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78 【界体進初】を検証する。後編 ★


 という訳で。


 【界体進初】の影響で、モンスターから採れる【魔食材】を【吸収】すると『界命スキル』の養分に出来るようになった…という事が分かった訳だが。


 この次は…


「残ったジェネラルの死骸…これを【吸収】してみたらどうなるんだろ?」


 という話になった。


 今までは、一度でも魔食した事のある種類と階級のモンスターは、倒しても使わずに捨ててきた。


 でも【界体進初】の説明文には『ありとあらゆるものを吸収出来る』ってあったからな。そう、『ありとあらゆる…』だ。


 という事は魔食材を抜き取ったモンスターの死骸でもイケるんじゃない?そう思った俺はまず、ゴブリンソーサラージェネラルの死骸を【吸収】する事にした。



『成長素材の吸収を確認。


 やっぱりだ。成長素材として認められた。問題なのはどんな選択肢が提示されるかだが…。


『①内界の拡張。

 ②内界の充実。

 以上から強化先を選んで下さい。』


「ふむ」


 『拡張』と『充実』だけ。スキルの創造や強化といった項目はなし。ああいう特別なのは魔食材の【吸収】でしか提示されないのかもしれないな。


「想像通りっちゃ想像通りだけど…」


 まぁ、才蔵はまだ覚醒してないし。生産系ジョブに就いたる人は俺のぐるりにまだいない。だから今のところ魔食材以外のモンスター素材は、捨てはしないが用がなかった。それが成長素材として利用出来る事が分かっただけでも、収穫か。


『なあ均次。魔食材を切り取った死体の全部を『拡張』にあてたいのだが…かまわんか?』


 それは…全然構わない。魔食材を【吸収】する時は連続して『スキルの強化』を選ばせてもらったからな。俺としてはそのお返しが出来てむしろ良い。


『確かに広くなりはしたがな。オヌシの感覚で言えばまだ『教室?』ぐらいよ。それぐらいの拡張ならまたやってもあまり意味はない。

 ならば今度は余った死体を全部張った方が良いのではないか?』


「まあ、そうかもな」


『という訳でキングの死骸も譲っておくれ?そこまですれば何らかの変化があるやも…という訳で、ほれ!まずはジェネラル【吸収】!』


 言うや否や、他二体のゴブリンジェネラルまで追加で【吸収】してしまったらしい無垢朗太。


「何を勝手に…」とは思ったが、


『複数の高位成長素材の【吸収】を確認。

  

①内界の拡張。

②内界の充実。


 以上から強化先を選んで下さい。』


 と、やっぱり選択肢に変化はない。


 

(ただ少しだけセリフが変わったな。これは…)


『複数の高位成長素材』とわざわざ指摘してきたという事はやっぱり、吸収した素材の量と質によって強化内容は変わるのかもしれない。



 ともかく①の拡張を選択。



「ん?おい無垢朗太。広くなったのか?」


「いんや、何も起こらん…はて」


「えー。どうなってんだろうなそれ。ジェネラル全部【吸収】しといてなんも起こさねーとかさすがに詐欺だぞ【界体新初】」


『ぬう……すまぬー。』


「いやお前に言ったんじゃなくて。でもマジでどうなってんだこのスキル?訳わかんねぇ…」


『と、とにかく、ステータス!ステータスに何か変化は?』


 と、聞かれて我に帰った俺はすぐさまステータスをオープンした。

 


=========ステータス=========



名前 平均次(たいらきんじ)

種族 界命体


界命力 1050/1000→1050 up!

M P 11660/11660


マナペイクレジット 2000pt


《器礎魔力》


攻(M)530 

防(F)109 

知(S)232 

精(G)33 

速(神)622 

技(神)514 

運  -0.3→ー0.9 down!




《スキル》


【MPシールドLV11】【MP変換LVー】【暗算LV9】【機械操作LV3】【語学力LV7】


【韋駄天LV8】【大解析LV7】【分身LV4】


【剛斬魔攻LV3】【貫通魔攻LV3】【重撃魔攻LV4】【双滅魔攻LV2】


【螺旋LV4】【震脚LV4】【チャージLV3】【超剛筋LV4】【平行感覚LV8】【視野拡張LV9】


【痛覚大耐性LV9】【負荷大耐性LV5】【疲労大耐性LV4】【精神超耐性LV3】【雷耐性LV4】【毒耐性LV4】【麻痺耐性LV2】【刺突耐性LV1】【火炎耐性LV1】


【虚無双LVー】【界体進初LVー】【吸収LVー】【界命体質LV1→2】


《称号》


『魔神の器』『英断者』『最速者』『突破者』『武芸者』『神知者』『強敵』


=========================



「いやいやこれ、拡張うんぬんより…」

『うむ…そんな事よりこれは…うーむ』


 拡張とは別に発覚した事が、一つ。


「下がってるな。『運』魔力が…」

『ああ…下がっておる『運』魔力…』


 …前ほどのショックは受けないが、やっぱりショックはショックだ。


 でもまあ、こうなってもしょうがないかなぁ…って感じも正直してる。何故って、無垢朗太のあの言葉を思い出したから。


『『運』にまつわる魔力…か。本来なら現世からつま弾かれていたお前だ。それはこの世の均衡を保つためにある運気という運気から見放されて当然、という身分でもある。なのでそれを引き寄せる魔力が下がるのは当然と言えば…まぁ、当然なのであろうな』


 これを言い換えれば…俺は、俺達は多分、この世界に許される存在では、既になくなっている。


 今や『内界』なんて宿してしまった俺だ。『世界』なんて漠然とし過ぎた存在も何となく感じ取れるようになってて……だから。


 何となく、分かってる。


 魂が壊れたはずの存在が消滅もせず掟破りに生きていて。

 しかもその内部に自分以外の世界を宿している。


 そんな不届き者を世界という存在が見逃したりはしないだろうな…て。俺の存在自体、もはや禁忌の類いなんだろうなって。世界にとって邪魔な存在とされて余りあったに違いないって。


「生きてるだけでそうなんだから、内界を成長させたりすれば…な」


『うむ。こうもなる…か』

 

 そう、俺達はこの世界にとって許されないであろう『内界』を成長させた。だから、世界の均衡を保つためにある運気がさらに遠ざけられても当然だった。


(…でもな)


 『魔神の器』なんて称号付きな俺だけど『世界を滅ぼす』つもりなんて当然ないし、支配だってしたいとは思えない。


 それでも、


 向こうから喧嘩したいって言うなら?


「上等だ…」


 そうだ。話は別だ。


「ドンとこいだこの野郎…」


 仲良くなりようもないならそれもいい。


 放っておいてもくれないならこちらから離れもする。


 それでもわざわざ滅ぼしにくるって言うなら?


 その時はしょうがない。受けて立つしかもはやない。


 俺が仲間達と一緒にいたい、大家さんと一緒に生きたいって気持ちにはもう、それぐらいの覚悟が乗ってしまってる。


 …え?ああ確かに我ながら乱暴な事言ってると思う。狂人扱いされて当然とも思う。


 でもな-。そんな段階はもうとっくの昔に通過済みなんだよ。


 実際に何度も何度も語ったろ?俺の身勝手さについては。そして俺がこうなったのは──


(自分の命はまあ、当然として…)


 心やら、肉体やら、魂やら、仲間を巻き込んだり、人間やめてしまったり、相棒どころか愛する人まで一蓮托生にしちまって。


 …もうホント、なんもかんもを賭け代にしていて…だから。


 さっきも言ったが、勿論こちらからどうこうなんてしない。


 ヌエみたく噛みついてくるだけなら、実際に我慢もした。


 ただ、壊すだとか。殺すとか。滅ぼしにくるなら。


 どんな存在だろうと容赦するつもりは…もうない。



 敵と見なす。

 徹底的にやる。



 例え、その敵がこの世界そのものであったとしても。


 そうなった俺に分別がなくなる…いや完全に分けてしまうのは【虚無双】で実感済みだからな。


 容赦をなくすって、ああいう…いや、あれが本性だとは思いたくない。それに、


(…これも、見つけたからな)


 そう、今回はその『もしものガチンコ(滅ぼし合い)』で役立ちそうな情報を見つける事が出来ている。……いや、まあ、恥ずかしながら?それでイキった部分も実はある。


 その発見というのは、『界命力がたったの50ptだけど上がっていた』って事だ。


(…この発見は、マジでデカい。だって、多分だがこれは…)


 『拡張』した結果なのだろうから。それが分かったのは界命体としての本能?みたいのが働いたのだろうか?まあともかく。


 『拡張すれば界命力も上がる』


 ってのは、確信にして革新だ。拡張に真のやりがいが生まれた瞬間でもある…って…おっと。少し話が逸れたかな。


 とにかく。


 残す素材はゴブリンキングだけとなった訳だけど。


 勿論、魔食材であるアレはな。切り取って保管してる。ここでキングの魔食材を【吸収】するのは控える事にしたからだ。


 だって、倒す予定のボスモンスターはまだまだいるからな。そいつらの魔食材と合わせて【吸収】してみればどうなるか。その楽しみにと取ってある。


 だって強化には質と量が関係してる分かった以上、まとめて【吸収】すればまた、『界命スキルの創造』とか、出来ちゃうかもしれないからな。


 なので今回、キングに関しては『魔食材を切り取った死骸』のみを【吸収】した。



『キング級成長素材の【吸収】を確認。

  

①内界の中拡張。

②内界の中充実。


 以上から強化先を選んで下さい。』



 さてどっちにするかな…と俺が考えてると。


『うーむ。悪いがさっきもいったように…ここも譲ってもらえぬか…『①内界の中拡張』に使いたい。さっきの『スキル強化』と同じで、水準に達しておらず拡張されなんだ…そんな可能性もあるゆえ…な!頼むっ!』


「ぅーん…いや、そう言われてもなぁ…」


 王の名を冠するモンスターというのは当然希少だ。希少過ぎて希少だ。なのでそんな簡単には譲れないものだ。


 それに、ただの拡張ではなく今度は『中』拡張ときている。


 つまり『大』拡張の時ほどの苦悶はないにしろ、結構な苦悶が伴う可能性は否めない。


 それを考えると大家さんがこんな状態の時に挑戦していいのか?という不安もある。


「──でも、そうだな…」


 こいつには何だかんだと世話になってるし。

  

「ぬあー!もー…っ、分かった。今回は特別だからな?」


 ま、いいか。


『おお!さすがは我が相棒!太っ腹!』


 そうだな、こいつは相棒だ。俺も魔食材を二つもらった事だし。キングの魔食材も確保してるし…いや、死体だけとはいえジェネラル三体とキング一体までやってホントに良かっ……いや、やめよう、未練は毒だ。       


「…うし、じゃ、やろう。もし苦悶があるとしてもだ。大家さんが見てない今の方がいいかもしんねぇし」



『個体名平均次と無垢朗太、両名の希望が一致した事を確認。『①内界の中拡張』を実行します。』


 …って早速きたっ!例の苦も…ん?


「──あれ?確かに、苦しい、、けど、」


 耐えられない程ではない…というか、『大』拡張の時を思えば嘘のように軽い症状で済みそうだ。


 こうなってるのは俺が『界命体』となったからか?それとも【界命体質】のスキル効果だろうか、それともその両方か。


 ともかく、大家さんを心配させないで済みそうなのは良かった。なので早速、


「で?どうだった無垢朗太?『内界』の方は?どんな風に拡張された?」


 と、聞いてみたのだが。



 ……………。



「ん?おい、無垢朗太?」

 

 何故か返事がない。


「おい?どうした?」


 と、聞き直しても同じ。返答はなく。


「おい、おーい、無垢朗太?いるんだろ?どうした?」


 やはり返事はなかった。


「おい!マジふざけんなって!無視すんな!応答しろ!おい!無垢朗太!」


 と、大家さんを起こさない程度の音量に落とし、しかし想いだけは込め、こうすればあの相棒には必ず届くと確信しながら、そう信じようとしながら、何度も。


 呼び掛けたが、返事は、なし。



 そこで、、やっと、気付いた。



「そんな──これって──」



 無垢朗太との、相棒との繋がりが、完全に途切れている…という事に。



「馬鹿な──おい無垢朗太!無事だよなっ!?おい!頼むから応答しろお!」


 

 返事はなかった。



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