81 封心と。★
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今章最後の回となります。楽しんでくれたら嬉しいです。
あと30話に25話の内容そのまま繰り返す事故がありました(※要はコピペ間違い)すみません(汗)ご指摘いただいてすぐ直しました。「あーやっぱそうなの?変だと思ったんだー」と思っていた方、申し訳ありません、今は読んで大丈夫(←?)です。とにかく読感損なう事をしました。すみませんでした。
大家さんの準備が済んだ後、部屋を出た俺達であったが。
「……大家さん…?あのぅ…」
「大丈夫 怒って ない」
彼女の機嫌が直るまで長い時間が必要だった事は言うまでもない。
相棒のご機嫌とりの次は恋人のご機嫌とりに忙しい俺は、何を隠そう回帰者だ。
え?今さらだ?ともかくそんな前世の知識を持つ俺でも『通信が途絶えて以降の世界各国がどうなったか』までは知れなかった。
でも国内の事なら知る事が出来ていた。それは他県からの難民がこの赤月市に訪れた際に情報を落としていってくれたからだ。
…まあその殆どは良くない報せでしかなかったが。中でも最悪だったのが、『首都早滅』だ。
首都は風水で言う鬼門と裏鬼門を牽制する位置に寺社とか城とかが並んで配置されていたり、陰陽を表す対極図を模して線路が敷かれていたりと、超大規模な結界に守られている…なんて話なら前世、平和だった時分に何度か聞きかじったが。
今世ではそれら都市伝説は事実だった…というより、『その全てが裏目に出てしまった』事が何となく分かっている。
何故なら今世で知ったからな。ダンジョン共がその存在力を保つために結界も養分とする事を。
首都ほど侵略しやすい都市もなかったのだろうが、謎は他にもあった。
前世、俺が出会った数少ない都民の生き残り達は口を揃えてこう言っていたからだ。
『首都はたった数日で陥落。ほぼ全てが喰われてしまった』
食われたのは人だけじゃなく、建物や土地諸共、それも比喩的表現ではないらしい。一体、どんな存在のどんな進攻でそんな事になったのか。やっとの思いで逃げ延びてきた彼らが分かってるはずもなく。
だからの最悪だ。
俺としては謎として割り切るしかない。何故なら情報があまりに不足していて回帰者としての強みを発揮出来ないからだ。どう動けば未然に防げるのか見当がつかなかった。
というか、これが事実であったなら被害の規模も進行の速度も異常に過ぎる。どう考えても俺独りでどうにか出来るレベルではない。
どちらにせよ見捨てざるを得なかった。…だからの最悪だ。
その次に酷いと感じたのは『北会道の大放棄』だろうか。
道民全てが本州へと大移動せざるを得なかったという事件。これも規模がおかしい。
ただこちらには分かりやすい理由があった。面積に対し、人口が他の都県に比べ圧倒的に少なかった、という理由だ。
土地が広過ぎて繁殖し続けるモンスターを駆除しようにも人手が足りず、全ての地域をカバーするなんて不可能だった。
それに加えて地元民よりモンスターの方があの極寒の地に適応していた。つまり、モンスターと対峙するに北会道はあまりに不利な土地だった。
そんな人類側の事情を見透かしたのか、ダンジョン達は他ダンジョンへの侵攻を優先していたらしい。そのどさくさに紛れて(※それでも相当な被害を出してしまったが)避難が成功したというのだから、何が幸いするか分からない。
これと似たケースで同じくどうしようもなかったのが『不二の魔界化』だろう。
不二山といえば万人が認める国一番のパワースポット。ダンジョンが放っておくはずがなく密集して乱立。
しかも元々人を拒絶するこの樹海は、モンスター達の繁殖場として適していた。
それは周辺地域で討滅されたダンジョンから逃げ延びた野良モンスターまでも誘引してしまう程だった。
きっと今世でもフジの樹海は東西を分断しながら侵食を続ける魔境と化しているはずだ。
これらの脅威に挟まれた県はどこも難民問題に頭を抱えるようになっていったのだが、それはこの『赤月市』を除いての事。
『赤月市はモンスター被害は他所より鎮静しているようたが、その代わりに魔人が多く住みつき、人狩りが横行する犯罪都市となっている』
とは、多くの土地を渡り歩いた避難民達の言であり…そう、赤月市は多くの市町村から受け入れを拒否され流浪を余儀なくされた難民達にすら、見限られる程の魔都と化していた。
付いた異名が『魔人都市』。
『魔人』というのは、ファンタジーで見る『魔族』など、種族的な事を言っているのではない。
魔力に魅入られ、力に溺れ、大犯罪者に成り果てた人間達の俗称であり、その中には実際に人間をやめた者も多くいた。当時の俺は、そいつらの噂が上がる度、チビりそうになったものだ。
『凄母』
『幽霊撫陰』
『人倒主義者』
『喰い獰楽』
代表的なのを上げたが、こうして『二つ名』を付けられた単独犯罪者達は『ヴィラン』と呼ばれ、殺戮しては潜伏するを繰り返していた。無垢朗太の半身であるあの『鬼』も含まれる。それに加えて、
『勇者ギルド』
『盤逆の使徒』
『ムーンウォーカーズ』
『レッドフル』
『バイト倶楽部』等々…
と多くの武装集団も乱立して対立していた。それらが引き起こす抗争と盛衰の繰り返しは、多くの魔人を生み出す原因となっていた。
今世の俺がこうして一度は見捨てたはずの赤月市に舞い戻ってきたのは、そんな厄介な連中が蔓延る未来を食い止めるためだ。
そもそもとして、数々の異能犯罪者や武装勢力が赤月市に限って多く生まれたのは何故だったか。
それは、そうなるに決定的な事件があったからで…さて、前置きが長くなったが。
俺達が向かっているのは、今まさにそれが起こっている場所。つまりはいきなりの正念場。
その事件を未然に防げるかどうかで、赤月市の未来は大きく変わる。
(そんな危険な場所に──)
俺はそこで考えるのをやめ、代わりに大家さんの手を握った。
「均次くん…?」
大屋さんが目で問うてくるが、答えない。もはや言う事はないからだ。いや、言いたい事は山ほどあるが、言う段階では、もはやない。
俺は、踏み出した。
もう独りじゃない。相棒と…さらには大家さんや密呼ちゃんまで道連れにしている。
(『道連れ』…か)
この期に及んでまだ迷うかと言われそうだが…うん、言い返せないな。こんな体たらくで何を言っても良い事にはならない。
だから、何も言わない。
だからせめてと、彼女の手を握っている。
そのまま二人、手を繋いで歩いてゆく。
かつてと姿を変えた街並を。デートコースとするには殺伐過ぎる『今の風景』を。
これは『一度見捨てた結果なのだ』と再確認しながら。
(振り返っちゃダメなんだろうな…)
今さら時は巻き戻せないし、今さらやれる事など限られてる。
逆に言えばやる事が決まってしまって…これ以上悩んでも意味なんて、ないんだ。
だから、ならばと。
もう迷うまい、そう念じて大家さんの手を握り直した。そうするに、とどめた。大家さんも何も言わず、握り返してくれた。
(大家さん… …大家さん…大家さん…)
心の中で彼女を呼び、一歩一歩を踏みしめる。
(何より大事な──なのに俺は…顔も知らない誰かのために、巻き込んで──)
そんな勝手をする自分もまた、再確認しながら。
ならばとより強い覚悟を引き出そうとしながら。
また握り直す。今度は強く。そうすればまた、大家さんも握り直してくれる。
やっぱり視線で問うてくるけど、俺はやっぱり何も言えず…ただ、これだけはと…
願った(…大家さん…)
あなたがどんなに俺を、怒っていても。
あなたがいつか、俺を恨んだとして。
(お願いです。死なないで下さい)
この懇願だけは、伝わるように。
伝わったら、忘れないように。
掌を介して熱で伝え、
熱を返事と受け取って、
交わした熱はきっと、力になる。
そう信じようとしながら──
・
・
・
・
──と、いう訳で。
「──ぇと、均次くん?」
「はい。」
「目的地、ここで合ってる?」
「ええ。でもやっぱり閉まってますね」
「いやそうじゃなくて。さっきまで醸してた悲壮感て──」ガンガンガン!「あのーすいませーんっ、客なんですがー?」ガンガンガンガンガンガンガンガン!「すみませーーんっ!」ガンガンガンガンガンガンガン!
「えええ…均次くん?」
ガンガンガンガンガンガンガンガ……「困ったな…留守なのかなーもー。すいませーん!すいま──」ガンガ…ガララララララ「ちょっとあなたなんなんですかこの非常時に!そして非常識にっ!」ラララララララララ!
「あぅ、ぃぁ、ごめんなさ…っ、…ぇと、そのー、すみません…ぁのぉ、客、なんですが…」
「あーハイそうですか!あーいやホントのとこは分かんないですよねこんな非常時なんだし強盗って可能性──は、ないですね、うちみたいにこじんまりした『手芸店』を襲う強盗もいないでしょうし!」
「いやそんなことは…」
「え、なに?やっぱ強盗なの!?」
「いぁ違くて!こじんまりの部分っ、を、否定しようと……その…」
「……(藪睨み)」
「…ぅぅ、スミマセン…」
「…、はぁぁぁぁぁああ~~(溜め息)……で?なんの用なんですか?お客さん」
「あ…いやその、すみません…ちょっと、見せてもらっても──」
「…はあ?」
「ぅ、すみませ──」
「ったく……………どーぞご自由にっっ!そして早々にっ!」
「あ、はいぃすみませんすぐ済ませますんでっ(汗)」
「えっと…………均次くん?」
・
・
・
・
そして次に俺達が訪れたのは──
「えっと、だから、均次くん。今度はなんで、ホームセンターに──」
そう。ホームセンターだ。
表はさっきと同じでシャッターが降りていたがしかし、ネット小説にヒントを得た覚醒者達が押し入ったのかもしれない。裏口がこじ開けられていた。
仕方なくそれに便乗して中に入ってみれば……案の定だ。荒らされていた。え?俺はお金払ったよ?消費税もちゃんと払ったよ?
「いやだから。均次くん?」
「はい?」
「今度は…塗料?なんでそんなもの…そろそろ説明を──」
「したくないです。」
「ええ?」
「大家さん。これから俺がする事を見ても何も言わない、そう約束して下さい。」
「いや、だから。なんでまたそんな悲壮感を──」「悲壮…………そうですね…勇気がいります。だってこんな俺が、こんな──」
俺はさっきの手芸店で購入した生地を紙袋から取り出し、それにこのホームセンターで買ったばかりの塗料を使って──ああもう、何やってんだろ俺…
そして。
それは、出来上がってしまった。
俺は、仕上がってしまった。
「均次くん…それ──」
「何も言わないで下さい」
「均次くん……」
「その視線もっ!」
「ぃゃ、ごめんなさい、つい…」
「つい、……なんですか?」
「ん…なんでも な い」
「く…っ、顔!笑ってんじゃないですかっ」
「いゃ、大丈 夫 カッコ、いいよ?」
「だから何も言わないで下さいって…」
「ん、ごめ──ぷっ、」
「吹いた?今吹きましたね大家さん!?」
「ん、ごめ、…なさい、でも、これで、っぷ、おあいこ、だから…ぷふっ」
「…ぬぅ…」
くそぅやり返されてしまっ──
「ぷぁは、もうダメぇぁあはははははははは!」
──ってやっぱ笑った!くそっ!かわええな!レア大家さ──
「…って違うっ!」
「くく、ぷふ、きん、均次、くん、お、おと、お、」
『おと、』?なに?男前?
「お年頃おおおおおおーーー!あはははははははははははははははははははは」
くぅ…っ!?確かにこの格好は『厨二感』を禁じ得ない!だけどっ!
「そんなに笑わなくてもいいでしょうう!?(泣)つか何も言わないって…ハァ…もういいですよもう…(そんなおかしいかなこのカッコ…いやおかしいよなやっぱ。それももの凄く…)」
オイラの黒歴史に、また1ページ。
(…ああ今すぐ封印したい…っ!)
『ぶふ…っ』
(…!おい!てめえまで笑ってんじゃねーぞ無垢朗太!?)
『ぁいや、その、くっ!ぐ!も、もう我慢ならんんんんん!ぎゃははははははははっ!』
「くぅ…っ(相手にしたら駄目だ!俺!そう…無だ。心を無にしろっ、俺!)」
こうして俺は早々に、いや前倒し気味に?さっきまでの不安と、この新たに生まれた黒歴史と、それに伴う羞恥心を、同時に封印する事にしたのであった。
「──つか、大家さんの装備も大概ですからね?戦隊ものに出てくる悪の女幹部みたいですからっ」
「ぁうっ、」
お。『ガーンっ』て顔。
それ好物。
======馬鹿ッブルステータス======
名前 平均次
種族 界命体
界命力 525/1050→525 down!
MP 13660/13660
《基礎魔力》
攻(M)530
防(F)109
知(S)232
精(G)33
速(神)622
技(神)514
運 ー0.9
《スキル》
【MPシールドLV11】【MP変換LVー】【暗算LV9】【機械操作LV3】【語学力LV7→9】【大解析LV8】
【剛斬魔攻LV3】【貫通魔攻LV2】【重撃魔攻LV4】【双滅魔攻LV2】
【韋駄天LV8】【魔力分身LV4】
【螺旋LV4】【震脚LV4】【チャージLV3】【超剛筋LV4】
【痛覚大耐性LV9】【負荷大耐性LV5】【疲労大耐性LV4】【精神超耐性LV3】【雷耐性LV4】【毒耐性LV4】【麻痺耐性LV2】【刺突耐性LV1】【火炎耐性LV1】
【平行感覚LV8】【視野拡張LV9】
【虚無双LVー】【界体進初LVー】【吸収LVー】【界命体質LV2】【封物庫LVー】【巨充区LV1】new!
《称号》
『魔神の器』『英断者』『最速者』『武芸者』『神知者』『強敵』
《装備》
『鬼怒守家の木刀・太刀型』
『鬼怒守家の木刀・脇差型』
《重要アイテム》
『ムカデの脚』
『阿修羅丸の魔骸』
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名前 大家香澄
ジョブ 座敷女将LV30
MP 7777/7777
《基礎魔力》
攻(B)209
防(B)209
知(SS)311
精(M)350
速(A)243
技(A)243
運 99
《スキル》
【MPシールドLV7】【MP変換LVー】【暗算LV6】【機械操作LV6】【語学力LV6】【鑑定LV7】
【斬撃魔攻LV9】【刺突魔攻LV8】【打撃魔攻LV9】【衝撃魔攻LV9】
【加速LV9】【身大強化LV1】【クリティカルダメージ増加LV5】
【魔食耐性LV1】new!【強免疫LV1】new!【強排泄LV1】new!【強臓LV1】new!
【負荷耐性LV3】【疲労耐性LV3】【精神耐性LV1】
【魔力練生LV7】【運属性魔法LV6】
《称号》
『魔王の器』『運命の子』『武芸者』『神知者』『凶気の沙汰』『座敷御子の加護』『ジャイアントキリング』『進化種の敵』
《装備》
『今は無銘の小太刀』
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次章からまたバトルバトルとなっていきます。新キャラも続々登場します。お楽しみに!
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