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80 方針と放心と…



 あの後。


 内界で何が起こっているのか、手掛かりを得るべくステータスを確認してみたんだが…


「これは──」


 新たに【巨充区(きょじゅうく)】というスキル名が現れた。と、そこで、


『均次?聞こえるか?』


 無垢朗太との交信が復活…ってことは、


「お、心配したぞ?そっちで何があったんだ?【巨充区(きょじゅうく)】ってスキルを取得したみたいなんだが…これって『内界』関係だよな?」


『うむ、…正式に内界の一部となったようだな…』


「?さっきまでは違ってた…ってことか?」


『…いやともかく…正式にスキルと認定されたなら問題はない…はず?』


 はずってなんだ。


「おい、妙に歯切れ悪いが…」


 またなんか隠し事か?


『いや、拡張部分を安定させるのに難儀してな。それで疲れておるのよ。あー、えー、それより『拡張』する必要はもうないからな?』


「なんだ急に。拡張しろ拡張しろってあんな煩かったのに…って、もしかして拡張がもう必要ないくらい拡張されたとかか?え?モンスター素材を【吸収】しただけで?」


『う、む、しばらくは『充実』一辺倒となるだろう…実際、我が目にした空間には遥か彼方まで広がりを感じた。まったく…つくづくととんでもないスキルであるな。この【界体進初】というのは…』


「はあ!?遥か彼方って──どんくらいの広さかもう訳が分からんくらい広いってゆーことか?」


『うむ、広い。とてつもなく』


「いやいやいやいや…『大』拡張じゃなかったんだぞ?『中』拡張だったんだぞ?」


『うむ…今回については、大した労を要せず『超々広大な空間』を得た…という事になる』


「…?なんでまた?訳分かんねぇ…」


『うーむ。我も確証を得ておる訳でないのだが…ただ何となく感じるのは…

 こうして広大な空間が顕現されのはオヌシの魂に組み込んだコア…つまり我がマスターをしていた例のダンジョンが力を取り戻した?

 …いや、もしくはそもそも力を失ってなどおらず、ただ封印されていただけのあのダンジョンと内界が繋がりを持ち、力を流用した?

 …いや、そのどちらかまたは両方かもしれんな…すまん、本当に良く分からんのだが多分、キング級とやらの死骸を吸収した事は切っ掛けに過ぎん。と、我は思う。

 我らが知りえぬ何処か深きところで、想像もつかぬ何かが進行しておるのか──うむ!何も分からん!という事が分かったな!うむ!』


「うむぅ、『分からん』の一言でよくないそれ?」


『ただのう…』


「ええ?なんだ?まだあるのか?」


『いや、ただ広いと言ってものぉ…日もなく海や山どころか大地すらなく、ゆえに植物も生えておらんし、生き物だって一匹たりと生きておる訳なく、というか暗黒。天地の別さえ曖昧ときておる。不毛をすら越える不毛と言おうか…。ここ内界の管理人としてこんなもの、歓迎出来る代物ではないぞ?はてさて一体、何に使えば良いのやら…』


「うーん、そいつはまた……だからの『充実一辺倒』…か」


『うむ、だからの『充実一辺倒』よ。このままでは扱いようもないゆえな』 


「この『充実』ってのが『環境の充実』を意味してる事を願うばかりだけど…まあやってみないと分からんな」


『うむ、次の機会は是非、やってみてくれ』


 何にせよ、この【界体進初】ってスキルは、たった一日の検証では知り尽くせない…という事だけが分かった。

 

「ああそれとな。スキル以外にもステータスに変化があったぞ?」


『む?どんな?』


「1050あった『界命力』が525に下がってた…」


『はあ?半減したというのか?まさか弱くなろうとは…』


「そうなった原因はこの【巨充区】にあるのかな…?」


『うーむ、それに関しても何の確証はないからな…ともかく。とんだ拾い物をしたものよ』


 そうだな。ともかくだ。


 これで『拡張すれば界命力が増える』という説の信憑性は急降下した上、界命力が半減した理由自体が分からないという…つまりは…


「…はぁ…振り出しに戻っちまったか【吸収】しまくって内界を『拡張』して『界命力』を増やしまくるっていう例の計画もナシの方向で。ってことになるよな」


 だって。


 見果てぬほど広大に拡張したってのに、お目当ての界命力が半減した訳だから。


『…まこと悩ましきスキルよ…』


 ただ、今後どう対処すればいいか…というより『もうこうするしかないんじゃない?』てのは見えてきた。



「今後の方針は…こうなるか」



①今後、『魔食材』を【吸収】した際に『スキル成長』の選択肢を提示された場合はそれを選ぶ。もしくは『スキル創造』の選択肢が提示された場合、優先して選ぶ。

 



②『スキル創造』を狙うなら一度に多くを吸収する方が良さそうなので今後はモンスターの死骸からあらかじめ魔食材を摘出し【封物庫】に保存しておくといいかもしれない。


(※ちなみに無垢朗からなるべく俺の方で摘出してから内界送りにするよう言われた。凄くしつこく言われた)



③魔食材を摘出した後に残ったモンスターの死骸を【吸収】する際、『内界の充実』という選択肢があればそれを選択する。『拡張』はしばらく封印する。



④そしてこれら【吸収】を試す際は注意深く検証する事。

 例えば『グルメモンスター』を所持していた頃にあった『一度魔食した魔食材を再び魔食しても効果を得られない』という法則が当てはまるのか。

 それとも『一度【吸収】したものでも、再度【吸収】した時に効果は重複するのか。など。

 


「いいか?こんな感じで」


 こうして無垢朗太に確認を取っているのは、彼が内界マスターであり、内界に生じる変化と直接対峙し、管理人として責任もって対処する立場にあるからだ。


 いや、責任をなすりつける、という意味ではない。


 内界とは俺の中にある世界。であるのに何故か、俺が管理出来ない仕様となっている。


 その内界が『見果てぬほどに超広大な空間』を宿してしまった。なんというか、規模が狂ってる。


 もはや部屋の広さ云々で言い合ってる場合じゃない。俺としてはかなり不気味な現象であるのに殆んど干渉出来ないという現状は…精神的にくるものがある。


 俺自身ですら予測不能なスキル。


 そんなものを無垢朗太一人に押し付ける形になるのは本当に申し訳ない。そう思うが、仕方がない。


 今後は無垢朗太を相棒としてだけでなく、俺の中の世界を管理するパートナーとして認めなければ。頼らなければ。そう思うなら互いの意志疎通を大事にしなければ。そう思ったから方針の確認を取った。

 

 それに【界体新初】が発動した時に何を選択するかは、俺達二人の合意が必要になってるからな。


(その度に意見を争うとか、やってられん…)


 と、いう訳で。


『うむ、いいんでないか?』


 俺と俺の相棒との真夜中の【界体進初】の検証は有意義?の内に一段落?したのであった。


 結構な時間がかかった。窓の外はもう白み始めている。そろそろ大家さんも起き出す頃…



「う、みゅ、…均、次くん?」

「おっとおはようございます」


 タイミング良くお目覚めのようだ。


「…ぉふぁょぉ…」


 うん、寝ぼけてるな。魔食効果で体内の不純物が排泄されて…その汚れが乾いてこびりついて表情筋がひきつる程になってる事にもまだ気付いてない様子。


 はは…寝ぼけながらも違和感感じて寝巻きの袖をクンクンするその仕草は相変わらずかわええ──つか、それ、




「くしゃぃ…っ!!」




 って顔を離すスピード!小動物に通じるリアクション!それは俺のツボ!


 …いやほら、なんてゆんだろ、大人にとって常識的な何かに面食らっちゃう子供とか、もしくは文明の利器に戸惑う小動物…子猫とか?の動画。アレを見てるみたいな。


 無条件に好感を注げる対象のリアクションって、何故かツボにはまるってゆー現象。


「…?…?ぅう?」


「ぷ、くくっ」


 自分の臭さで覚醒したはずが、そのショックでクラクラするとか…もうツボ過ぎてホントやめてつか既に腹痛え。


(…って、え?え?つか、え?)


 なんか頭ん中リセットされてませんか大家さん?だって袖にまた鼻を近付けたりししたらまた──


「くしゃぃ…っ!!」


「ブふぉっふ!」


 …にしても、大家さんてこんな朝弱かったのか。低血圧?にしても前後不覚過ぎてませんか?いやそれもあるんだろうけど。そして自分の体臭だってどうも認識出来なくてこうなってんだろうけどいやホンマ、あかんてコレ。吹かずにおれんてコレ。投稿したら俺的にバズらないとおかしいレベルでツボ…っ、…ってまた──



「…?…?ぅう?」



「大家さ…っ、またっ、リセットされちゃっ──ふ、ぐぅ…っ……だか、嗅ぐとほらっ、また──」



「くしゃぃ…っ!!」



「ぶふぉおおっ!げほ…ッごほ…ッ…あーもあかーんあかんてこれーおわらんやつー(泣)」


「ぅ?」


 あーしまっ、声出てた…っ、大家さんがこっち見てる。もう少し見てたかったのにな。俺のバカ。


 

「…どぅ…した?の、きんじく…しゃいっ!」



「ぶふぉばっ!流れるようなコンボやめてっいや…も、も、ほん、も、かんにんして(泣)」



『…平和であるなー…(一応黙っとるけどオヌシ、とある世界の敵になっとるんだが?)…まあよいか』


  ・


  ・


  ・


  ・


  ・



 あの後ちゃんと覚醒した大家さんは赤面しながら風呂場にへ、ドタタター!と直行して長時間籠った。そして出てきた頃には…



「 ね 笑ってた 均次くん 」


「 ぁ ぃゃ すみませ… 」



 そう、いつも以上の塩系MAX。つか多分『凶気の沙汰』の称号効果発動してるなーコレ。だって雀が……ほら。


『『『ヂュヂュチュチュンッ!』』』『おおお?何の前触れっ!?』


 てな感じで一斉に飛び立ったもの。でも俺には【精神超耐性】あるからその殺気は効かないんだよね…つか、……そんなん関係なく十分怖いし。



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