界でお姉様の悪評を流して離縁させようとしても誰も信じてくれなかった。


『いい加減になさい。ダーズビー侯爵夫人はそのような方ではありません。今まで散々侯爵夫人を困らせてきたあなたの話を信じるものは、この社交界にはおりませんわ』


 私の味方は家にも社交界にも、どこにもいなかった。

 オーウェン様を追いかけ続けた私を結婚相手に望んでくれる人は誰もいなかった。

 そうしてとうとう、19歳になった私は生まれ育った伯爵家にもいられなくなってしまった。


『ニコラ、私達と別邸に行きましょう。ここから、あなたの思考を埋め尽くしている事柄から距離をとるのよ。そうでもしないとあなたは、いつまでも自分の罪と向き合うことができないでしょうから』




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