00004-地獄に落ちろ
目が覚めると、オレは洞窟の中にいた。
じめじめ、しっとり、少し上には差す日光。
……洞窟?
転生なら普通、赤ちゃんスタートなんじゃないか?
おぎゃあおぎゃあで生まれて、平均五歳ぐらいから独自の鍛錬法でハイパーチート能力を得て、十歳ぐらいになったら将来、人生の伴侶になる美少女系幼馴染みと知り合ってーーみたいな。
でも。
どう見たってオレの手足は赤ちゃんのそれというか。
そこそこ成長した男のもののように見えて。
およそ十代半ば。
そこそこ日に焼けた健康的な肌。
ぎりぎり上まで目を向けたら短い黒髪が見えたから、白人系では無さそう?
それに胸の前には皮で出来た鎧を身に付けていて。
腕には同じく皮製の手甲を装備している。
うーん……分からん。
あれだけ配慮してくれていた神様のことだから、いきなりミスったとかもなさそうだし。
ま、とりあえず。
「メニュー!」
そんなことを言ってみるオレ。
この世界がソドマジIIをベースとしているのなら、これでメインメニューが開かれるはずだ……
しかし。
「何も起きねーな」
もしかしてイメージの問題なのか。
よくある『きちんと頭の中で思い描いて』的なやつ。
すると先ほどは何も起きなかったのに、突然目の前に薄い半透明の板が表示されて。
それは見慣れたメインメニュー画面だった。
「なるほど……」
確かに神様がソドマジIIを元にした、と言及する訳だ。
何から何までそっくりそのままだと考えると痛い目を見るかもしれない。
そう思い直して、メニューをいじり出そうとするとメールが一件届いているのに気付く。
オレはひとまずそのメールを確認してみることにした。
宛先は神様だった。
『やぁ、新しい世界にようこそ、マーノ君』
『まず、なぜマーノ君と呼んでいるかなんだけど、君の転生は正確には『生き返り』に該当する現象で、君の魂が入る元になった体の持ち主の名前がマーノって言うんだ。
君の魂がマーノ君の体に宿った、というのが適切かな?』
なるほど。
確かにそれなら完全な赤ちゃんスタートじゃなくて、ある程度成長した状態からスタートしている訳だ。
『ちなみに宿ると言っても、それはもう君の体だ。
元々の持ち主だったマーノ君は初めてのダンジョン攻略にこれから向かおうとした時に回復草と間違えて、毒草を口にして死んでしまっている』
まじかよ、ちょっとマーノ君ドジ過ぎない?
若干ヒいたオレだったが、とりあえず文章を読み進める。
『君の立っていた近くに吐瀉物や血痕が無いかな?
それが証拠になると思う』
たしかに。
オレから少し離れた場所に、ゲロやらどす黒い血だまりが撒き散らかされた場所がある。
ちょっと離れた場所にいるのは神様の配慮とか?
『ちなみに君の魂が宿るにあたり、マーノ君の体は治療してあるから再発することは無いよ。
あとゲロまみれ血まみれのスタートってのも景気の悪い話だと思うから体を綺麗にして離しておいたからね』
さすが神様、本当に気が利く。
『それで、元になったマーノ君の身の上話なんだけど、正直そこまで気にしなくていいかな。
最近まで住んでいた村が魔物に襲われて家族、友人、知人に至るまで全滅。
食うに困ったマーノ君は町に出て冒険者になって、初めてのクエストとして薬草回収をおこなってて、その帰り道に、今、中にいる洞窟型のダンジョンを見つけてしまう。
それで体調を万全にしてダンジョンに潜ろうとしたときに薬草と間違えて毒草を使ってご臨終ーーという感じだから。
町に入るときも特に目立ったことはしていないから、本当に以前のマーノ君を記憶してる人はいないかな。
マーノ君の意思も死後に確認してあって、もう少し安全な世界で生き返りたいとのことだったから、元の子のことは、あまり気にしなくていいかな。
イケメンな子を選んだから感謝してくれると嬉しいな!』
まじっすか、神様。
あとで鏡か水溜りで確認しとこ。
感謝感激雨あられ。
『それじゃ後はよろしくね。
まずはステータス画面を見ることをオススメするよ。
あ、それとあまり束縛とかしたく無いけど、近接特化型はやめといた方がいいよ。
それじゃ! またね』
そこで神様のメールは終わっていた。
……ま、諸々考えるべきことはあるが、ひとまずはメールにあった通り、ステータスを確認してみるか。
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【個人ステータス】
名前:マーノ 性別:男
種族:人間種 年齢:十六歳
称号:神の遣い 職業:冒険者
レベル:1
【ステータス】
HP:32/32
MP:5,000/5,000
筋力:5 敏捷:8
魔力:999 頑丈:4
【ユニークスキル】
《健体保持》
このスキルの所有者は常に健康な肉体を維持する。
「毎秒HP一割回復」「病気無効」「毒無効」「魔法やスキルのデメリット無効」の効果を得る。
《神の遣い》
主神から直々に遣わされた者のみが得るスキル。
「特殊アクション『奇跡』発動可能」「メニュー使用」の効果を得る。
《啓示》
主神との交信を可能にするスキル。
【使用可能な魔法/スキル】
無し
【使用可能レベルアップポイント】
残り 100p
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一目見て分かった。
あ、これ完璧チートですわ、と。
というか神様、完全にバランス壊しにかかってる。
まぁ、そう即座に判断できたのも普段見慣れたソドマジIIのステータス画面だから、明らかに異常な箇所に気付いた訳で。
誰が見てもおかしいでしょと感じる部分で言えば『MP』『魔力』だろう。
ぶっちゃけ、レベルがカンストしても、素のパラメータでこの値に到達することは無い。
他のパラメーターの貧相さと比較しても、明らかに浮いている。
さらに。
少し分かり辛いが『使用可能レベルアップポイント』が、百という値になっているのも注目だ。
このポイントはレベルが上がるたびに『一ポイントのみ』付与されるもので、このポイントを消費することで、新しい魔法やスキルを覚えることが出来る。
つまりオレはレベル一にして、すでにレベルが百上がったのと同様のスキルや魔法を獲得できる状況になっている。
挙げ句の果てにはソドマジIIに存在しないユニークスキル『健体保持』『神の遣い』っていうのも付いてる。
『健体保持』の説明文がそのまま信じるのであれば、オレはレベル一にして、すでにラスボス級の強さを持った吸血鬼並みに不死身の体の持ち主ってことになるし、『神の遣い』の「特殊アクション『奇跡』発動可能」とか、まさに救世主ムーヴ待ったなしのようにしか見えない。
ま、この『奇跡』っていうのも神様が神通力を使って介入するってことだろうから本当に緊急手段な気もするが。
なにせオレは、宗派をまとめるなりして、神通力を正常化するために転生しているのだから。
その神通力に頼るような状況はあまり芳しいとは言えないだろう。
いずれにせよ、強力なステータスであることは変わりない。
まさしくチート、分かり易くチートだ。
まじ感謝っす。
主人公の名前が分かりました。
マーノくんです。
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