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エピローグ


 悪魔との対峙から2ヶ月が経った。


 オーウェン様が目を覚ますと屋敷中が蜂の巣をつついたような大騒ぎになった。

 屋敷に留まってくれていた医者に診てもらうと、危機は脱したとのことで皆で抱き合って喜びを分かち合った。


 その後オーウェン様は医者も驚くような速さで順調に回復していき、全治3ヶ月と言われた怪我が僅か1ヶ月半で完治した。


 そして今日、突然教会に祈りに行きたいと言い出したオーウェン様と、子供達を連れてウィリアム司教のいる教会を訪れている。


 全員で神様へ感謝の祈りを捧げ、帰ろうとした時にウィリアム司教が現れた。


「あなた、少しウィリアム司教とお話したいことがあるので先に馬車に戻っていてください」

「わかった。エマ、おいで」


 家族が教会の外へ出ていくのを見守り、ウィリアム司教の元へ向かう。


「ウィリアム司教、お久しぶりでございます」

「ソフィア様、お久しぶりですね。お元気そうで何よりです」

「おかげさまで。……ウィリアム司教にお話ししたいことが沢山、本当に沢山あります。今日は家族と参りましたので、今度お時間をいただけますか?」

「ええ、もちろんです」

「それと、こちらをお返しいたします」


 私はそう言うとウィリアム司教からお預かりしていたロザリオをウィリアム司教に渡した。


「これは……」

「長年、大切なロザリオをお預けいただきありがとうございました。ウィリアム司教と共に長年調べ続けたことやウィリアム司教からいただいたお言葉が、私を正しい行動に導いてくれました」

「何か、区切りがついたのですね」

「はい。大きな区切りがつきました」

「よかった……。今までの苦労が実ったのですね。今すぐお聞きしたいのも山々ですがご家族がお待ちですからね。是非近いうちにまたお越しください。ここでお待ちしておりますから」

「はい、近々また伺います。ウィリアム司教、長年ご助力いただき心から感謝申し上げます」


 深く感謝の意を表し顔を上げると、ウィリアム司教は目に涙を浮かべ、穏やかに微笑んでいた。



※※※



「お待たせしてごめんなさい。子供達は寝てしまったんですね」

「大丈夫だよ。今日は陽が暖かくて気持ちいいからね。お話しはできた?」

「はい。ただまだまだ話し足りないので今度また伺おうと思っています」

「そうか、それがいいね」


 オーウェン様からすやすや寝息をたてているルークを受け取り、対面するように腰を下ろすと馬車が動き出した。エマはオーウェン様の膝枕で気持ち良さそうに眠っている。


「そういえば、オーウェン様はなぜ急にお祈りに行こうと思われたんですか?」

「うーん。ソフィ、笑わないで聞いてくれる?」

「ええ、笑わないで聞きます」

「ありがとう。2ヶ月前に事故に遭った時なんだけど、神様にあったんだ」


 オーウェン様が語るところによると、鋭い痛みを感じると共に意識を失っている間、気がつけば何もない真っ白な空間を彷徨っていたのだそうだ。


 自分は死んでしまったのか?

 ソフィ、エマ、ルーク……家族を残して死ぬとは。


 上手く事態を飲み込めずに呆然としていた時、真っ白な空間が眩く輝きだし、あまりの眩しさに目を瞑ったオーウェン様。

 しばらくそうしていると、自分の名を呼ぶ声がしてそっと目を開けたところ、目の前に美しい男性が立っていたらしい。

 考えるよりも先にオーウェン様の身体は自然と膝を突き頭を下げていたと。すると頭に温かいものを感じ身体中がぽかぽかと温かくなったらしい。

 そして顔を上げるとその方は慈悲深い面持ちでこう告げられたのだそうだ。


『そなたを家族の元へ返そう』


「神様が、奇跡を起こしてくださったんだと思うんだ。まだ生きなさいって。全治3ヶ月の怪我が半分で完治したのも神様の奇跡なんだと思う。だから、早く感謝をお伝えしたかった。もちろん目覚めてから毎日祈りを捧げていたけど、あの教会で……そう思ったんだよ」

「そうだったのですね。やはり神様は奇跡を起こしてくださったのですね」

「うん。ただね、わからないことがあるんだ。神様はこうもおっしゃっていたんだよ『ソフィアによくやったと伝えて欲しい』って」

「私に?」


 もしかして、全て神様は見ておいでだったのだろうか?

 ……よかった、あの時悪魔の甘言に乗らないで本当によかった。


「ソフィ、何のことかわかる?」

「ええ、恐らく。私も長い話になりますが、屋敷に戻ってから笑わないで聞いてくれますか?」

「もちろん」


 私の大好きな笑顔。

 可愛い子供達。

 これからの未来に何が起きるのかはわからない。

 神様の奇跡はそう何度も起きるものでもないだろう。

 だからこそ、毎日を大切に生きていきたい。


「ソフィ、見て」


 オーウェン様から私に見えるように差し出された左手を見ると、オーウェン様が結婚指輪と共に最近着けているエメラルドの指輪が、窓から差し込む太陽の光でキラキラと輝いていた。


「綺麗な緑色ですね」

「深緑の色だよ。ソフィの瞳と同じ深い緑色、探すの苦労したんだ」

「私の瞳の色ですか?この美しい色が?」

「気がついてなかったの?」

「はい」

「ふふ、ソフィらしいね。エメラルドの石言葉、ソフィならわかるよね?」

「エメラルドの石言葉ですか?もちろんです。エメラルドの石言葉は、幸福、幸運、希望、それと……新たな始まりです」

最後までお読みいただきありがとうございました。

至らない部分も多々あったと思いますが、ここまで読んでいただけたこと、心から感謝申し上げます。


また、ブックマークや評価、リアクションもありがとうございました。励みになります。

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― 新着の感想 ―
神の奇跡が悪魔討伐の報酬とか神ちゃっかりしてるなー。 一応、妹の仇を取った形になるんだろうか?ハッピーエンドや。 ……てっきり、ロザリオを砂時計に叩き込んで割るんだと思ってた。
とても面白かったです!特に主人公がきちんと誰かに相談したり打ち明けたりできるのが良かったです。映画のようなストーリーだと思いました。 ハラハラしながら読みました。素敵な物語をありがとうございました。
完結、ありがとうございました。 あぁ、やはり妹だった…という気持ちと、妹ちゃんが更生する機会は無かったんだなぁという無力感。 親もしっかりしてて、姉もさらに気を付けて動いているし、より婚約者との絆も深…
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