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聖女を侍らす王太子が公爵令嬢と鉢合わせ!?カスタネットは世界を救うのか!?

作者: 丸都 蜜柑

いや、価値観ってあるやん??無理じゃね??とふと思ったので。

「あら…アレクサンダー様」

「サンドラか」

互いに豪奢な金の髪を靡かせ、鋭い視線を交わす。

御付きの者以外に2人の邂逅に学園のカフェテラスに緊張が走る。

何故ならば、この2人は大変不仲と言う噂があったのだ。

高貴オーラにやられる前に不仲オーラで周りが死ぬ。

揚げたパンを食べに来ていた男爵子息なんか最後の晩餐だァ…と泣きながら、追加の揚げたパンを頼んでいる。

デーン王国の輝かしき不沈の太陽と名高いアレクサンダーと社交界の薔薇姫と愛されるサンドラ公爵令嬢は婚約者であり、従姉妹であった。

豪奢な金髪に碧眼を持ち、良く似た美貌をした2人なのだが、社交界では、一曲終わるだけで帰ってしまい、あまり言葉を交わさないと言う話であり、学園で2人が顔を合わせたのも、入学して三ヶ月経った今である。

絶対、不仲ですわ…喧嘩ですわ…とパフェを食べていた伯爵令嬢は呻く。

いや、不仲な夫婦なんてものは政略結婚が主流の貴族では当たり前な話だ。

でも、高貴な生まれの者は基本的に仮面夫婦として、上手くやっている。

ここまであからさまに顔を合わせないひえっひぇな高位貴族の婚約者達は珍しいのだ。

そして、美しい公爵令嬢は王太子の側に新しく侍る少女に気付いた。

「あら…随分と可愛いらしい方がいらっしゃるのですね」

「あぁ、才能があってな。召し抱えた」

「私に黙ってですの?」

「きゃっ」

聖女として学園に入った平民の特待生は怯えるフリをしながら、最高に可憐な角度を王太子に向けた。

流石に王妃選ばれるとは思ってないが、火遊びが公爵令嬢にバレて、この結婚が無くなったらよし!なのである。

だって、聖女は教会側の刺客なのだ。

王権をぎゃりぎゃりに削って、夕飯のメニューを薄い味のスープからゴロゴロ野菜が入ったスープに変えて貰う聖女の野望を止められる人間は居ない。

「そう怒るな、サンドラ。民が怯える」

「私が恐ろしいとでも仰るのですか?アレクサンダー様」

「あぁ、恐ろしい」

え!?!?婚約者にそこまで言うの!?と揚げたパン3つ目に入っていた男爵子息は思った。

だが、2人は互いを睨みつけ合い、ゆっくりと互いに向かって歩き出した。

「酷い方、貴方の豪奢な金髪は獅子の鬣のよう」

「はは、お前の艶やかな金髪はどんな宝石よりも価値があるだろうな」

「ふふふ、貴方の碧の瞳はエメラルド。飾り付けてしまいたいわ」

「なら、私もお前のエメラルドを奪ってやろうか」

「王宮を渡り歩く思考はまさに老獪な貴族のような貴方」

「社交界を束ねるお前はまさに麗しい唯一無二の毒花」

2人は後一歩踏み出せば、鼻先が触れ合うくらいまで近付き、ガンを付け合っている。

こんな高貴ヤンキーな喧嘩嫌すぎ…と給仕は揚げたパン4個目を運びながら、思った。

聖女はウキウキになる。

これ、絶対に終わりよ!婚約破棄よ!!とリズムに任せて踊りそうになった。

公爵令嬢は囁いた。

「私達、同じ事を考えてるんじゃなくて?アレクサンダー様」

「そうだな、サンドラ」

2人が高く手を挙げる。

え!?殴り合い!?それは流石にやばくない!?と周りが焦る。

だが、2人はゆっくりと手を重ね、王太子が公爵令嬢の腰に手を回した段階でえ?と誰かが間抜けな声を出した。

「サンドラ、やはり、私に相応しいのお前だけだ」

「アレクサンダー様以外に私に相応しいものは居ませんわ」

ゆっくりと2人が動き出せば、互いの御付きの者達がそれぞれ楽器を取り出していく。

それにポカンとしたのは聖女と周りのカフェテラス利用者である。

「ちょ、ちょっと!!あれは何!?!?」

「?殿下と公爵令嬢ですね」

「そうじゃないわよ!?不仲は!?」

打楽器担当の男爵子息は掴みかからんばかりに話しかけてきた聖女にあぁと口を開いた。

「あの2人、めちゃくちゃ仲良し過ぎて、接触制限が付いてるんですよ」

「接触制限!?!?!?」

「子どもの頃に出会ってから、もう、イチャイチャのラブラブで」

「イチャイチャのラブラブ!?」

「デビュー前にチュッチュッまでしちゃったらしくて」

「チュッチュッまで!?!?」

「流石に不味いとダンスは一回、接触は3ヶ月に一回と決まっちゃったんです」

だから、はいっと渡されたカスタネットを聖女は思わず、受け取った。

「殿下が見込んだカスタネット担当さんも頑張って下さい」

「カスタネット担当!?私が!?!?」

「えぇ、情熱的なカスタネット捌きで、この私の公爵令嬢への愛を高らかに叩いてくれそうだったと殿下もご満足でしたよ」

聖女は頭を抱えたかった、カスタネットが邪魔で無理だったけど。

確かに音楽の授業で突然、楽器を弾くと言われて、ヤケクソでカスタネットを選んだ。

平民が楽器なんて触る訳ねェだろ??と言いたい気持ちを乗せて、ガンガン打ち鳴らした。

その後に殿下に話しかけられたのだ、私の元に来ないかと。

いや、普通にカスタネット担当の引き抜きって言いなさいよ!?!?!?

「ちなみに2人は接触制限の抜け道としてダンスをするんですが」

「嫌な予感」

「一曲が5時間くらいあります」

「天才的な馬鹿なんです?」

「2人とも体鍛えまくりなんで、凄いですよねェ〜、流石は高位貴族」

我が国は安泰だなぁとのんびりと話しながら、楽器を構えた。

何故ならば、2人がステップを刻み出したからだ。

「アレクサンダー様の獅子の如き御髪、私、大好きですわ」

「あぁ、私もお前の絢爛たる美貌には目を見張る」

まぁ、普通、豪華な物を日常的に愛する高位貴族がそこら辺の平民を好きになるとか、ちょっと、変態だな…ってくらいあり得ないのである。ハムスターに結婚を持ちかけるくらいにはあり得ない。

え?民だぞ?守るべき民にそんな欲を押し付けるとかないわーであった。

価値観が違うし、王太子は聖女の顔がカスタネットに見えていたくらいである。

大体、聖女は色々とストンとしていた、ストンと。

つまり、不仲な王太子と公爵令嬢のカップルは居ない。

ラブラブでイチャイチャな政略結婚予定の恋人達が居るだけである。

「アレクサンダー様」

「サンドラ」

「アレクサンダー様」

「サンドラ」

ラブラブでイチャイチャな2人は互いだけを見つめた。

互いの名前を呼びながら、高難易度のステップを軽やかに決め続ける2人にヤケクソでカスタネットを聖女は鳴らす。

「うわーん!私のゴロゴロ野菜スープがァア!!」

「?殿下の音楽隊は特権で食堂利用無料なんで、ゴロゴロ肉野菜スープが食べれますよ」

「うおー!!!我が太陽、我が薔薇、デーン王国に栄光あれッ!!!!」

手のひらくるくる聖女はきっちりと情熱的なカスタネット捌きを6時間やり切った。

「愛しているぞ、サンドラ」

「アレクサンダー様、私もですわ」

こうして、仲が良過ぎる王太子と公爵令嬢は結婚後、デーン王国は愛と情熱の踊りの国と栄え、聖女はカスタネットワールド大会で優勝したのであった。


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