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お母さんこれジャ〇プじゃなくてマ〇ジンじゃん…的な間違い

※朝7時に投稿した内容が間違っていました!※

 大変申し訳ありません!!

 学生が集まってクソ真面目にテスト勉強に励むのは最初の1時間くらいが限界である。集中力もやる気も気力も根こそぎ吹き飛び、結果どうなるかと言えば……


「はっ!? マイうっざ! あ!? 乳デカてめ、邪魔すんな!」

「イエ~イ! 今回もウチの独走~!」

「あっ、ちょっときらりん、ソレはダメ……ああっ!?」

「…………」


 ……なんとなくこうなる気はしてたよ、うん。


 最近やたらめったら新規コースが追加された赤帽子の配管工がパッケージの超有名レースゲームを現在プレイ中。テーブルの上に広げられた教科書やらノートやらがポツンと忘れ去られた光景はなんとも哀愁を誘う。


 ソファに不破と鳴無が座り、床に太一と霧崎が並んで画面の前に陣取っている。 


 現在すでに5レース目。これまでの総合結果は太一が1位を二回獲得、霧崎が三回優勝。不破と鳴無が最下位争いをしているという状況である。


 追試対策そっちのけで始まったゲーム大会。


 もはや試験勉強において脱線というのは様式美の類である。遊びたい盛りの彼らにとって、人が集まった空間で黙々と紙にペンを走らせる行為など1時間も継続できれば上出来な方であろう。休憩という名目で最初の毒が注入され、「ちょっとだけ」というルールも時間と共に内側で悦楽がジワジワ浸食。気付けば勉強そっちのけで遊戯に興じるのだ。


 意志が弱い、などと外野は簡単に言うが、娯楽という名の麻薬は一度でも手にしたが最後、よほど強靭な精神力(自制心)を以てしても手放すのは容易じゃない代物なのである。


 したがって、テスト勉強中に一度でもゲーム機を起動したが最後、夜が更けて集中力が皆無になったところで「あ、結構遊んじゃったね。今日はもう終わりにしよっか」という具合に『勉強はした』という免罪符だけを持ち帰り、なんのために集まったのか分からないという結果だけが残されるのである。


 もう普通に友達の家に遊びに行ってた、と言っていいレベル。特に太一の自宅にはゲームが充実しているため余計である。


「よーし今回もウチの勝ち~!」

「だぁぁぁっ! またマイかよ!」

「逆にキララはまた最下位だよねww」


 霧崎がどや顔で不破を煽る。基本負けず嫌いな不破は青筋を浮かべる。


「こんの~……つか牛チチにも負けてるとか最悪だし……つかお前さ、なんでカーブの度に体傾けてんだよ!? いちいちぶつかってきて鬱陶しいし邪魔なんだけど!」

「え~、なんか動いちゃわない? こうぐい~んって」

「てめぇの関節全部ボンドでガチガチに固めてやろうかおい……」

「きらりんひど~い。ていうか別にちょっとぶつかるくらいいいじゃな~い」

「ってこら! 抱き着いてくんなあっちぃしうぜぇ!」


 あまりにも賑やか過ぎる。背後で女子二人がやいのやいのと騒ぎまくりの暴れまくり、霧崎はいつの間にやらテレビラックの正面に移動して勝手に新しいゲームを漁っている。この時点でもうテスト勉強に戻る気配なし。太一は溜息をつく。こんな調子で追試を合格できるのか。


 時計を見上げるとなんともう6時過ぎ。レースゲームの前から別のパーティーゲームをプレイしたり鳴無が興味本位でフィットネスゲームに手を出した挙句、ミニゲームに女子全員が夢中になり揃って汗塗れの末にシャワーまで浴びに行くという……やりたい放題な有様だった。

 

 途中で太一も遠慮気味に「あの……勉強は~……」と訴えたがもはや誰の耳にも届くことはなく。彼の発言力の低さというか声も実際小さくボソボソと喋るのが精一杯。女子三人の中に男子一人というアウェーな状況。自宅だというのになぜか妙に居心地が悪い。こんなの絶対おかしいよ!


 夏バテ以上の疲労感に襲われて太一は肩を落とす。


「――ただいま~」


 と、溜息を吐き出すのと同時に玄関から声が聞こえて来た。


「あ~~っ、涼しい~~……」


 リビングの戸を開けて入ってきたのは太一の姉の涼子である。彼女は夏の陽気で火照った体にクーラーの冷気を浴びて気の抜けた表情を浮かべる。

 この前までレディーススーツのジャケットを羽織っていたが、昨今の連日猛暑に完全クールビズ状態。白のワイシャツにタイトスカート。ただでさえ目立つ胸部装甲が薄いワイシャツ越しにその存在感を主張している。きっと電車に乗り合わせた男性乗客は己の本能と必死に戦う羽目になったに違いない。特に眼球運動の制御とか。ご苦労様です。


「おかえり、姉さん」

「りょうこんおか~」

「あ、ウッディのお姉さん、お邪魔してま~す」

「お邪魔してます」

「は~い……は~……太一なんか飲み物ちょうだ~い」

「麦茶でいい?」

「もう冷たければなんでもいい~」


 ワイシャツの胸元を大きく開いてパタパタと手で仰ぐ涼子。太一の持ってきた麦茶の入ったグラスを受け取ると一気に喉へと滑らせる。


「あ~生き返る~」


 あまり冷たいモノを一気に胃へと流し込むの体によくないのは百も承知だが、酷暑の中、このキンキンに冷えた飲み物のもつ魔力には容易に抗うことなどできない。


「今日もみんな集まってたのね。追試対策は順調?」

「「……」」


 不意に投げかけられた涼子からの問いに霧崎と鳴無は無言で目を逸らす。というかテレビでガンガンゲームのBGMが垂れ流されている時点でお察しという感じであろう。

 涼子は苦笑しつつ、「まぁ頑張りなさい」とだけ残し、「ちょっとシャワー浴びて来るわ」と脱衣所へ――


「あ、そうだ」


 が、彼女は途中に立ち止まり、リビングへ振り返ると、


「太一」

「ん?」


 太一を手招きで呼び寄せる。


「私のバックに今日買ってきたゲーム入ってるから、あとで皆で遊ばない?」

「え?」


 珍しい。確かに涼子もゲームはするが自分から買ってきたことはほとんどない。どういう風の吹きまわしか。彼女はリビングの面々を見渡し、


「あんたにこんなに遊び友達が増えるなんてもう奇跡じゃない……まぁなぜか女の子ばっかりだけど。でもまぁ、せっかくだし皆で親睦を深めてもいいかなって思ったから。たまにはね」

「そ、そう……」


 少し気恥ずかしくなって、太一は頬を掻く。不破と霧崎はともかく、鳴無が友人かどうかは少し怪しいところもあるが……

 とはいえこうしてワイワイ皆で騒ぐというのは太一のこれまでの生活では考えられなかったことだ。不破に始まり霧崎と関わるようになり、最近では鳴無までもが宇津木家に出入りするようになった。もっとも、彼女と知り合った経緯についてはとてじゃないが姉に話すことなできないため適当に誤魔化したが。


「私もちょっと気になってたタイトルだったし、いい機会だと思って買ってみたのよ。ちょっと前のソフトだけど、けっこう評判のヤツだったから。あ、でもみんな時間は、」

「ウチは問題な~し!」

「ワタシも特にこの後の用事とかはないし大丈夫かな」


 涼子が「大丈夫?」と問うよりも早く、食い気味に霧崎が手を上げ、鳴無も流れにのる。


「そう。それじゃ、夕飯のあとにでも皆でやってみましょう」

「うん。あ、どんなの買ってきたのか見てもいい?」

「別にいいわよ。バックにレジ袋が入ってるから、勝手に開けちゃってて」


 と、今度こそ涼子はリビングを出て脱衣所へと向かった。


「ねぇねぇ何買ってきたのか見てみようよ」


 と、霧崎がノリノリで太一後ろからひょっこりと顔を出す。太一は姉のバックから書店のロゴが入った袋を見つけた。ガサゴソと中を漁ってタイトルを確認。するといつの間に近付いてきたのか不破と鳴無も興味深そうに太一の手元を覗き込んでいた。


 が、


「……こ、これ」

「あ! これ知ってる。なんか電車のヤツでしょ。お金集める感じの」

「う、うん……」


 姉のバックから出て来た代物……それは数年前に発売され爆発的な売り上げを記録した有名なすごろくゲームだった。

 

 日本列島のマップ内をゴール目指して進み、道中で資金を集めたりプレイを有効に進めるためのアイテムを回収したり……最後の手持ちの総資産(所持金)が最も多いプレイヤーが勝者となる。


 複数人でのプレイ推奨、皆で集まってワイワイ騒げるゲーム……なのだが。


 ……これ、友情崩壊ゲーじゃん。


 そう。このゲーム、プレイヤー間での妨害工作のレパートリーが豊富な上にいやらしい仕様のものが非常に多いのだ。ゲームの途中までトップにいたはずのプレイヤーが瞬く間に最下位にまで転落するなど当たり前。よくプレイヤーの本性を暴き出すゲームなどともいわれており、これが元で喧嘩に発展したという報告が後を絶たない……


 見方を変えれば一瞬たりとも気に抜けないスリリングな状況を楽しめるゲームとも言えるが、人間同士が絡むとそれは時に(リアルな)争いへと発展していく可能性を孕んでいるとうこと。


 霧崎は溌溂とした表情で、不破と鳴無も関心を引かれたように太一の手元を覗き込んでくる。


 それなりに評判のゲームではあるし、確かに人が多い空間なら盛り上がってもくるだろうが……


 太一はチラと不破を盗み見た。このゲームは一回のプレイにそれなりに時間が掛かる。それゆえに苦労して順位をキープしていたところを一気に転落させられたときのダメージがデカいのだ。そうなると短気なモノほどキレる可能性が高い。この面子で最も危険なのは当然不破である。

 しかし鳴無の存在も無視できない。なにせ彼女は放課後に人気のない教室に人をおびき寄せ、脅迫材料(捏造)をこしらえてチラつかせてくるようなサイコパス。どこに感情が起爆する導火線が隠れ潜んでいるのか分からない点で言えば不破以上に厄介な存在といえるかもしれない。


 ……どうしよう。


 今更「これはやめておこう」と言える流れではない。全員がすでにこのゲームをプレイするという空気になっている。しかも姉がわざわざ自分たちのために買ってくれたというのに「やめる」と口にするのはそれはそれで雰囲気が悪くなるのは必至。


 プレイしてもしなくても暗雲が漂うこの状況。逃げ場なし。詰みの一歩手前。


 太一が一人で必死こいて接待プレイをしても効果は薄い。この場にいる全員を気持ちよくプレイさせることは不可能だ。


 ……姉さ~ん。なんでよりによってこのチョイスなんだよ~。


 これはあれか? お母さんにジ〇ンプを買ってきてと頼んだらマ〇ジンとかサ〇デーを買ってきちゃったとかそういうアレだろうか?


『友情・努力・勝利!』 

 ……しかしこのゲームに限って言えば、

『裏切り・策謀・勝利!』 

 である。最後しか合ってない……ちなみに爽やかな勝利シーンが演出されることはない。どちらかと言えば夜神〇イト的な「くっ、くっ、くっ」的な悪~い笑みが浮かぶような場面が展開されることだろう。


 ただでさえ追試対策が遅れている現状。ここで彼女たちの雰囲気が悪くなったらそれこそ勉強に支障が出る。


 姉のサプライズによりなぜか妙な窮地に陥ってしまった太一である。


 果たしてどうするのが正解なのか。コミュ障の彼には頭の痛い問題であった。



 Σ( ̄ロ ̄lll)

連・載・再・開!!

本日から作品の連載を再開します!!

新たなギャルを迎えて! 夏休み編突入!!!


※お詫び※

 今回から更新頻度を少し下げたいと思います。

 2日から3日ほど感覚をあけて投稿していく予定です。

 どうか、ご容赦ください!!


作品が面白かった、続きが読みたい、と思っていただけましたら、

『ブックマーク□』、『評価☆』、「いいね♪」をよろしくお願いいたします。

また、どんなことでもけっこうです。作品へのご意見・感想もお待ちしております。

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