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姦し日和、今日も我が家は(悪い意味で)騒がしい

第三章プロローグ!!

 ――なぜ学校で勉強する?


 学生諸君。なぜ君らは授業を受けるのか。


 ある一定年齢になったら世間では小学校から中学校へと通い、果ては高校いって大学まで進学する。基本的にただ右倣えで学校に通い、授業を『受けさせられている』と感じているのではないだろうか?


 数学の公式を日常で使うか? おそらく算数ができればほぼほぼ事足りる。しっかりと小難しい数式を必死に覚えて果たしてなんになる?


 大人は口にする。将来のために勉強しろ、と――はてさて将来とはいったいどんな未来を想定しているのやら。

 そこそこの大学に入って? それなりの優良企業に就職して? 恋人作って結婚して? 子供作って? 年寄りになって? 最後は地球の熱循環システムにのっとって土に還る未来のことかい?


 そんなバカな。


 産湯に浸かって棺桶に全身が浸るその時まで、自分の歩む道を『自分自身』が決められなければ生きてる意味なんてないではないか。誰かが『こうあるべき』と定めたルートの上でよくわからないラットレースを走ることを目的に勉強するなどなんという時間の無駄であろう。


 では勉強に意味はないと?


 まさか。若人よ、勉学に励め。遮二無二となってペンを、頭を酷使しろ。は? さっきと言ってることが違う?


 いやいやいや。勉強はしておいて損はない。なにせ、『自分の道を自分で決める』ためには、結局のところ学が必要だからだ。自分の進みたい将来を選択するために、勉強はとりあえずしておくことをおすすめする。覚えた内容を全部使う機会なんてそうそうないだろうが。まぁあってマイナスになるものでもないさ。使う機会があればラッキーくらいに思っておけばいい。


 しかしいざ使いたいときに学がないと身動きが取れない。音楽やりたいのに譜面が読めんかったら意味がない。料理がしたいのに計量カップの数字の意味がわからなかったら悲惨である。原始人じゃないんだからなんでもフィーリングでやろうとするのは無理がある。そうなると先人の知恵を掠め取る必要があるわけだ。学とはそういうものである。だからとりあえず、自分らしくあるために、好きじゃなくても勉強はしておこう。


 バカでも生きていけるが、無知では生きていけないのだから。


 ……なんて。


 とはいえ上から目線でこんなことを言ったところで、勉強なんてしたくない奴なんてごまんといる。


 が、君の人生だ。するもしないもお好きにどうぞ。


 どうせ他人など、個人の責任を完全に取るなんてことできるわけもないんだから……


 自分の人生の責任は自分で取る。


 ――しかし、もしも自分ではない、『誰か』の人生を歩んでいる人間がいるとしたら、その責任は、果たしてどこへいくのだろうか?



 ('ω')



 7月24日――


「じゃじゃ~ん! ねぇねぇ! ワタシもコントローラー買っちゃった♪」


 夏休み。ギラッギラに照り付ける太陽の下。クーラーガンガンの宇津木家リビング。中には太一、不破、そして霧崎と鳴無の四人が集まっていた。


 鳴無亜衣梨おとなしあいりは例の有名ゲームメーカーのハード専用コントローラーを手に喜色満面。コバルトブルーとライムグリーンのカラーリング。パッケージのままのそれを太一たちの前に掲げて見せた。


「せっかくだし、これ使って遊ばない? 太一君、みんなで遊べるパーティーゲームいくつかあったよね?」

「ええ、まぁ……」

「じゃあやろ♪」

「いえ、あの……」


 渋る太一。しかし鳴無は少し頬を含まらませて、


「も~う太一君ノリ悪~い」

「えっ!? あの鳴無さん!?」


 太一の背後に回り込むとぎゅっと抱き着いてきた。ぎゅうぎゅうと背中に押し付けられる重量物に思わず「おふっ」と変な声が出てしまう。うむ、気持ち悪い。

 今日の鳴無は私服。オフショルダーのトップスにスキニーパンツ。女性らしいラインが強調されつつもいやらしさを感じさせない。むしろ彼女の大人びた雰囲気によく似合っている。


 しかしいくらクーラーが効いているとはいえここまで密着されると普通に暑い。ついでに緊張で変な汗も一緒に噴き出て来た。脱水症状待ったなしである。このまま絞り取られたら天国イッちゃう。いっそ搾り取るならもっと別の――おっと誰か来たようだ。


「あ~そ~ぼ~!」

「いえ、ですから……」

「なによ」

「『追試』の勉強、しましょうよ」

「や」

「ええ~……」

「ウチも遊ぶ!」

「いえ霧崎さんはもっとダメです」

「ぶ~……」


 宇津木家リビング。そこには今日も今日とて女子3人が集まっている。5月のはじめ、不破が西住に『太った』ことを理由にフラれたことで始まったダイエットを皮切りに……太一の自宅には不破が出入りするようになり、そこに霧崎が加わり、先日には鳴無まで加わってとにかく騒がしいったらない。


 が、今日ここに集まったのは、決して遊ぶためではない。


「鳴無さんは保健室で休んじゃった社会科と理数系、霧崎さんは……ほぼ全教科の追試。ちゃんと勉強しないと、夏休み中ずっと補習と追試の繰り返しになっちゃいますよ」

「それはそうだけどさぁ……」

「せっかく集まったのに勉強だけとかつまらないじゃない。息抜き息抜き♪」

「それは勉強を始めてから言いましょうよ……まだ全然進んでいないじゃないですか……」


 この日の目的。それは、霧崎と鳴無の追試合格を目的にした勉強会である。

 

 しかしのっけから鳴無は完全に目的から脱線し遊ぼうと言い出す始末、挙句霧崎もその流れに乗っかろうとするのだから始末に負えない。


 そして不破はといえば……


「不破さ~ん、助けて下さいよ~」

「アタシ追試とかねぇからパ~ス」


 タンクトップにカーゴパンツ。お腹を露出させながら不破はスマホをいじっている。最初は鳴無と衝突していた彼女だが、どれだけ押そうが拒絶しようが堪えない鳴無に半ば諦めたのか、普段はその存在をほぼ無視する方向にしたらしい。

 

 まぁいまだに何かあるたびに小競り合いというか不破が噛み付き鳴無がそれを躱すというシーンもあるのだが……どうやら宇津木家の平穏は完全に旅立ったようである。あるいはお亡くなりになったと言っても過言ではない。どこかに復活の呪文とか転がってないかな。ア~ブラカタブラ!(意味:ちんぷんかんぷん)。まさに今の状況にピッタリである。


 しかし意外だったのは、このメンツの中で不破が追試のメンバーではないことだ。


 彼女が勉強していたところなど見たことないが、不破曰く、


『教科書見とけば赤点とかとらなくね?』


 などと発言。テストの結果も見せてもらったが、全て50~60点代。


 決して高くはないものの、堅実に赤点を回避できている。最初の設問など、間違えている箇所がまるでない。しかし後半はほぼ無記入。


 要はこの不破、地頭がいいのだ。それも、すこぶる。


 もし仮に普通に勉強していれば、今頃クラス、いや、学年でも上位の成績を収めているのではないか。


 が、よく考えれば涼子から料理を教わった時も、彼女はほんの一週間でほぼマスターしてしまったくらいだ。


 ……不破さん、なにげに高スペックなんだよなぁ。


 とはいえ、不破は感性で生きている節があり、今回の勉強会の冒頭でも、


『は? こんなん適当にやってりゃ解けんじゃん』


 と、のたまい、まるで教師役には向かないという事で今は太一が霧崎と鳴無の勉強をみていた。


 太一たちの学校では赤点者は追試を実施し、一定水準に達すればそこで合格。晴れて夏休みに突入。しかし再度赤点の場合は補習の末に再々試……これが、合格水準に到達するまで続けられるのだ。なんとか生徒をほぼ全員進級させようという計らいらしい。涙ぐましい学校側の生徒への配慮に痛み入る。もっとも生徒にどれだけ学校側の想いが通じているかは謎である。


 まぁつまり、夏休みを存分に満喫するためには一刻も早い合格が必要というわけだ。


「む~……」


 鳴無が唸る。数学の問題を前に完全に手が止まっていた。


「……???」


 霧崎に至っては完全に目が点になり、さながら宇宙猫のようになっている。


 ……大丈夫かなぁ。


 もう今から幸先が不安でしょうがない。


 この夏休み、実は涼子の提案で、


『実は8月のお盆休みに実家に帰るんだけど、満天ちゃんたちもよかったら来ない?』


 という話になったのである。


 太一の父方の実家。自然あふれる田舎だが、川も海も近く、少し歩けば野外アクティビティが充実した公園もある上に、期間中は近所で夏祭りも開催される。一週間程度の滞在中も、遊ぶに困らない充実した日々が過ごせるだろうことは確実。当然全員、「行く!」となったのは言うまでもない。


 が……


 ……これ、期間までに合格できるのかなぁ。


 出発は8月12日。お盆前日。次のテストの実施期間は7月末、勉強できる期間は一週間。


「ぜっぜんわっかんな~い!」

「ねぇきらり~ん。海とか行くなら水着買いに行こうよ~♪」

「あっちぃ……くっついてくんな変態」

「あ~ん、つれな~い」


 霧崎が教科書をぶん投げ、鳴無はソファに転がる不破に絡み始める始末。


 ……ああ、これはダメだ。


 太一はすでに、霧崎と鳴無の合格をほぼ諦めた。


 追試まで残り――8日である。


 

ε-(;-ω-`A) フゥ…

『重・大・発・表』!!


「陰キャに優しくないタイプのギャルがカレシに『太った』という理由でフラれて思わず吹き出したら思いっきり絡まれてしまいソレ以来なんだか徐々に彼女との関係がバグっていってるんですが…」

↑このやたら長い本作の『書籍化』が決定しました~~!!

お話を頂いた時は

「え? マジで!?」Σ(゜Д゜;)

となり作者本気でびっくりしました!


以下、編集部から頂いたオファーの言葉を一部抜粋!!

「陰キャな主人公に甘くないヒロインの満天。だけど太一を色眼鏡で見ることなく、対等な人間として”当たり強め”に接していくところが新鮮で、『オタク優しいギャル』の新しい可能性を感じました」

「パワー溢れる直情型ギャルに振り回される主人公。そんな中で自身に足りなかったものに気付き成長。ヒロインのギャルも主人公の意外な一面を知って興味を引かれていく、とても魅力的なステップアップラブコメ!」

「二人が今後どんな関係を築いていくのか、読者の皆さんと一緒に楽しんでいきたいと思います」


いやもう……べた褒め!?


この内容で本になるの!?(笑)って感じでしたが、ここまで言っていただいたらもう本にするしかないじゃないですか!!


で・す。が!

これもひとえに読者の皆様の応援があればこそ!

『いいね』をくれる優しい方、評価してくれた聖人君子様、感想を残して下さる地母神様!

皆様のお陰です!! 本当にありがとうござます!!


レーベルなどの情報とかはもうちょっと待っててくださいね♪


なにはともあれ! 『書籍化』でございます!!


同時にお知らせ!

第三章は『夏休み編』!

現在鋭意執筆中!!

こちらの続きは11月21日から投稿再会の予定です!

(ちょっと時間あくけどご容赦ください!)

乞うご期待!!!

よろしければ『ブックマーク□』して待っててください!!!!

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― 新着の感想 ―
[一言] 書籍化おめでとうございます!
[気になる点] 不破さんは過去の男とどういう経緯で付き合ったのか…少しでもときめく瞬間とかあったのだろうか。 [一言] 書籍化おめでとうございます! 不破さんの地頭の良さは、男の審美眼には生かせなか…
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