00005-没しろ
早速オレはレベルアップ処理を行うことにした。
メインメニューと同じようにスキル画面を思い浮かべれば……お、でたでた。
スキル画面は、大樹を模したスゴロク形式の見た目をしていて、レベルアップスゴロクとでも言うべきか、ソドマジIIというゲームの奥深さに一役買っている存在だった。
レベルアップ時に獲得されるポイントを消費することで、プレイヤーは自身のマス目を任意の方向に一マス分進むことができる。
そしてその止まったマスに書かれたスキルや魔法、またはパラメーターの能力値上昇を受けることができて。
そしてソドマジIIで使える強力なスキルや魔法は決まってスゴロクの最後の方にあるから。
どの方角にどう進めるか。
どういうルートを描くか。
どれだけ死にスキルを回避してステータスを整えるか。
でもあえて死にスキルを取ることでワープマスを解放して低いレベルでも強力な魔法が使えるようにするか。
みたいな。
取捨選択の、ビルド要素が魅力の一つになっていた――のだが。
「……やべぇ」
オレがそう呻くように呟いたのも、そんなソドマジIIの仕様を知っていたからで。
なにせ、今のオレは――スゴロクのマスを自由に飛ばして進ませることができている。
カーソルの動きがバグってないのであれば、オレはレベル一にして、すでにスゴロク最奥の最強スキルや魔法を自由に獲得できることになっていて――
「まじで神様の言う通りだったんだな」
――うん、まぁ、相当期待していいと思うよ――
「あざまあああぁぁぁっっす!!!」
オレはとりあえず胸の前でキの十字を何度も切りながら、究極魔法やブッ壊れスキルを獲得しまくる。
しかもしかも。
驚くべきことにそれぞれのマスの説明文を確認する限り、ユーザーから批判を受けて弱体化調整された魔法やスキルも完全に調整前のものになっている。
なんてブッ壊れゲー。
プレイヤー目線からすれば批判とか暴動どころの騒ぎではないが、あいにくオレは転生した身。
躊躇う気も遠慮する気も毛頭無かった。
そんな感じに狂喜乱舞しつつ。
一時間くらい頭を使って組んだステータスはこんな感じになった。
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【個人ステータス】
名前:マーノ 性別:男
種族:人間種 年齢:十六歳
称号:神の遣い 職業:冒険者
レベル:1
【ステータス】
HP:354/354
MP:5,322/5,322
筋力:30 敏捷:37
魔力:1,032 頑丈:29
【ユニークスキル】
《健体保持》
このスキルの所有者は常に健康な肉体を維持する。
「毎秒HP一割回復」「病気無効」「毒無効」「魔法やスキルのデメリット無効」の効果を得る。
《神の遣い》
主神から直々に遣わされた者のみが得るスキル。
「主神交信」「特殊アクション『奇跡』発動可能」「任意でのレベルアップ処理」「メニュー使用」の効果を得る。
《啓示》
主神との交信を可能にするスキル。
【使用可能な魔法/スキル】
【火炎魔法】
(火矢III)
火の矢を射出し、対象に炎属性ダメージを与える。
火矢IIの効果に加え、MP消費量が四分の一。
(炎壁III)
炎の壁を召喚し、接触した対象に炎属性ダメージ。
炎壁IIの効果に加え、壁を一定距離まで操作可能。
(焔渦III)
辺り一面を焦土と化す炎の台風を召喚する。
接触した対象に炎属性ダメージ。
焔渦IIの効果に加え、渦を十本まで増やせる。
【雷撃魔法】
(電矢III)
電気を迸らせて、対象に雷属性ダメージを与える。
電矢IIの効果に加え、MP消費量が四分の一。
(雷球III)
球体の雷撃を操る。接触した対象に雷ダメージ。
雷球IIの効果に加え、放つ雷球が追尾機能を持つ。
(紫電III)
察知不可能な高速の雷撃を放つ。対象に雷ダメージ。
紫電IIの効果に加え、威力が五倍に上昇。
【神聖魔法】
(快癒III)
肉体を回復する癒しの光を灯す。対象のHPを回復。
快癒IIの効果に加え、魔法の効果範囲が広がる。
(消毒III)
毒された肉体や毒物を浄化する。対象の毒無効化。
消毒IIの効果に加え、致死毒も無効化可能。
(蘇生III)
魂の離れた肉体に再び生命を宿す。対象を蘇生。
蘇生IIの効果に加え、死後二時間以内なら蘇生可能。
【空間魔法】
(収納III)
物品を収納しておける魔法空間を召喚する。
収納IIの効果に加え、容量無限大。
(運搬)
《収納》で召喚した魔法空間を移動可能にする。
(邸宅III)
魔法空間内に自室を設ける。現世に錨を打つ必要有。
邸宅IIの効果に加え、他人も行き来可能にする。
(隔絶III)
物理現象を阻む魔法の壁を発生させる。
隔絶IIの効果に加え、魔法現象も阻めるようになる。
【生贄魔法】
(交信)
空想界の住人と交信を可能とする。
(契約III)
交信した空想界の住人と契約を交わせるようになる。
契約IIの効果に加え、全住人と契約可能。
(調伏III)
交信した空想界の住人を調伏する。
調伏IIの効果に加え、調伏時間を十分間に増やす。
(憑依III)
交信した空想界の住人を体内に憑依させる。
憑依IIの効果に加え、憑依範囲を全身に指定可能。
【スキル】
《魔の炉III》
人ならざる魔力を有した存在。MP回復速度が上昇。
魔の炉IIの効果に加え、MP0時点でMP全回復(クールタイム一日一回)。
《魔の躰III》
強靭な魔力を頑強な肉体に変換する。
MP10消費辺りHP5、筋力1、敏捷1、頑丈1上昇。
魔の躰IIの効果に加え、さらに持続時間の増加。
【使用可能レベルアップポイント】
残り 42p
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改めて思うが絶対これレベル一のステータスじゃねえ。
完全にソドマジIIのソロモード&ステータス改ざんMODを使わないと構築できないビルドだ。
しかもMPとか魔力とかMODの入ってない状態だったらすでにカンストしてたから、もう伸びないかと思ったら普通に伸びてるし。
そんな無駄なステータス向上が無いことに気付いて調子に乗って、清々しいまでの魔法使いビルドになってしまったが神様も近接特化はやめといた方がいいって言ってたしな。
きっとこのビルドで正解だろう。
ちなみに結構な数の魔法とスキルに《○○III》とついているが、これは同じマスに重複してポイントを消費したときに起きる強化効果だ。
死にスキルを回避し、有用なものに割り振ったから、どうしてもこんな感じになってしまう。
ポイントもまだ半分近く残っているが、必要になった時に割り振っていけばいいだろう。
「さて」
この完全な改ざんMOD仕様のステータスを試してみたいのだが……あいにく周囲は洞窟。
神様直々の公認公式チートでもある以上、効果範囲の狭い(火矢III)でも思わぬ威力になる可能性がある。
「ひとまず外に出よう」
そう決めた。
初めてのダンジョン攻略だと言っていたし、きっとそんなに奥深くまで進んでいないはず。
そう思い、オレはメインメニューを開き、自動マッピングされていくマップを見ながら歩き出す。
「と、そうだった」
そのまま立ち去るところだった。
肝心なことを忘れていた。
オレは足を返して、戻り。
吐瀉物と血で汚れた場所に向けて黙祷し、手を合わせる。
どういう所以があったかは知らないが、少なくともオレはこの体の元の持ち主であるマーノ君から体を貰い受けることができた。
誰にも知られない内に彼は息を引き取ったらしいが、誰か一人くらい彼の死をいたわる奴がいてもいいだろう。
しばらくそうして手を合わした後に。
ようやくオレは地上に向けて歩き出すことにした。
前の世界ではゲーマーだった彼は、ゲーム的なチートを満喫してますね。
最後に手を合わせる辺り、彼の人柄が出ているかと。
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