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二周目だけどディストピアはやっぱり予測不能…って怪物ルート!?マジですか…。  作者: ヤマタカコク
第三層 餓鬼ダンジョンソロ攻略 編
30/116

30 弱肉強ショック。前編★


 25話をリフレインする形になっていたので直しました。


 あれからずっと四つの部屋を周回している。もう何回目になるか分からない。今では俺を追う餓鬼も随分と減った。


 といってもやつらの数が減った訳ではない。


 俺を追う餓鬼が少なくなったのは、再増殖する度に共食いを始めるからだ。俺はあの後──



  ・


  ・


  ・


  ・



 ──レベルが低い餓鬼だけを狙って攻撃するという、割りとゲスい方針で戦い始めた。


 無理をして【大解析】を発動したのはこのためだ。


『【大解析LV5】に上昇します』


 範囲で解析する事の便利と不便と負荷の全部を合わせ飲んででも、個体別にレベルを確認する必要があったからだ。低レベルの餓鬼だけを選別しようにも、見た目ではさすがに分からないからな。


 そうやって選別しては、上位レベルの餓鬼を見逃し、低レベルの餓鬼を攻撃しては瀕死に追いやり、共食いを誘発していた。



 こうすれば俺にとって負荷となりえる強者を生み出せる…そう思ったのだ。



 それは十分に勝ちの見込める賭けでもあった。前述した通り、餓鬼という種族はレベルアップが異常に早く、進化しやすいからな。


 そうこれは、餓鬼の厄介な種族特性を逆手にとった奇策。『窮地でない事が窮地』なら自ら窮地を作り出せば良いという無理矢理。そんな俺の思惑通り餓鬼達は順調にレベルアップしてくれて、遂に。


「おお…ホント進化が早いな。もう『狂い餓鬼』がいる」


 これは『狂戦士』のジョブに似た特性を得た餓鬼で、『|ノービス級』と呼ばれる文字通り初級の進化を果たした個体だ。


 初級と言っても種族名しか持たない一般級より格段に強くなる。俺すら獲得してないジョブに擬似的とはいえ就いたのだから当然だ。


 そして回帰者である俺はこうして、餓鬼がノービス級に進化した場合その殆んどが『狂い餓鬼』となる事を知っていた。

 そうなった場合、ただでさえ理性と無縁だった性質が『狂戦士』特性が加わる事でさらに悪化、共食いを激化させる事も十分予測出来ていた。


 にしても…


「ここまで上手くいくとは…」


 進化出来た事で共食いに味を占めた狂い餓鬼共は、更なるレベルアップを目指すようになった。


 もはや弱っているかどうかも関係なし。自分より確実に弱い者、つまりは再増殖したばかりの一般級の餓鬼まで格好の餌食とし始めた。


 そのすぐ後には、レベルアップはしても進化にまだ届いてなかった一般級餓鬼までが共食いに参加し始めた。

 狂い餓鬼に襲われないためには、もはや強くなるしかないと悟ったのだろう。自身も進化体にならんと共食いに励んでいる。


 再増殖したばかりの連中はそれらのとばっちりを受ける形となってしまって…まぁ御愁傷様としか言い様がないが、俺が手を下す必要がなくなったのは有難い。


 ともかくこうして俺を追う餓鬼の数は激減していったのである。というか、もう追って来る者はいない──いや、なんかしつこく追ってくるヤツが一体だけいるな?


 片腕を失くしてる…それでも追ってくる執念は警戒すべきか…?


「…ま、いいか」一体だけなら無視だ無視。


 という感じで、俺も共食いを見物するだけの周回に…もう飽きている。でもそんな暢気な展開はそう長く続くはずもなく。


 再増殖餓鬼相手のレベリングに限界を感じ始めた狂い餓鬼が、次に未進化の高レベル餓鬼を狙い始めた。


 それに対し、今度は再増殖組が便乗し始めた。死にかけの高レベル餓鬼を狂い餓鬼から奪うようにして食らっては、進化を急いでいる。



「うーん、なかなかカオスな状況になってきたな……お、あれは…」



 そんな混沌の中で生まれたのが『狂い餓鬼組頭(くみがしら)』という進化体。



 こいつは狂い餓鬼からさらに進化して強くなりつつ、部隊を統率する力まで得た個体で、モンスターの進化過程では『チーフ級』と呼ばれる段階にある。


 その狂い餓鬼組頭が、隣にいた狂い餓鬼を殴り付けた。これは倒すための行動じゃないな。その証拠に、殴られた個体が正気に戻ったら他の共食い餓鬼を叩いて回る、を繰り返している。


 そうやって共食い熱から覚めた十数体を瞬く間に掌握したこの狂い餓鬼組頭は、集団を率いて俺を追いかてきた。競争相手が減ってこれ幸いと共食いを続ける連中を放置して。


「ハァ…また追いかけっこか…」


 そう。逃げる。というか相手にしない。危険を感じての事ではない。今の俺にとってこいつらではまだ、負荷となりえないからだ。負荷に値する脅威とするにはもっと数が必要だ。


 …という訳で。別の部屋へ移動すれば案の定、そこにも狂い餓鬼組頭がいて、複数の狂い餓鬼を統率していて。


「よし。こいつらも釣って…ほらお前らも追ってこいっ!…て、これもモンスタートレインってやつになるのかな…」


 前世でやられた事なら何度かあったが、自分がやった事はなかったな。


 だからその鬱憤晴らし…なんて事にはならない。そもそもとして他の誰かになすりつけようがない。ここにいる人間は俺一人しかいない。


 だから、


「…そろそろ頃合いかな」


 押し寄せる十数部隊。

 百を優に越える大部隊。


 その全てが、進化した餓鬼となっている。


「…よし、」

 

 よくぞ、育ってくれた。


 俺は、手足に【打撃魔攻】と【衝撃魔攻】を纏わせた。


 そして木刀二振りはベルトに納め、


 


「かかってこいっ!」




 迎え、撃つッ!


 回転しながら、たっぷりと遠心力の乗った手刀を放つ!


 まずは一撃。ガードされたがその腕を破壊しつつ、そのまま並びの餓鬼諸とも吹き飛ばす!


 その勢い次いでに回し蹴りも放っておくっ!食らった餓鬼複数が膝を砕かれ空中、グルグルと舞った。


 それを尻目に俺の方は回転を止め、腰を落としてその反動受け止め、暴れ猛ったエネルギーを掌底に乗せてゆくっ!螺旋を纏うそれが敵の顎を複数撃ち抜いた。


 食らったやつらは脳を揺らして昏倒しながら回転しながら、他の餓鬼に衝突してゆく。被さり合って障害物に成り下がる餓鬼共。


 僅かだが空間が空いた。それは当然利用する。数歩の助走でトップスピードに乗る。ロケットのような前蹴りっ!餓鬼一体の内臓をえぐりつつ殺さぬよう力加減したそれは、後方も纏めて吹き飛ばした。


 この段階で多くの敵が怯んだが、それでも俺に密着しようとするやつはまだまだいる。いいだろう。こちらからも体当たりだ。不運にも先頭にいた餓鬼には膝蹴りも追加する!


 えぐられた腹をくぼませたまま宙に飛んでいくそいつに、後方にいた何体かも巻き込まれていたようだが、それを確認せずに背を向ける。と、同時!


 後ろから襲いかかろうとしていた餓鬼の鎖骨を砕いておく!肘の打ち降ろしだ!そのまま地に叩きつける!


 その勢いで沈んだ腰をまた浮かし、延び上がる!別の餓鬼の土手っ腹に、、アッパーカット!しながらっ、


 闇雲なバックハンドブロー!大回転!纏めて吹き飛ばす!打ち漏らしには回し蹴りをお見舞いする! 


 その間、敵の攻撃はなるべく食らわないよう、回避したり打ち落としたりはしたが。


 この数だ。被弾は避けられない。さらに言えば、敵の全てが進化体だからな。


 俺の分厚くも柔い【MPシールド】ではもう、さすがに食い止めきれなくなっている。


 分厚くも紙シールド。貫通される。肉体に直接のダメージ。随分と食らってしまった。無理な特攻だった事は自覚している。でも、


 『グルメモンスター』の称号によってブーストされた魔食。あれがここで利いてくる。


 【MPシールド】の内側にある俺の肉体は、人外レベルに強化されている。第二の鎧と言っていいぐらいにな。


(まあ、噛みつきなど致命的な攻撃は優先して回避してたし)


 よって食らったのはせいぜいが引っ掻きや打撃が殆んど。それではこの肉体に大したダメージは与えられない。


 それで外傷となっても【強血】スキルの効果で流血はすぐ止まるし【強骨】と【強臓】の効果で体内も問題なし。何とか持ちこたえて──そう、


 『持ちこたえている』


 実際を言えば、この多勢に対しこれ以上のダメージはマズい。


 動きだって鈍るだろうし、そうなれば呆気なく数の暴力に飲み込まれてしまうだろう。


 そうだ。問題ないとは言ってもそれは、『何とか』というレベルでしかない。悪く言えば深刻一歩手前で…つまり、




「ぬ、ぐ…っいぃい、負荷…っ、だっ!」




 そう、待ちに待った負荷。その負荷に…嗚呼、やっと、応えてくれるか。


 成長を停滞させていた俺のスキル群、彼らが遂に、重い腰を上げてくれた!



『【打撃魔攻LV10】に上昇します。上限到達。【重撃魔攻】と【連撃魔攻】の二つから進化先を選んで下さい。』



『【衝撃魔攻LV10】に上昇します。上限到達。【直撃魔攻】と【連鎖魔攻】の二つから進化先を選んで下さい。』



『【韋駄天LV8】に上昇します。』

『【回転LV7】に上昇します。』

『【ステップLV7】に上昇します。』

『【溜めLV7】に上昇します。』

『【呼吸LV8】に上昇します。』

『【血流LV8】に上昇します。』

『【健脚LV8】に上昇します。』

『【強腕LV7】に上昇します。』

『【健体LV7】に上昇します。』

『【強幹LV8】に上昇します。』

『【柔軟LV7】に上昇します。』


『【痛覚耐性L10】に上昇します。上限到達。【痛覚大耐性LV1】に進化します。』


『【負荷耐性LV8】に上昇します。』

『【疲労耐性LV8】に上昇します。』


 多くのスキルが、一斉、一気に成長した。


 その中にはスキルレベルが上限に達したスキルが三つもあった。スキルはレベル9から10に中々上がってくれないのに、それが三つも…思った以上の成果だ。


「…けどまあ、【痛覚耐性】まで進化したのは喜べないな…」


 だって負荷がまた減る事になる。という訳で【打撃魔攻】と【衝撃魔攻】の進化選択は保留にしておいた。こうしておけば進化は保留されるのでその分、負荷の軽減も抑えられる。


 まあそれも大した抑えとはならないのだが。今ので俺はさらに強くなってしまったからな。


 これ以上のスキル育成を望むなら、さっきよりもずっと大きな負荷が必要となる…。


 だから。


「ここは、もう一押しっ!」


 乱戦に特攻しながらも木刀を封印したのも、派手にぶっ飛ばしながらも殺さないように気を付けてきたのも、こいつら進化餓鬼共にまだ用があるからだ。


「しょうがない、」


 木刀を解禁、そして一閃!


 狂い餓鬼の一体を貫く。即死したそいつの首を掴んで盾にする。進化餓鬼どもの群れを掻き分け、抜け出し!そして…っ、


 ──ゴクリ。


「やだなぁ…」という弱音を噛み殺し、


 ──ゾブリ。


「ひいぃ…」という悲鳴を圧し殺す。


 掴み持っていた餓鬼の脇腹に、空手で言うところの抜き手を突き込んでそしてっ、


 ──ジュフ…


「うぇえ…」という吐き気を飲み込みながら。


 俺は、咀嚼した。餓鬼の死骸から抜き出したばかりの、新鮮な血がしたたる肝臓を。



 ついに、生食…っ!









=========ステータス=========



名前 平均次(たいらきんじ)



MP 6099/7250



《基礎魔力》


攻(M)110 

防(F)25 

知(S)66 

精(G)13 

速(神)130 

技(神)106 

運   10


《スキル》


【MPシールドLV7】【MP変換LVー】【暗算LV2】【機械操作LV3】【語学力LV2】【大解析LV2→5】


【斬撃魔攻LV7】【刺突魔攻LV8】【打撃魔攻LV9→10】【衝撃魔攻LV9→10】


【韋駄天LV7→8】【魔力分身LV3】


【回転LV5→7】【ステップLV5→7】【溜めLV4→7】【呼吸LV6→8】【血流LV6→8】【健脚LV5→8】【強腕LV5→7】【健体LV4→7】【強幹LV6→8】【柔軟LV5→7】


【痛覚大耐性LV1】new!【負荷耐性LV6→8】【疲労耐性LV6→8】【精神耐性LV9】


【魔食耐性LV3】【強免疫LV3】【強排泄LV3】【強臓LV3】【強血LV3】【強骨LV1】


《称号》


『魔神の器』『英断者』『最速者』『突破者』『武芸者』『神知者』『強敵』『破壊神』『グルメモンスター』


《装備》


『鬼怒守家の木刀・太刀型』

『鬼怒守家の木刀・脇差型』


《重要アイテム》


『ムカデの脚』


=========================




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