聖夜のミルキーウェイ~美少女サンタ達の震える夜
「おめでとう。今年から『カペラ』だな」
「クロエちゃんも、もう一人前ね」
「ありがとうございます、先輩っ!」
黒髪をショートに切り揃えた真面目そうな面持ちの少女が、ハキハキと、それでいて嬉しそうな声を上げる。
声に釣られて体が跳ね、真っ赤なレオタードからこぼれ落ちそうな胸が、ブルンッと強いハリを示した。
彼女は『星屑の乙女』。
年に一度、クリスマスの夜に、世界中の『良い子』にプレゼントを届ける天の使い――所謂『サンタ』と呼ばれる存在だ。
スリムな編み上げブーツ、膝上のソックスに長手袋、そしてベアトップのレオタードが、少女の肉付きのいい体をむっちりと締め上げる。
色はソックスがワインレッドで、他は鮮やかな赤。
ソックスは太股のあたりにリボンが巻かれ、ブーツと長手袋の裾、レオタードの胸元は、真っ白なファーで縁取られている。
その上に羽織るのは、やはり赤地に白いファーの付いた、鳩尾くらいまでの短いケープ。
そして勿論、頭には折れ曲がった三角錐のサンタ帽。
彼女のような若く、だが肉体の成熟した少女が着るには、いささか露出度の高い装いだ。
黒髪も少女――クロエも、各所から僅かにはみ出す肉に顔を赤くし、手を腰の前で組んで、もじもじと身を揺すっている。
が、それと同時に彼女は、この服を纏うことへの誇らしさも感じていた。
「でも、まだまだです。もっと鍛錬と実績を積んで、いつか先輩達のような『シリウス』になって見せます!」
目の前の、彼女同様のレオタード衣装を纏う2人の美女に、クロエはやる気と憧れが混ざり合った視線を向ける。
『カペラ』、『シリウス』……子供達に夢を届けるエトワールだが、世知辛いことに等級がある。
どれだけの量のプレゼントを速やかに届けることができるか。更には単純に稼働可能な時間が、主な評価の指標だ。
クロエの『カペラ』は、4つある等級の上から2番目。
エトワールが『一人前』と認められるようになる等級だ。
衣装のレオタードを見せるようになるのもここからで、去年のクロエは、スカート丈は凄まじく短いが、温かい厚手のサンタ服をレオタードの上に着ていた。
そして、クロエの目の前にいる2人は、最上級の『シリウス』。
白地に金の刺繍が施された豪奢なレオタードに、煌びやかな星の装飾を各所に身につけている。
その内の1人、青髪をポニーテールに纏めた鋭い印象の女性が、クロエに紙袋を手渡した。
「これは……なんですか?」
「慣例でな。面倒を見ていた後輩が『カペラ』に上がったら、最初の年だけ贈ることになっている。開けてみろ」
「はい。えっと…………えぇっっ!!?」
中身を取り出したクロエが大声を上げる。
青髪のシリウスがクロエに送ったもの――
それは、大人用紙オムツだった。
「なっ、なななななんですかこれはっ!!?」
「カペラ以上になると、非公式にだが携帯が許可されるんだ。来年からは、自分で準備をするように」
至極真面目な表情で、まるで事務連絡のように伝える青髪のシリウス。
だが受け取ったクロエは、両手でオムツを握りしめ、ワナワナと肩を震わせる。
そして、これを渡した先輩の女性を、キッと睨みつけた。
「ばっ、馬鹿にしないで下さいっ! 私は、こんなものを使うような失態は晒しません! これはお返しします! 失礼しますっ!!」
怒りを露わにオムツを突き返し、レオタードに包まれた尻をプリプリと振りながら去っていくクロエ。
青髪のシリウスは、その尻をため息で混じりで見送った。
「やはり、怒りましたね。こうなるとは思っていました……」
「ふふっ……なんだか、昔のロベリアちゃんを見ているみたい」
「やめて下さい、ルーナ先輩。本当に昔の話です」
本当に嫌そうな顔を、隣の女性に向ける青髪のシリウス――ロベリア。
だが、その視線の先の彼女は、全く気にした様子も無く、ニコニコと笑っている。
腰まで届くサラサラの銀髪が美しい彼女――ルーナは、どうやら以前はルベリアの面倒を見ていたようだ。
そして恐らくロベリアも、クロエと同じようにオムツを突き返したのだろう。
その年のロベリアの末路を思い出し、彼女は柔和な笑みを憂い顔に変える。
「今年の『天の川』は、クロエちゃんかしらね……」
「そうならないことを祈りますが……もしもの時は、お手伝いをお願いしても宜しいでしょうか」
「ええ、勿論任せてちょうだい」
◆◆
子供達が寝静まった深夜。
日付が24から25に変わった少し後、夜空に輝く星の中に、『星屑の乙女』が混ざり出す。
プレゼント配達の時間だ。
サンタとなった少女達は、プレゼントを待つ良い子達のために、縦横無尽に空を舞う。
空飛ぶトナカイにソリを引かせ、軽快な軌跡を描く美しい[[rb:星 > エトワール]]達。
しかし、出発から1時間、2時間と経つと、その軌跡に乱れが見え始めた。
「はぁっ……はぁっ……ど、どうしよう………んんっ!」
去年のクロエと同じ、サンタ服に股下2~3cm程度のマイクロミニスカートを纏うエトワール。
1番下の等級の『デネブ』である少女が、涙目で周囲を見回しながら、露出した脚をもじもじと擦り合わせる。
寒さを紛らわせるためではない。
クロエ達、そして彼女達もインナーとして纏っているレオタードは、肌が露出している部分も含めて完全防寒の機能がある。
それでも真冬の空は多少肌寒くはあるが、半人前の彼女はその上から温かいサンタ服まで来ているのだ。
全身を震わせ、脚を擦り合わせるほどの寒さを感じること決してはない。
彼女が震えてしまっているのは――
「もうっ……漏れちゃう……!」
激しい尿意を催してしまったからだ。
――エトワールはトイレに行けない。
『世界中の良い子達』に対して、エトワールの数はあまりにも少ない。
『良い子』の判定を相当にシビアにして人数を絞ってはいるが、それでも一晩で回り切るにはギリギリだ。
配達が始まれば、天界に戻っている暇はない。
そして、地上に降りることも許されない。
エトワールは人間ではないが、人間に非常に近しい実態のある肉の存在だ。
一応隠蔽の魔法はかかっているが、近付かれれば解けてしまう。
人の手の届くところに近づいてはいけないのだ。
必然、エトワール達は配達が終わるまで、ずっと空の上に居続けることになる。
トイレになど、行けようはずもない。
「あぁぁっ……誰かっ……! 誰か、助けて……!」
見れば彼女以外にも、多くのサンタ服の少女達が、尿意に身を捩り、体を震わせている。
エトワールの等級評価の『稼働時間』……それは、尿意を耐えることができる時間のことだ。
「もう……もう、だめっ……!」
少女の腰がビクビクと跳ねる。
必死に、必死に耐えようとして、それでも少しずつ、真っ赤なレオタードの股布が濡れていく。
そして、彼女の体に、今日一番の震えが走った。
「ああぁああぁっっ!!」
◆◆
夜空を彩る星達に、また新たな光が混ざりだす。
控えめに瞬く青と、稀に少しだけ明るい赤の星屑。
その光を、煌びやかな白レオタードのシリウス達は、心配そうに眺めていた。
「始まったか。クロエ……やはり、無理矢理にでも渡しておくべきだった……」
そんな中ロベリアは、1人オムツを拒否した後輩を思う。
融通が利かず、少々プライドの高いところが玉に瑕だが、真面目で優秀で、思いやりもある少女だ。
深く傷つくようなことには、なってほしくない。
が――
「私やお前のような者は、一度経験しておくべき……なのかもしれんな……」
◆◆
「んっ……くっ……ふぅぅ……っ」
小さく開けた口から漏れる、苦悶を帯びた熱い吐息。
半人前の少女達が次々と果てていく中、『カペラ』として初仕事に挑んだクロエもまた、込み上げる尿意に苦しめられていた。
四肢と胸元が剥き出しのレオタード姿は若干の肌寒いはずなのに、額には汗が浮かんでいる。
だが、目的地に向けたクロエの目に、焦燥や狼狽はない。
(残りのプレゼントは3つ。最短コースで回れば、あと6分で配り終わる)
割り当てられたプレゼントの配達先、風速による移動の難易度、気温による冷えまで計算して、最適なコースを構築するのが、クロエのスタイルだ。
勿論、余計な水分などもっての外。
(大丈夫……今回もちゃんと我慢できる。私は……星屑の乙女なんだから……!)
クロエは新人時代のある日から、我慢の仕草を表に出さなくなった。
まだ今のスタイルが出来上がる前、無駄なコースを飛び、体を冷やし、油断して飲んだハーブティーが膀胱をパンパンに満たしてしまったあの日。
プレゼントを置いてソリに戻る途中で、クロエは子供に見つかってしまった。
それ自体は、特に致命的な問題ではない。
窓の開閉による室温の変化で、子供が自然と起きてしまうことはあるし、エトワールが遣わされるほどの『良い子』なら、微笑みながら『内緒よ?』とでも言えば、決して他人に言いふらすこともないからだ。
クロエの身に降りかかったのは、全く別の問題。
もう漏れる寸前だったクロエは、股を押さえた屁っ放り腰で、みっともなく体をくねらせる姿を見せてしまったのだ。
『サンタのお姉さん……おしっこしたいの……?』
そう言った女の子の心配そうな顔は、今でも忘れられない。
その日は何とか漏らさずに済んだクロエだったが、もう二度とあんな醜態は晒すまいと、努力を重ねて今のスタイルを身につけたのだ。
例え配達の終盤だろうと、『サンタのお姉さん』として、夢を与える姿を見せられる自分になろうと。
なので、出発前にロベリアが渡そうとしたオムツなど、使うのは勿論、携帯することすらあり得ない。
自分を気遣って渡そうとした彼女に、失礼な態度をとってしまったこと自体は、クロエも深く反省している。
仕事が終わったら、きちんと謝罪をしようと。
だが同時に、あんな物は必要ないという姿も見せたいと思っている。
そしてこの分なら、それも難しいことではない。
(大丈夫……! ロベリア先輩に、成長した私を見てもら――)
「すすすっ、すみませんっ!!」
改めて決意を固め、手綱を握る手に力を入れようしたクロエだったが、切迫した声がそれを遮った。
マイクロミニのサンタ服。雪の結晶のバッヂがあるので、上から3番目の等級『スピカ』の少女だ。
股を押さえ、尻を突き出し、もじもじと身悶えるという、まさにあの日のクロエと同じ姿を晒している。
「す、すみま、せん……あぁっ! ひ、引き継ぎっ……ひき、つぎを……あ゛あぁっ!!」
「ああ……」
『引き継ぎ』
我慢の限界に達してしまったスピカ以下の少女が、カペラ以上のエトワールに残りのプレゼント配布を頼む緊急避難である。
小水を漏らしたエトワールは、それ以上配達を続けることはできない。
単純に不潔ということもあるが、お漏らしをするような情けない者に、子供達に夢を届ける資格などないからだ。
まだ半人前の少女達には、そうなる前に先達に助けを求めることが許されている。
評価は大幅に落ちることになるが、それでも限界を見誤り漏らしてしまうよりはかなりマシだ。
心の傷の深さに至っては比べるべくもない。
「仕方ないわね。聖紋を出しなさい」
「は、は、はいぃぃぃぃっ……!」
少女は出口を押さえていた手を離し、必死の表情でクロエに手の平を向ける。
すると、空中に紋章が浮かび上がった。
聖紋――エトワールのIDカードの様な物だ。
これで、どこで誰が、誰にどれだけのプレゼントを『引き継いだ』かを、天界が把握できるようになっている。
クロエも自身の聖紋をかざして処理を終えると、少女が残した9つのプレゼントを自分のソリに乗せた。
「あああありがとうございましたっ! 失礼しますっ! あああぁぁぁっ! 間に合ってええぇぇぇぇっっ!!」
ソリが空になると、スピカの少女は大急ぎで天界に戻っていった。
ソリの軌跡を示す様に、点々と青い星屑を残しながら。
「あの子……間に合うかしら……んっ」
気遣わしげに眺めていたクロエだが、人の心配ばかりはしていられない。
彼女とて、かなりの我慢を強いられているのだ。
(少し、多いわね……んんっ……このくらいなら、大丈夫だと思うけど……)
合計12になった配達先に不安そうに下腹をさすりながら、クロエは配達ルートの再構築を始めた。
クロエは、気付いていなかった。
そんな彼女に、切迫した視線を向ける、別の少女がいたことを。
◆◆
「んんっ……さすがに、辛くなってきたな……っ」
眼下の夜景を眺めながら、ロベリアがレオタードに包まれた尻をもじもじと揺する。
如何に最上級の『シリウス』とは言え、配達も終盤になれば皆、生理現象との過酷な戦いは避けられない。
自身の分はとうに配り終えたが、『シリウス』たるロベリアは、多くの悶える後輩達から救いを求められる立場だ。
引き継いだプレゼントは累計で70を超え、まだその残りの3割がソリに鎮座している。
(あぁっ……やはり、『使う』ことになるのか…………いや、まだだっ……! そう簡単に、屈してなるものかっ……!)
経験豊富なエトワールであるロベリアは、オムツの重要性を十分に理解している。
だが、それでもロベリアは女性だ。
堪えきれず、空の上でオムツに用を足すなど、心が張り裂けそうになるほどの屈辱だ。
だがそれを拒んだ結果、彼女は『カペラ』昇格後の最初のクリスマスに『天の川』となった。
どれだけ屈辱的だろうと、あの恥辱に比べればまだマシだ。
教訓を思い出し、少しずつ心に覚悟を決め始めるロベリア。
「『天の川』……か。クロエ……」
覚悟と共に心に余裕も生まれ、彼女はかつての自分と同じように、オムツを拒んだ少女に思いを馳せる。
自分の分だけなら、彼女もとっくに済ませているだろうが、今年からはクロエも『引き継ぎ』を受け取る立場だ。
様子を見ようと、聖紋から現在のクロエの配達予定を取得するロベリア。
「なっ!!?」
クロエの配達予定プレゼント――その残数を確認したロベリアは、目玉がこぼれ落ちそうなほどに目を見開いた。
◆◆
「うぅっ! うぅっ! うっ……ああぁぁぁぁっ……!」
寒さの強まる空の上、レオタードが際立たせる肢体を、ぎこちなく捩らせるクロエ。
顔面に大量の脂汗を滲ませ、目の端には大粒の涙が浮かんでいる。
「んんっ! くっ、うぅぅぅ……! ふぅっ……ふぅっ……あぁぁっ!」
(嘘っ……こんなのっ……嘘よ……っ)
助けを求める様に周囲をキョロキョロと見回すが、瞳に映るのは舞い落ちる雪と、星の輝きだけ。
むっちりと存在を主張する脚は、先ほどからずっと、もじもじと擦り合わされている。
(私が……こんな、ところで……私がっ……! 我慢っ……できないなんてっ……!)
クロエは、漏れる寸前になってしまっていた。
12件のプレゼントを急いで届けていたクロエだったが、そろそろ震えが抑えきれなくなってきた頃、また別の少女から『引き継ぎ』を頼まれてしまったのだ。
既に太股まで濡らしてしまっている姿に憐れみを覚え、残りを引き受けたクロエ。
だが運の悪いことに、周辺にはかなりの数の少女達が、限界を超えかけた尿意に悶えていたのだ。
引き継ぎの様子を見た少女達が、私も、私もとクロエに泣きついてくる。
自身も限界に近づきつつあるクロエだったが、自分の膀胱を過信し、その全てを受け入れてしまった。
総数、84件。
尿意に半分を支配された頭で、ルートの再構築ができる数ではない。
歯を食いしばり、全身を強張らせ、一軒一軒懸命にプレゼントを届けるクロエ。
だが、行き当たりばったりのルート選択は、もはや一刻の猶予もないクロエから、無駄に時間だけを奪っていく。
今にも溢れ出しそうな尿意に対し、プレゼントは残り42件。
(で、出ちゃう……我慢できない……出ちゃう……! あぁっ……あぁぁぁっ……!)
ジョッ……ジョロロッ……。
「あ゛ああぁぁっっ!!? い、嫌ぁっ! 出ないっ、でっ……!! んんんっ……!!」
レオタードの股布に、生暖かい感触が広がった。
同時に下腹を襲う、絶対に受け入れてはいけない快感に、悲鳴を上げて抗うクロエ。
だがその表情は、尿意のあまりの辛さに、屈服寸前の泣き顔になっていた。
(私は……カペラ……んんっ! 夢を、あ、たえるぅ……エト、ワー、ルっ……うぅぅぅっ!)
ショロロ……シュィィ……。
(エト、ワール、がっ……お、お漏らし、なんてぇぇ……!!)
ジョビィィィィ……。
「んあぁぁあぁっっ!! だっ、めっ! 出ちゃう……っ! もうっ……で、ちゃう……!!」
レオタードの染みは、もう正面からでも見えるほどに広がっている。
出口を知ってしまった膀胱内の熱水が、早く開けろと門を打ち付ける。
クロエはもう、自分がどこに向かっているのかすらわかっていない。
「ごめん……なさい……んんぁっ! も、もうっ……だ……めっ……!」
その謝罪は、誰に向けてのものか。
クロエはソリを止め、大慌てで足元に手を伸ばす。
そして、一本のレバーを見つけると、ボロボロと涙を流しながら、ゆっくりとそれを手前に引いた。
後方の、プレゼントを積んだ荷台が座席の下側にスライドしていく。
これから起こることから、プレゼントを守るためだ。
背中が寂しくなったのを確認すると、クロエはブーツを抜いで、席の上に登った。
(『良い子』のみんな……ごめんなさい……!)
脚を大きく広げて軽く曲げ、上半身を思い切り倒す。
すると、レオタードが食い込む大きな尻が、背もたれの後ろに飛び出した。
(こんな……こんなっ……!!)
前屈みで尻を突き出す、あまりにも屈辱的なポーズ。
その尻が、下腹からの排尿衝動に、まるで性行為を請うようにぐねぐねと悶える。
(こんな、みっともないっ……『サンタのお姉さん』でっ……!!)
失笑を禁じ得ない自身の有様に心を抉られながら、クロエはソリのスピードを上げていく。
ヤケになったわけではない。
これが生理現象に屈し、オムツも拒否した結果、空中で漏らすしかなくなってしまった憐れなエトワールに許された、唯一の行動なのだ。
「うぅっ……くっ……ぇぐっ……んぁぁっ……! ぐずっ……嫌っ……ひっぐ……!」
恥ずかしい姿勢で尻を外に突き出し、空中に『恥』を撒き散らす。
良い子達へのプレゼントを、ほんの僅かにも汚さないために。
「ん゛っ! ん゛ん゛っ! い゛、嫌っ……! ん゛あぁぁっ!? やっぱり……やっぱり、い゛やぁぁ……!!」
屈服のポーズを取りながら、往生際悪く全身を震わせるクロエ。
そんなクロエの剥き出しの太股を、冷たい冬の風がヒュッと撫でた。
「あ゛あ゛あ゛っっ!!」
ジョビビッ!
寒気が下腹までせり上がり、パンパンに膨らんだ膀胱がキュッと縮こまる。
それが、クロエの最後の引き金を引いてしまった。
「だ、めっ……もぅ……だめっ……! でるっ……で……る……!」
(あぁぁっ……ごめんなさい……ロベリア先輩……ごめん……なさい……!)
ジョビィィィッ!
「ん゛も゛ぅっ……! でる゛ぅぅ……!!」
(せめて……オムツ…………もらって……おけ……ば…………ぁっ――)
「あああああぁぁぁあああぁぁあああぁぁぁぁああぁああああぁあああぁああぁぁあああぁああああぁぁああぁぁっっっ!!!!!」
ブジョオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!!!
◆◆
冷たい夜空に撒き散らされる、眩い金色の星屑。
美しい光のパレードを眺めながら、ロベリアはその顔を哀愁で満たした。
「天の川……やってしまったか。緊急通信、クロエに」
聖紋を呼び出し、クロエとの回線を開くロベリア。
一拍置いて、ロベリアの耳にクロエの嗚咽が飛び込んできた。
「クロエ、聞こえているか」
『うぅっ……ぐずっ……せ、せん、ぱい……うぅぅあぁっ……わ……わたしぃ……っ』
「わかっている。とにかく今は、手綱を離すな」
努めて平静に、だが普段より少しだけ柔らかい声で、ロベリアが語りかける。
『ごめっ、なざっ……わた、し……ひっぐ……えぐっ……ぉしっこ、もらし、てぇっ……!』
「すぐに行ってやるから、待っていろ。あと直進し過ぎだ。5秒後に大きく右に旋回!」
『は、いぃっ……! うぁぁうぁっ……! あぁぁっ……! うあぁぁああぁぁっ……!』
泣きじゃくりながらも、指示通りに旋回する黄金の星屑を確認し、ロベリアは通信を切った。
――ブルルルッ!!
「んはあぁぁっ!? あっ、んっ……くぅっ……ま、まったく、手のかかる……! これはっ……避けられそうにないな……!」
体を大きく震わせ、もじもじと身悶えながら、ロベリアはクロエの元へとソリを走らせた。
エトワールのレオタードには、少女のお漏らしからプレゼントを守るため、ある力が与えられている。
漏らした小水を、光に変える力だ。
レオタードを通して外に溢れ出した小水は、空気に触れると星屑となって空を舞う。
『デネブ』なら夜空に溶ける暗い青、『スピカ』もあまり目立たない赤。
だが、一人前と認められた『カペラ』以上のエトワールに、そんな甘えは許されない。
己がどれほど恥ずべき失態を犯してしまったのか、骨身と魂に刻むため、強烈な光と色味を持ってその醜態を知らしめるのだ。
――ブシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!!!
今まさに、脚の付け根から金色の光を撒き散らす、クロエのように。
『嫌あああああぁぁっ!! 見ないでっ!! みんなっ、見ないでええええええええぇぇぇっっ!!!!』
とは言え、レオタードにこの力を与えた者も、本当にその光が夜空を照らすことはないと思っていた。
栄えある本物のエトワールが、そんな無様を晒すはずがない。
これは、ちょっとした戒めだと。
だが、残念ながら毎年必ず、昇進したての『カペラ』の中に、恥辱の星屑で夜空を穢してしまう者が現れる。
黄金の大噴射は、この季節の風物詩となってしまっていた。
そしていつしかエトワール達は、この夜空を照らす大恥を、夏空を彩る星の大群に擬えるようになる。
見た目の類似性のみならず、毎年のように曇天に姿を隠すその天体ショーのように、今年こそは中止になってくれという願いも込めて、この恥辱のショーをこう呼んだ。
季節外れの星の道――
『聖夜の天の川』と。
◆◆
「お疲れ様。ロベリアちゃんは、あと2件でおしまい?」
「え、えぇ……! ですがっ、もぅっ……ん゛ぁっ! げ、げんかぃのっ、よぉ、です……! し、しつれぃっ、しますぅぅっ!!」
――ガサガサッ、ガサッ…………ジョオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!!
「くっ、くほぉっ……んんむっ……んふぅっ……くっ、いいぃぃっ……!」
「うふふっ……ロベリアちゃん、可愛い♪」
「おぉっ……き、きもひ、い―――あぁっ!!?」
「?」
「ん゛っ! ん゛んっ!! と、とま゛れっ!! たの゛むっ!! ん゛っ! ぐううううううううぅぅっ!!」
「ロベリアちゃん、どうしたの?」
「そ、それがっ、あ゛ぁっ! 間違えてっ、小さいオムツをっ! あ、溢れっ、くうぅうぁっ!!」
「あらあら……大丈夫?」
「む゛、むり、ですぅっ……! とめて、いられないっ……! せ、せんぱいっ、よびのっ、オムツ、などわぁ……!?」
「ごめんなさい、一個しか持ってきてないの」
「………………………あぁ……」
――あああああぁぁああぁああああぁぁぁあああぁぁああああぁぁぁあああぁぁぁああぁぁっっっ!!!!!
夜空に、眩い光を放つ、虹色の星屑が迸った。
あらすじで漏らしてるのは『昔のロベリアちゃん』です。