00001-PRAY
ここは牢獄だ。
何も変わらず、何も起きない場所。
地面も無い。空も無い。
周りに人も居ない。
あるのは、ただ――尽きない暗闇だけ。
前歯を骨の形状に沿って滑らせる。
まるで爪でも立てるように。
歯の裏でめくり続けた肉は無くなった。
腐った肉は自然とこそぎ落ちていく。
鼻は曲がってるんだ。嗅覚もおかしい。
だから――こんなものを食えてしまえる。
これはかつて――
繝九Φ繧イ繝ウ
――そう呼ばれるモノで。
ぴちゃぴちゃと舌が動く。
わずかに残すことさえ全て許さず、それは勝手に舐めずり出してそのまま喉の奥へと運んでいく。
美味しいか? 美味しい訳が無い。
オレは――ただ死にたくない。
その理由だけで、こうしている。
オレは何者でも無かった。
ただ迷って、困惑して、右往左往して、流される。
無意味、無価値。
全てのオレはそれで染まっていた。
だからこれは当然の報いだ。罰を受けて当然だ。
囚人の飯が。
美味いものであるはずが無い。
――罰。
罰。
罰を受ける。
――悪事が大きければ大きいほど、罪科も重なる。
それは当然のルールだ。
だから思うんだ。
どうして――
こんなことに。
――なっているんだろう。
オレは、こんなこと何も望まなかった。
何も。何も。何も。
――だからこそ、起きたのだろう。
オレは欲を知らない。
手段も知らない。自信も無い。何も無い。
それこそが罪だ。
暗闇の中を舌が這う音だけが続く。
その水音だけが耳を濡らす。
腹は減ったまま。
――でも。
本当に、今、欲しいものは。
αρέσκω
πόνος παραιτούμι
でも喪われた。
αρέσκω
πόνος παραιτούμι
オレが奪った。
παράδεισος
νέοκόσμο Αυτό
μορμούρισμ εξαπατώ
――おかあさん
おかあさん おかあさん
まだ こんなことを
つづけなくちゃ いけないの?
もう
ぼくは うんざりだよ
まだ――
六つも 大罪は 残ってる
いきなりこんな始まり方で申し訳ないです。
本作は合計で七章立てになっておりまして
章の開幕付近のみ、このような始め方をしております。
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