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二周目だけどディストピアはやっぱり予測不能…って怪物ルート!?マジですか…。  作者: ヤマタカコク
第一層 二周目知識は本当にチートなのか 編
17/116

17 スーパーハイテンション脱出行。★



 ──造屋才蔵視点


 


 バタン!「ふあ!」

 

 音と振動につられて目を開けたらそこは…


「え?なん…だ、ここは…どこだ!俺の部屋じゃないじゃないか!どこだここ!」


 さっき均次と話してて…あれ?そこから記憶がないな。ふと見れば隣に愚妹が座っていてシートベルトをしている。なら俺もシートベルトを…て、ここっ!


「車の中か!いやなんで?え?え?いつの間に!?」


 均次は運転席にいた。見慣れた内装からしてこれが才子の車だってのは分かるが、何でコイツが運転してんだ?それに助手席にも誰かいるけど誰?背もたれが邪魔で見えないな。確認しよう──としたら。


 きゅるるらるぎゅん!!


 背中が後部座席に吸い付いたっ!これは急激なGが原因…って、オートマ車でこんな急発進出来るもんなの!?いや免許持たんから知らんけどっ!つか危ない!旧住宅街の狭い車道をこんな猛速で抜けやがっ──


 ドンガタン!


 ──ええええ!ちょっと待て!今何か轢かなかった!?後部ガラス越しに見ればやたらとデカい犬がムクリと起き上がっ…──良かった。死んでないようだ。

 まあそんな高そうな犬には見えなかったし、首輪もなかったし、あれは多分、野良で雑種だな。命を金で換算するのは不謹慎と思うし俺の収入は一般に比べて結構デカイ方だと思うが浮き沈みあるのは否めないし貯金は増えたけど妹の結婚資金を差し引けばまだ目標に達してない──じゃ、なくて!


「おいバカ均次!もっと安全運転しろよおお!お前の車じゃないんだぞ!?飼い主に訴えられて困るのは俺達だってことを──」


「だからその呼び方は風穴だっつってんだろうが!それに『マッドハウンド』に飼い主なんていねえっ!そんな微妙にリアルな寝言はこの状況を見て言えプロニート!」


「だからニートじゃねぇって──


  ドンッッ!


 ──今度はなんだぁっ!?」


 何かが車の上にのし掛かってきた!?走行中だぞ!?それも暴走気味の!…っと上を見れば──


 ギャリリリリリッ!!


「うおおお!?」

「ちっ、まだローン残ってるのにっ」

 

 いや妹よ舌打ちで済ます問題かこれ?


「こんな世界になってんだからローンなんて無効だ無効」


 いやローンの話でもないよバカ親友!車の屋根を突き破ったんぞ!硬い何かが複数本も!ほらそれが六条の傷跡を残して──


 ッブン!


 …おお…どうやらのし掛かってた『何か』は振り落とされた模様。

 だがその反動で車体後部がのめるように急浮上!前方に身体を振られた俺は、運転席と助手席の間に倒れ込んだ!果たしてそこで見たものは──


「どうもはじめまして。大家香澄、といいます」


 リアル峰○二子?の、幼少期?

 が、何故助手席にいいい!?


「なんじゃあこの和風ロリ以後よろしく!」


 ニートじゃないが、ああ確かに。俺は引きこもりだけどそれが何?仲良くするに決まっとろうがこんなレアキャラッ!


「お前らってやっぱ兄妹な。リアクションがほぼ一緒だわ」


 コラ均次。こんなロリータにアダルト潜入捜査官コスさせて横に乗っけといてその余裕は何?…ってお前、


「やい親友、もしかして大人の階段を──やっぱ手錠とか使うの?」


「んなっ、はぁ?急に何言い出してんだこのバカ親友!?」


「均次くんてばそんな趣味……メモメモ。」


「違うマすかラ!悪ノリやめて下さい大家さん悪いクセですっ!!」


 ふ。この様子だとまだ…のようだな。安心したぜ。


「ていうか均兄ぃこそやめてくれる!?こんな社会不適合者と一緒にするの!」


 って美ロリの前でなんて言い草!相変わらず身の程を知らん妹だ。少しは兄を立てんか収入は俺のが上ぞ?


「いやいや、肉片付き釘バットをフルスイングしてくるヤツがそれを言う資格はない、と俺は思う次第なんだが」


「はあ?あれを人に振ったのか?対モンスター用に頼まれて俺がこさえてやったあのバッドを?我が妹ながら恐ろしいやつ──って、おい、なんだ?この音──」


「お兄ちゃんもいい加減大人しくしてくれるかな?妹的に恥の上塗りがもう限界越えてるんだけど?」


「いやだってほら、タッシタッシタッシって犬の足音みたいな──てホントに犬の足音だったよマジかおい!!」


 後ろを見れば時速80kmは出てるこの車に余裕で追い付かんとする犬がいた!


「ああもうホントだ!しつこいったら!」


「ていうかアレ、さっき轢き逃げしたあの犬か!?じゃあさっきのし掛かってたのもあの犬か!?屋根に傷をつけたのもあの犬で、振り落とされたのにまた追ってきたって事なのか!?どうなってんだ近頃の雑種犬!?」


「ああもううっせえ!犬だけど犬じゃねぇ!あれは『マッドハウンド』ってゆうモンスターで…つか、妹から聞いてんだろ?少しくらいは」


「そうだよ言わなかったっけお兄ちゃん?」


「マジか……あれが、、」


 リアルモンスター…ってやつなのか。


 聞いたのと実際に見るでは大違いじゃないか。なんだあの出鱈目な躍動感!現実離れに滑らかな加速!サイズ感がおかしいだけの犬かと思ってたけどさすがにこれは…


「キモいぞ──ってちょっ!来るぞおい!!」


 マッドハウンドとやらがさらに加速した!かと思えば飛び上がった!こら犬てめーデタラメ過ぎんだろうが!滞空中に時速何km出してやがんだ──


 ドンッ!

 

 また重くのし掛かられた事を車体が上下左右にブレて教えてくれた…つか…いるのか!?この上に!?あの犬が!?


 ガリガリガ、ギャリィーー!


 侵入しようと足掻く様が、酷い金切り音を連続して伝わってくるっ!そして──


 バグンッ!!


 金切り音が間抜けなぶち抜き音に変わって…って、おい!


 ブオオオオ──!


「ふおおおおお!!??」

「もう!お兄ちゃんホントうるさいっ!」


 だってだって髪の毛ブワってほらぁ!逆立つそれに釣られて見れば、ほらあぁっ!


 ビュオオオオ──


 …ないんだぜ?屋根が。


「おい妹よ…オープンカーになっちまったぞお前の車…」


「く…廃車決定ね。こうなったら私が殺──」


「って何言ってんだ愚妹めこのアホウ!」


 人は誰しも車の恨みとなればってのは知ってるが!こんなの人間が対処出来る範疇越えてんだろうが!


「大家さんお願いします」


 はあ?均次お前も何言って…


「ちょっ、均兄ぃ…いいの?」


「いい」


 いや何がいいんだ何がっ!


「大家さんは多分…俺より強い」


 いやだから何!?親友という贔屓目で見てもお前より強い人間はこの世に30億人はいると思うんだが?そう思うのに、


「信頼してくれてる?心配されるより、ずっと嬉しい、均次くん」


 走行中だというのに、あの和風ロリは当然とばかり座席を立った。

 その凄いバランス感覚を見せつけるようにゆっくり後ろへ振り返ると片足を背もたれに乗せ、スラリと…え?脇差し?のようなものを抜いた。

 そして静かにその刀身を見つめ…ってなんだその極めた雰囲気……え?もしかして凄い人だったり?いや俺は刀剣に関しちゃ素人だが、それでも創作に携わる人間だからな…分かってしまった。あれが掛け値なしの業物で、それを振る資格を…髪を不吉に逆巻くこの見た目幼女が有しているのだと…そして、


「…ボソ(いくら相手がロリでも、このアングルから見るアダルト潜入捜査官コスは少々と言わずけしからん…)」


 なんて感想を飲み込んでいた…その時だ。魂と共に下半身を密かに疼かせる俺に大きな影が被さったのは。


「ぅ…ぉ……デっけーな…ぉぃ…」


 こちらも走行中だからか体感ではゆっくりだった。だからってこの臨場感はどうなんだ。


 そう、マッドハウンドは思いの外、デカかった。


 首がすくむ。我ながら分厚く思う二重あごがさらに太さを増して呼吸を圧迫した。


 だって危ない…危ないっ!!限界まで大きく開いたマッドハウンドのマッドなアギトがほら、大家嬢に迫っていて、


 それはゆっくり、ゆっくりと……今まさに彼女の鼻先に届かんとしていて──その、瞬間ッ!


 ──チン。


 え?刀を鞘に納めた音…ってことは、もう斬ったの?いつ斬ったん?


 ──ピ。


 やっぱり斬った後らしい。何故なら生暖かい何かが一滴だけ、俺の頬にひっかったから。これは…多分血だろう。勿論それは、あの犬の──


 ドチャッ!


 マッドハウンドは襲いかかる姿勢のまま硬直して失速、車体すれすれに落下した。


 車体後部の影から早々に現れたそれは地に伏したまま。もう動く様子はない。


 つか動く訳ない。だって遅れて首が転がって…つまりこれは、


「大家さん、流石です」


(切断したはずの首が地に衝突するまで身体から離れなかった…って、なんちゅーワザマエ…いや、もう言葉も出んわ)


「ふ、サスオヤ」


 ホンソレ。サスオヤ。これが達人の業すか。いやまさか。こんな劇画的現象を目の当たりにする日が来ようとは。


「つか、人間で合ってます?どこかの研究施設から脱走してきた実験体とか。そんなバックボーンがあったりは──」


「はぃ?ぇ、ぁの、ぃゃ、ぁたらずもとぉから?」


「だから失礼な事言ってんなょこの、バカ才蔵!お前さっきからいい加減にしろ!スミマセン大家さん!…そして何か言いました?風の音が凄くて──」


「ううん、なにも言ってない」


「そうですか」


 いや何を難聴系主人公気取ってんだ均次のやつ。しっかり聞こえたぞ俺は。研究施設が当たらずも遠からずって…じゃぁ、『組織』…ってやつか?何らかの…超人が集まるとかそっち系?


「…だとしたら…いやいやいや、なんともはや──いいぞ。うん」


「いやいやいや、顔があからさまに怪しくなってくけど──お兄ちゃん大丈夫?」


「おっと心配かけたか妹よ。安心しろ。引きこもりはもうやめる」


「頭の中がどんな経緯でそうなったか分からないけど…そっか。おめでとうお兄ちゃん」


 だってさ。そうはないぞ。

 こんな面白そうな事。



 





 









 ……なんて、思った頃もありました。



「前言撤回!ぜんげんてっかあぁーーーい!もう帰して!家に帰してえええ!?布団かぶってガタガタ震えてそのまま寝るから寝て全部忘れたあとはまた静かに引きこもるからあぁあっっ!」い


「さっきの粋な意気はどうしたお兄ちゃん!」


「それこそ忘れたし知るかっ!こんなの聞いてないつかそもそもとして問答無用だったなコんちくしょーー!」


 いや俺だって情けないとは思うよ!?でもマッドな展開がマッドハウンドで終わらなかったんだものー!


 屋根なしとなった車を格好の獲物と見定めたオークらしきモンスターがスクラム組んで突進してきたり!それを均次が



「結構使えるなあ!【機械操作】!」


 とか叫びながら謎のドライビングテクニックを発揮してオートマなのにドリフト!車の横っ腹をぶち当てにいったり!


 ──キキキキィィイボカァァン!!!


「あ、(【機械操作】の)スキルレベル上がったわwないすー」


 そこでボーリングピンよろしく跳ね上がったオークらしきモンスターを大家嬢が『ここぉっ!』とばかりに空中で斬っては刺し斬っては刺し無双したり!


 そのドサクサに紛れて「ヒャッハー!」とか言いがらバールのようなものを振りかぶって襲いきたチンピラ風の人間まで全く躊躇せずぶった斬ったり!


「いやさすがにそれやり過ぎでは!?」


 と咄嗟に抗議すれば


「…殺してない…」


 とかイチベツいただいた訳だけど武器を持ってた腕を切り飛ばされたりしたからほらぁ!無防備になったチンピラくんはコボルトっぽいモンスターにたかられて「ぎゃあぁぁあ!」ってなって


 「…あ~あ…」  …ってなったり!


 そんなこんなで俺氏はもう返り血で真っ赤デス!つか車も荷物も俺も妹も全部血ミドロ──ってそうそう妹!コイツもえぐかった!『なんだあのエロい体わっ!さらってマワすぞー!』とか吠えながら群がってきた不届き者達の顔という顔に、


「はーい殺さない代わり頬肉もらっときまーす」


 とか言うもんだから「はぁ?」となった俺の目の前で特性釘バット乱舞。有言が実行されて遂行されちゃったりっ!


 結果、暴漢達の全員が絶対に女が寄りつかない顔になっちまった上、流れた血の臭いに誘われたモンスターに群がられてんのを見て──


(は!もしやここで生き残っても『女の敵的な刻印』を押すために…?)


 っと改めて背筋を寒くしたり!そんな諸々を見てた均次が


「なんでトドメ刺さねんだ」


 とか吐き捨てるように呟いたのを俺は見逃さなかったけど、女性陣は聞いて聞こえぬ振りともかく平常運転。


 でも俺は聞き流さなく──ってまた来やがったなマッドハウンドぉ!?お前は嫌いだああああ!!



「…はああぁぁぁあぁ…」


 カオス過ぎる…人の耐久軽く越えてるだろこんなん。SAN値ガリガリだよまったくもう…よし、ここは叫んで発散しよう。



「ケィ、オォオおおおおスっ!!!(※なんなのこのカオス!というニュアンスで吠えております)」



「うお?なんだ急にこえーな」


「うるせぇ!怖いのはお前の運転だ今すぐおろせ!」


「ええ…マジか、ったくしょうがねぇな──」


「じゃ、ないよバカだなぁぃやごめんなさい!こんな所でおろさないで!?ちゃんと家まで送り届けて下さい丁重に…ッ!!」



「お兄ちゃん…もう、引き返せないんだよ」



「いや言いたいだけだよなそれ!でもわかる!わかるが知るか!そして行くかよ!行くなら俺を残して行け!妹よ!」


「才蔵さん、力を合わせて、頑張る、ましょ?」


「言いながらラバースーツっていうのかなそれ?の、ファスナー少し下ろしたね今!?見逃さなかったよあざといな!?でも『ない谷間』強調あざます!!」


「おいゴらやっぱてめーはここで降りとけガヤニートっ!」


「ニート違う!けど!ごめん!でも!こんな健気目ぇ離せる思う!?こんな攻められ方したら引きこもりだってどうしようもなく男よ?馴れたリア充どもみたく抑制効かねーっつの!察しろ!」



「じゃぁ、も少しおろす。ファスナー」


「ふぁっ!?」


「大家さん!?」


「香澄さんダメ!餌与えないで癖になるからっ!」


 大家嬢…女神か。


「おい均次。ちゃんと前見て運転しろ。ない谷間はこっちで探しとくから」


「ぬああてめー!…ホン…てめー!…ぐ、ぬぬぬぬぬぐおおおおーーくそ!モンスターにしろ暴徒にしろいい加減うぜえ!どけやお前ら轢き死なすぞホントに轢死させたいのはこのニートだがなぁっ!」


「均次くんかわいい」


 ふん。均次の幸せ者め。なのに八つ当たりとは若いな。そして一生付いていきます大家嬢。あとモモをツネるな妹イタイタい。という感じで俺が無理矢理にも甘く連行された先。


 そこは均次曰く、『ボーナスステージ』であるらしいが俺は全然信用していない。


 はてさて…次はどんなおっかない冒険が待ってることやら…。




=========ステータス=========



名前 平均次(たいらきんじ)


MP 7660/7660


《基礎魔力》


攻(M)60

防(F)15

知(S)45

精(G)10

速(神)70

技(神)70

運   10


《スキル》


【MPシールドLV7】【MP変換LVー】【暗算LV2】【機械操作LV2→3】【語学力LV2】【韋駄天LV2】【大解析LV2】【魔力分身LV3】【斬撃魔効LV3】【刺突魔効LV3】【打撃魔効LV2】【衝撃魔効LV2】


《称号》


『魔神の器』『英断者』『最速者』『武芸者』『神知者』『強敵』『破壊神』


《重要アイテム》


『ムカデの脚』


=========================






 ここまでを一章とします。読んでくれて有り難うございます。


 続きが気になるという方はいくつでもいいので☆評価お願いします。あとブクマや感想やいいねも励みになります。


 さてここまで読んでもらった通り、均次くんは回帰者なので覚悟が決まってる部分はありますが、根っこの部分は普通人なので、二周目チートを生かせてもその反作用で起こる予測不能展開に振り回されてしまいます。


 これからも運命の歯車は必ず狂う。その狂いは段々と激しさを増して均次くんに牙を剥きます。


 でも負けない。


 回避出来ないそれらを我武者羅に迎え撃つ。という感じで進んでいきます。


 応援してあげてください。



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