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90 オノレクライシス。★


 いつも読んでくださってる皆様、★評価、ブクマ、感想、いいね下さった方々、有り難うございます。励みになってます!


 今章最後の回となります。楽しんでくれたら嬉しいです。



 苦痛なら苦痛のまま今日も飲み込む。藻掻く。それが平均次。


 彼はいつものごとく藻掻き始めた、が。


 飲み込み切れない。藻掻こうにも身動き出来ない。そんな状況でも考える──



 どうやって御す?


 この、謎スキル。


 ………………


 ……………


 …………


 ………


 ……


 …狭めては、どうか。


 …範囲を。


 簡単な理屈。この感知エネルギー(仮)の範囲が狭まれば狭まった分だけ、注がれる情報量も減る。…道理のはずだ。


 今自分を苦しめている情報量が減れば苦痛だって減るはず。


 そうなれば、動ける。香澄の無謀を止められる。もしくは彼女のもとに駆けつけられる。


 それにこのスキルは界命力を由来としている。まだ扱い慣れていないが、自分発信のエネルギーには違いない。だから、制御出来るはずだ…いや、もし出来なくとも実行に移すしかないのだ、今は、だから、



 早速、やってみる───






 

    ───出来た。



 半径にして60mに渡り、手当たり次第に感知していたエネルギー。その範囲半径が狭まってゆく。60mから50mへ、さらに45m、40…30m…いや、



「ぐ、あ、が、あ」




 狭められたのはそこまで。

  

 半径にして30m、

 直径にすれば60m、



 確かに狭まったが、範囲内全てから膨大な情報を吸い込み続けるこの感知現象は、依然として変わらぬ苦痛をもたらし続けている。これでは制御したとは言い難い。



 だが、それでも、



「う、ぬ、あ、っ、ああああ!!!」



 何度も言おう。均次は既に怪物だ。思考もそちらに傾いている。出来ないなら出来るようにするまでという思考へ。そんな無茶理論を展開出来るくらいにもう怪物。



 だから、まだいける──足掻け。



 精神や意思の力でどうもならないなら、


 界命力を上手く扱えないなら、


 魔力も動員して──藻掻け。もっと!



 確証なんてない。たださらなる無理矢理でねじ伏せにかかったこれは、正しくの無謀だったが嗚呼…





 …結局の無謀で終わりそうだ。

  


『【◼️◼️◼️力】がさらに暴走、スキル【MP変換LVー】を吸収──』



 この謎スキルは暴走していた…それが発覚して思うのは『然もあらん』。またもスキルを吸収された。これを暴走と呼ばず何と言う。


 だが今吸収された【MP変換】は自分にとって元から意味のないスキル……なら構う事はない、そう思いながら感知範囲を半径25mまで強引に狭めた、結果、



『範囲を縮小された──否、濃縮された【◼️◼️◼️力】がさらに暴走、抵抗を活性化──』



『個体名平均次の魔力を吸収──否、魔力の器をMPごと吸収しました。MP最大値が9880まで減少します。』



 …なんと…、



『これに伴い【MPシールドLV9】に下降します』



 …この謎スキルはただ魔力を吸収するだけに留まらず、その源泉たる器、器礎魔力を突き止め食らう事で、MP最大値を削りとってしまった。まさかこれほど根元的に弱体化させられるとは…いやまさか、



(こ、これれをす、る ために【MP変ん換】をを吸きゅう収した、のかッ!?)



 しかも今度は、吸収した魔力を暴走の原動力に変換しているらしい。その証拠に暴走はさらにと勢いを増した。折角均次がここまで狭めた範囲を再び広げ始めた。その範囲、再度の拡張により現在…



 半径 30m。



 振り出しに戻った程ではないが、後退を余儀なくされた。均次も負けじと抵抗する。さらなる魔力でねじ伏せにかかったが…しかし、こうすればおそらくまた魔力を吸収される。MP最大値が削られるどころではない。器礎魔力まで食われる事になる。暴走はさらに激化する。


 つまりこれは無謀な行為、


 …なのだろう。


 他の方法を考えるべき、


 …なのだろう。


 だが、他を模索する時間もなければ思い付く余裕もない。よって均次の無理矢理はさらなる段階の無理矢理へ。


 ただ、狭める。

 再びの、半径25m。

 そして、やはり。


『MP最大値8240まで下降』


 また器礎魔力を、MPを食いちぎられる。

 それでも魔力でねじ伏せにいく暴挙。

 範囲は狭まる。成果はそれだけ。

 暴走は止まず。根元的弱体化は進む。



 そして再びの、半径20m。



 謎の声はこの範囲変動を『縮小ではなく濃縮である』と言ったが、確かに。範囲を狭めても苦痛の度合いが全く変わらない。つまり、範囲を狭めたところで解決するか怪しいものだ。


 それでも何かはするしかない。


 大家香澄に危機が迫っている以上、均次に傍観の二字はない。だからさらに、狭める。




 そして半径 15m。 

       だが、やはり、




『MP最大値4571まで下降』



 狭める程に抵抗が強くなる。それに伴い壊される器礎魔力も多くなる、その分MP最大値も削られる。これはもう、本格的に、不味い、 



『これに伴い、【MPシールドLV5】に下降します』


   

 そう、MP最大値が減少すれは、均次の紙装甲を補う【MPシールド】の分厚さが損なわれる。


 それに彼は強敵との戦闘に備えて極限と言っていいほどスキルを強化し続けてきた。その甲斐あってどれも強力となったが、その分使用時に消費されるMP量も多くなっている。


 つまりは、かなり燃費の悪いスキル構成となっている。


 それでもやってこられたのは潤沢なMPを前提としていたからだ。


 つまりこのままMP最大値を削り取られて続ければ、折角育ててきたスキル群までが無駄に──それどころか、逆に足枷となりかねない。



 それでも均次は止めない。

 範囲を狭め続ける。



 今までの苦労より、

 今後の不安より、

 今は大家香澄。



 これ以外を考えられなくなって…いや、『考える』という行為が出来ているだけマシかもしれない。


 これは常人であれば一瞬で狂い死んで当然、いや、人外となった今でも死なないでいるのが精一杯。


 それ程の情報量であり、怪奇すぎる現象。なのにこうして無闇にでも抵抗出来ているのは、大家香澄という『大切』への執着、あったればこそ。


 そう、それ以外思えなくなっていた。均次の脳は全損一歩手前。正常な判断など望むべくもない状態。


 だから、なおさら、さらに、無茶を重ねる事が出来てしまう。範囲を狭める。狭める、狭める、狭める、狭める。それしか出来ない、思えない、だからもっとと、狭め続ける。そしてついに、



 半径、10m。



 …苦痛はなくならない。減ってもいない。

 

 その苦痛で動く事すら、考える事すらままならない。彼はやはり、選択を間違ったかもしれない。


 範囲縮小はこの感知を濃縮するだけに終わるかもしれない。それに、



『MP最大値2210まで下降』



 回帰してよりここまで積み上げた全ての基幹たる器礎魔力とMPが、こうも大量に失われては、もはや──



 それでも、辛うじて思った。


 

 それが、なんだと。



 (大 家さ ん…)


       

 今世では絶対死なせない。それが叶うなら、そのまま生きて、時々よロコんで、おこっテ、かなシサにとまどったりもして、ぎこチナくでも生きる事を、たのしんで…彼女がそうあってクレるなら満足デ、そのたメに自分がどうなろうが──きっとそこマデ想ってイて。そシテその想いは少し、形を変エテ。



 ──泣いて、くれたんだ。



 怒ってもくれた。


 それでも受け入れてくれる。


 拗ねながら、笑いながら、恥をかいても。


 それら全部を一緒にした。心の底から。目一杯に互いの手を広げ合って。


 それは…困ってしまうほど、幸せな事で。



   今、



 全てにおいて一緒にいる──そんな『これまで』が無駄だったと?──無駄な訳あるか──弱くなる?──それでもかまわん──守るだけ──その価値がある──だからするだけ────そうだ──何とかするのだ──それだけ──いや、



「な、な何とか な なる はず、だ おおおやさ、だけ、じゃない むくくくろうた、だだって、いいいっしょ、いしょ、一っっ緒、に、だら、だから、な、」



『…均、次  均次…! 』



「あ、あい、相棒、た、のむ、一ぃっ緒、、にィ  ィ──」



 怨敵、

  仇敵、

   強敵、

 厄介者、

  同居人、

   友人未満

    いや以上…



 極短期間の内に様々な呼び方を経、そのどれにも当てはまらず、果てにしっくりきた別称、それが『相棒』だった。



『均──次──』



 無垢朗太も思う。

 そうだ。

 相棒なのだ。

 だから一緒にいる。

 たまたまではない。

 これは運命。だから、

 側にいるどころか、中にいる。

 こんな事がたまたまであるか。


 誰より、それこそ大家香澄より近くにいるのだ。それなのに…


 何も出来ない。それなのに、、、


 この馬鹿(均次)はこんな自分を相棒と呼ぶ。信じ、頼ってくれている。



 無垢朗太…この瞬間、彼は体温なき霊体が、胸の部分を中心に熱を帯びてゆくのを感じた。


 その熱は全身を巡って静かに暴れ、余波を瞼の裏と鼻の奥まで届けてきた。そこで思わず、



『き、均次!均次頑張れ!これしか言えん我の阿呆ぅっ!でもお前は違うっ!違うのだ!』



 生前を含む今までで一番に声を弾けさせ。



「お、おお、お、 おう、!、!」



 相棒はおそらくは今、『おう』と応えた。その姿にまた、どうしようもなく熱くなる。


 

『ふ、ぐ、く、頑張れ!頑張れ!頑張れ!頑張れええ!均次!我が相棒!出来るぞ!もう少しぞ!頑張れ、ヒーロー!』



 こんな不測の事態になろうとは無垢朗太も予想していなかった。そしてこの土壇場にどうしてやればいいのかも全く分からず──無力。何が相棒か。願う事しか出来ない。だがそれを呪う時でもない。


 だからせめてと振り絞る。


 声だけは。声で足るぬなら心から、目から鼻から口から顔面の全部から。心、霊体、魂の全てから。


 様々を溢れさせ、それら全てに想いを乗せた、ありったけ。最大限を越えて、ありったけ。



「ふ、、ふふ、は」



 かくして、

 それは届いただろうか。

 相棒から相棒へと。



「 へ へ 、 へ 」



 均次も思う。それは何度も思った事だった。それでも思う。数奇過ぎる。あの憎い『鬼』が、彼を殺した自分を応援して、涙まで流してくれている。



(そうだ な…こいつも )



 また死なせる、なんて訳、いくかっ。才蔵も、才子も、義介さんもだッ。他にも、フエさんッ…ったく、しょうがないからヌエのやつも入れてやる。折角救えた鬼怒恵村のみんなもだ。忘れずに…



 嗚呼…前世、あんなにさびしかったのに。



 今世、こんなに…心は、賑やかに。



 (ああ、も、嫌 だ)



 もう嫌だ。独りは無理だ。今世こそ、みんなをいなくさせない。そのためなら、



 そのためならば──



 どうせ…



 一度ならず、二度も死んだ身…











 

 






 自分など───












『範囲を濃縮された【◼️◼️◼️力】が抵抗をさらに活性化、その暴走により個体名平均次のMPがさらに吸収されます。MP最大値が740まで減少、これに伴い【MPシールドLV1】に下降します』


 まだ蜘蛛は健在爆走中。周りには進化モンスターがうようよといる。なのに弱体化は容赦なく進む。


 それでも、


 この失敗も挽回するだけだ。窮地は乗り切るだけだ。


 だが、その先に、さらなる窮地。待ち構える。それも、


 魔力こそがものを言うこの世界で、その肝心なる魔力を失ってしまうという窮地が。


 そうだ。無茶でも苦茶でも無理でも無駄でも無謀でも。




 集束しろ。思いを。




 これ以上は中々ないという窮地が待っていても。それを分かって、こんな苦し紛れをして──それでも。


 結果として大失敗となろうとも今は、この得体の知れないスキルを制御するしか道はないのだから。そうしないと戦う事すらままならないのだから。


 だから。そうだ。やるしかない。それに…そう、それに、『こうするしかない』なんて状況は──










 …ああ、いつもの事だった。




「も、もも、持って、  け」




 最後の足掻き。



 【虚無双】発動。



 使いたくなかった。このスキルは魂を蝕む。今の自分達の不完全な魂で耐えきれるか分からない。



 しかしこの異常事態をどうにかするためには──いや、その異常事態が邪魔をしている?



 中途半端な発動に──それでもだ。少しはマシになった。


 これでも全身全霊の賭けなのだ。残り全ての魔力を込めた賭けだ。こうなったら何の成果もなしに引き下がれない。


 だから願う。


 虚無双ですら没入出来ないなら、せめてと願う。


 これで制御出来たとして、それで終わりではない。だから願うしかない。


 だからの賭けだ。


 なんせこれは、MP全て…どころか、戦闘力の根元たる器礎魔力の全てを代償にしたスキルとなる。


 だからといってあの蜘蛛を倒し、大家香澄を助ける最強の切り札となるかは甚だの未知数ときている。



 それでも、そうなりますように。

 そんな手前勝手過ぎる、願いで、賭け。



「う、おお、おおおおおおおおおおおおおおおおおお!く、ぐ、ぞっ、だら、ぁ、あ、あ、ぃぃいぁあぁあぁあああああああああああああああああああああああ!!」



 謎スキルの範囲は現在、半径5m。



『頑張れ、均次頑張れ!均次!相棒!ヒーローなのだ!お前はっ!どんな時もどんな相手も関係ない!必ず遂げる!それがお前だ均次!だから!やれ、ゆけぃやぁああああああああああ!!』



 ──3 m、



「お う!お、おう!お、お、おげえええ!ぐ、ぞあっ!え、ご…ら!言う事、き、けこのッッ、クソスキルぐぅぁああああああ!、!、あ!か、ああっああああああああああっ!!!」



 ──2m 、



「均次くんっ!!」



 ──1  m…



「──おおや、さん!い いいッ、いいから!いって!行って下さ…ッ!俺ぇ な ら だい、じょう────ぶ」





 ──、 ──ゼロ。




 均次は遂に、この、矛盾(ひし)()く混沌そのものを…謎のスキルを『閉じる事』()()成功した。








 ──そう、これは制御ではない。








 ただ節操なしに暴虐的な質量を伴う情報群が流れ込むのを止めただけ──それも、MPと器礎魔力の全てを犠牲として。


 跡に残ったのは、魔力を完全にゼロとし、ただ肉体だけが異様に強靭化しただけの生物──つまりはそう、今の均次は魔力に覚醒していないのとほぼ変わらない状態となってしまった。その結果──



「?、ぎ、がッ」

 「?、ぐおうッ」


「!、ぎゃぎッ!」

   「!、ぎもうッ!」

 

「!!、げげげひひゃ」

  「!!、ぶもおおお!」


「!!、がはぁぁぁああっ!」

     「!!、べじじしじじ…」



 ──こうなる事は、分かっていた。


 この瞬間に敵を増やす。それも膨大に。もはや蜘蛛だけでなく。他のモンスター達…いやそれも、一部ではなく。


 殺しあっていたはずのモンスターが相争うを止めた。彼らが放つ全ての殺意が均次一人へ集約してゆく。順次標的を移していく。


 蜘蛛だけで手に余っていた。その上で進化したモンスター達が周囲にいた。


 そんな危う過ぎる状況にいながら、大家香澄を守りつつ、警察署内の人々を救出しようとまでしていた。


 …なのに、その上で。



 


 ここにいる人類の敵、その全てに第一の標的とされてしまった。

 




 …それも、こんな、全魔力を失った、死に体で。


 MPを全て奪われ、器礎魔力は粉々となるまで食い散らかされ、魔力由来のスキル全てが使用不能となった、そんな最悪の状態で──いや、


 これでまだ、最悪ではない。


 まだ先が──底がある。


 何故ならこの時点の彼はまだ、意識を手放していない…


 …そう、意識を失うのは、




「な──がぼッ、ぐぶぼ─!!?」『──均次!!?』──これからだ。


   


 ああ確かに。一旦の区切りはついた。


 謎スキルの範囲をゼロとした。


 平均次を取り巻く『外部への感知』は止んだ。


 ならば何故?


 何故まだ、流れ込んでくる?


 この…訳のわからない、


 混沌以上に混沌な、


 情報の濁流は何故、


 止まってくれない?







 …それは反転、したからだ。







 範囲がマイナスへと…つまり、感知するベクトルが、逆向きへ変じたからだ。つまりは、外側から内側へと──



 




 そして次に感知したのは──







 ──自分自身── 


 




 …かくして。また注がれる。


 膨大過ぎて膨大、


 矛盾でしかなくなった情報の濁流──否、



 異常に緻密に細分化され怒涛のごとく注ぎ込まれる混沌は、量をそのまま質を変え──いや、注がれては、もう、ない。

 


 シフトした。


 『注ぎ込まれる苦悶』から、


 『引きずり込まれる苦悶』へと。



 …己という存在を形成する要素にはまず、肉体が挙げられる。


 そしてそこに詰まるは肉と骨と臓物──だけではない。


 それら器官には様々な管が張り巡らされ、それら管には血液が流れ、その中には様々な養分が…さらに言えばそれら全てを構成するのは60兆もの細胞で、その細胞を構成するのは炭素、酸素、水素、窒素、カルシウム、リン、カリウムなどの原子であり…それに細菌まで含めてしまえば──やはりだ。


 全て感知してしまえば『気が遠くなる』レベルで済まされない──否、



 問題はそこではない。


 量の問題では、もはやないのだ。



 先ほどまでも、確かに酷かった。


 圧倒的に詳細過ぎる『外』を捩じ込まれる現象。


 世界に対する認識全てをドロドロとただれたものに変えられる苦悶。


 凄まじいものだった。しかしまだ、耐えれていた。


 首の皮一枚であったが、均次は大家香澄や無垢朗太、仲間達という存在に依る事で、かの混沌を閉め出す事が、抗う事が出来ていた。


 だから範囲を狭めて限定するという事も出来た。遂には閉じて閉め出す事も出来てしまった。


 

 しかしこれは。


 内側だけは。


 いなせない。


 逃げられない。


 閉め出せない。


 それは何故か。


 自分だからだ。


 自分だけは切り離せない。


 自分だけは閉め出せない。


 自分からは逃げられない。


 肉体一つとっても知覚不能な領域。それが『自分の中』という禁域。


 四肢を身体をどんなに刻み分けても一個の自分。最初から限定されている。なのに把握しきれず、だからこそとらえ切れず、



 絶対に、逃げられない。


 

 それが、『自分』



 だから、嗚呼…なす術も、なく。



 ……呑まれてゆく。


 内側へ。さらに内側へ。


 己であって知らずにいたオノレに呑み込まれ、オノレを構成する全てに溺れ。溺れながら、突き抜けながら、


 そのさらに向こう側へ。容赦なく、奥深く、真なる深層へ──こうして平均次は意識を失った──否。



 呑まれてしまった。

 自分という深淵に。



 そう、深淵だ。それはとてつもなく深い場所。それでもきっと底はある。限られた一個であるならそのはずだ。有限であるなら底はあるはず。だから、


 …たどり着けはするだろう。


 …しかし、


 たどり着いたとして…その時。




 何を?どう対処すればいい?



 

 分かるはずもない。それは人の身でたどり着ける場所ではないのだから。



 しかし、しかしだ。



 平均月はもう、人間ではない。

 勝算は、あるかもしれない。



 それは1%か…それより下か…。



 そんな低確率も希望的観測と言わざるを得ない……それでも均次なら…。



 いや、やはりこう言うしかない──分からない。何も。



 それは二周目を生きる彼であっても、完全なる予測不能。



 


 そこにあるのは、底にあるのは、果たして────






========ステータス=========


名前 平均次(たいらきんじ)

種族 界命体


界命力 323/525


MP lost…


《基礎魔力》 lost…


《スキル》


【暗算LV9】【機械操作LV3】【語学力LV7→9】【大解析LV8】


【剛斬魔攻LV3→5】【貫通魔攻LV2→4】【重撃魔攻LV4→6】【双滅魔攻LV2→3】


【韋駄天LV8→9】【魔力分身LV4】


【螺旋LV4→5】【震脚LV4→5】【チャージLV4→5】【超剛筋LV4→5】



【痛覚極耐性L4】new!【負荷極耐性LV3】new!【疲労極耐性LV2】new!【精神超耐性LV3→7】【雷耐性LV4】【毒耐性LV4】【麻痺耐性LV2】【刺突耐性LV1】【火炎耐性LV1】


【虚無双LVー】【界体進初LVー】【吸収LVー】【界命体質LV2】【封物庫LVー】【巨充区LV1】【◼️◼️◼️力】unknown!



《称号》


『魔神の器』『英断者』『最速者』『武芸者』『神知者』『強敵』


《装備》


『鬼怒守家の木刀・太刀型』

『鬼怒守家の木刀・脇差型』


《重要アイテム》


『ムカデの脚』

『阿修羅丸の魔骸』



=========================



 相変わらずピンチな均次くん。


 フィールドボスとか、モンスターの進化体混成群とか、人質奪還とか、大屋さんを守りながら全部やってまおうと欲張ったところに………まさかの伏兵。


 それは──スキル。


 スキル頼りに攻略を進めてきた彼にとってこれほど予想外な敵はそうあるまい…と、思ってこうしました。

 


 え?はい。Sですよ?



 という訳で…いやどういう訳だいやともかく。


 何とか予測不能に出来たかな。って感じなんですけど今回のこれも『え!?急に何!?』ていう突発型イベントではありません。伏線は張ってありますのでご安心を。今までそうだったように読み進めていけば『あー、あれってあの伏線あってのイベントだったのね』と分かるようにしています。


 なので伏線らしきものを見つけながらこんな展開あるかもな…って想像しながら読んでみると楽しいかもしれません。


 いや、こちらとしてはそれを悉く裏切っていきたいとは思ってますが…あ、これって多分、ストレスなんですよね。すみませんー!(汗と涙)


 でも、


『人気コンテンツ盛り盛りの王道。…に見えるけどあえて逆行もしくは横道それつつ、自分なりに納得のいく世界最強に至るプロセスと最終形態を描ききれたらなー』


 …というのがこの作品のコンセプトですので。御容赦下さるとホント幸いなんですが…、うーん、それが読者様方の好みに合うか合わないかはもう、本当に賭け。それでもお付き合い下さってる方々にはもう、本当に感謝。


 さて、そんな無謀にあえて挑む作者だけどしょうがない、許してやるか、という寛大な方。どんな最強になるのか気になるぞ、って方。いつも予測不能でストレス多めな物語だけど…まあ乗り掛かった舟だ。付き合ってやるかーって方!★評価、ブクマ、感想、いいね、レビュー等してくださると作者の創作意欲倍増です!何卒宜しくお願い申し上げます。



 こんな長めのあとがきを最後まで読んで下さって本当に有り難うごさいました。ヤマタカコクでした。



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