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準備そこそこに待ち合わせ場所で君を待つ

ずいぶん遅くなりました!


勢いでかいた話の後編です。

 いつもはちゃっちゃと終わるのに

 今日に限って仕事終わんないし!


 いや、終わったの。

 そしたら元のデータ間違ってて。も一度作ってって!

 しかも週明け一発目の会議に必要で週末に準備するからどうしても今日中に必要って!


 無茶よこっちのデートどうすんのよぉ!

 乙女には入念な準備が必要なのよぉ!

 などと画面に向かって文句を吐きながら目線は元データを見たままブラインドタッチ(ノンストップ)で機械のようにキーボードを叩き続ける私。


 せぃっ!!とエンターキーを叩く!

 表計算ファイルを乗せたメールが光の速さで飛んでいく。


 や―――――っと終わったと思ったらもうこんな時間!

 せっかくだからネイルくらい行こうと思ってたのに!

 普通の身支度さえあやしい時間だわ!


 えー!!どうしよどうしよ!

 ワンピース?スカート?パンツ?上はどうする?色は?アクセはっ!?

 こんなことならもっと早く準備しとけばよかったよ、と後悔しながら焦りに焦る。


 メイクするにもキーボード打ち込みすぎて手がうまく動かない!!

 だぁぁぁ!眉がずれたぁぁ!

 気合い入れて何日も前からメイク動画見て勉強してたのに生かす間もない!

 なんとか仕上げて小道具をポーチに片づける。


 ん……?


 床に落ちてる雑誌。

 開きっぱなしのページ。



 これなら、これならいける!?

 そうだよね、うんうん!



 自信の無さを感じつつ。

 戸締りOK、さぁ出発!

 駅に向かってやや速足。


 夕暮れになってもめちゃくちゃ暑い。

 毛穴という毛穴が一気に開いて汗が噴き出す。

 蝉は好き勝手吹き鳴らすオーケストラ。

 立ち止まれば蚊が寄ってくるし。

 不快指数はMAXですよ!

 それでも心はルンルンさぁ!


 なんたって、待ちに待ったデートだものっ!


 白Tシャツとジーンズにしちゃった!

 メイクも眉毛と目元くらい。

 でもこれが大正解!


 ロマンティックな雰囲気つくるデートも憧れるけど

 自然体がなんだかんだ一番!

 気合い入れるのはまた今度!


 気合い入れまくってずっこけてる場合じゃないのさ!




 待ち合わせは彼の職場のある近隣じゃ少し栄えた街。

 冷房の効いた電車内で体をクールダウンしたかったけど

 3駅なんてあっという間。


 駅に降り立つと再び熱気が襲い掛かる。

 帰路の人たちの流れをかいくぐって建物の外へ。



 ありゃ。



 物々しい黄色地に黒字のテープ。

 KEEP OUTってやつね。よくドラマなんかで目にするやつ。


 そっか、今朝車が花屋に突っ込んだってニュースでやってたなぁ。

 ここだったんだ……。けが人なしって、早朝でも人通り多いだろうによかったなぁ。

 しみじみと見つめる。

 操作は終えたのか人影は無いけど

 飛び散ったガラス片が事件を生々しく語る……。


 深緑色に塗られた街灯の柱に寄りかかって彼を待つ。

 約束の時間はそろそろだ。

 鏡を出して身なりチェック。

 あ、ピアスつけるの忘れてる……

 ちーん。



 いやいや始まる前からテンション下げてどうする!

 かわいい耳たぶ見せびらかすくらいの気持ちで行くんだ!


 どうしようもなく浮かれちゃってるの自分。

 いつも一緒にいるのにこんなに気分が高揚するんだから不思議なもの。


 早く会いたいなっ!!




 ところがどっこい。


 待ち合わせ時間5分経過。

 あれ?おかしいな。

 LINEもこない。

 何かあったのかな?

「遅れる?」

 ちょっと送ってみよう。

 ……。


 おや、反応が無いぞ


 どうした、大丈夫か。

 まぁ、忙しいのかな。


 来ない来ないと10分15分

 うーん、そわそわ。

 時間つぶしにネットニュース見てもインスタ見ても

 頭に入ってこないし

 推しのアプリゲームも楽しくない


 来ないかなー

 来ないかなー


 送ったLINEも未読のまま……うーん、不安になってきたぞ。

 30分が過ぎ、数えきれないくらい見返した画面に小さな変化。


 あ、既読になった!

「ごめん!待たせた!もうすぐ!」

 よかった、生きてる!

 それだけで嬉しく

「うん!」

 とだけ送る。

 スタンプなんて探せやしない。


 彼が来る

 息を切らし、汗びっしょり。


「ごめん、ほんとに、ずいぶん待たせちゃった」


 絶え絶えに君が言う。

 いーよ、お疲れ!!

 その顔が拝めるだけで私は満たされてしまう。


「それでさ、あの……」


 気まずそうに言う。

 これ以上何言われても気になんない。


「花……」


 花?

 無残な事故現場を指さして口を開く


「そこのさ、花屋で、花束注文してたんだ」


「でも、今朝こうなっちゃっただろ。

 記念日なのに何も用意できなくて、

 探しに行こうと思ったけど仕事が立て込んで何もできなかった」


 なーんだ、私とおんなじ!

 いーの、いーのって彼に抱きつく!

 その気持ちだけで十分だっ!


 私たちにはこれが似合う。

 飾らないで、そのまんま。

 特別なことできなくても、お互いが居たら幸せ。


 そんなのいつか忘れて不満だらけになっちゃうって?

 そーかなぁ?


 もらうことばかり考えたらそうかもね!

 今のところ私たちは平気。


 こんな気持ちがずっとずっと続きますように!

お読みくださりありがとうございますっ!



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― 新着の感想 ―
[良い点] 「今のところ私たちは平気」 あーこれが言えるってステキなことですね(*´ω`)かわいい短編でした!!
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