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ぼくのいない世界  作者: 松永晋也
戦う世界(????)
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 この世界は、優しくない。


 なぜなら、ぼくたちは戦わなきゃいけないからだ。それに、自分の家もない。


 ぼくとXXは二人で旅をしていた。夜は宿屋で眠って、起きると同時に酒場に行って仕事を請け負うのが習慣になっている。と言っても、最近は本当にお金が無いから、宿屋も借りられなくて、今は教会に泊めさせてもらっているけど。


「教会のパンって、なんでこんなに不味いんだろ」


「失礼なこと言っちゃ駄目だよ。好意で泊めてもらったのに」


「だけど、不味いもんは不味いだろ」


 今朝、xxは不機嫌だった。まあ、たしかに教会のパンは全然美味しくない。パッサパサで、口の中の水分を持っていかれるし、時々砂利が混じってる事もあるから。


 ぼくはそんなxxをなだめながら酒場に向かった。


 幸い、開店するとほとんど同時に店に入ったから、同業者の姿はまだない。

 これなら依頼はまだ残っていそうだな。そう思いながら店主に依頼がないか質問した。


「昨日、商人がゴブリンに積荷を奪われたんだ。奴らから荷物を取り戻してほしいんだが、できるか?」


「何が盗まれたんですか?」


「それを君が知る必要はない。ただ、報酬は金貨3枚だ。どうかな?」


「金貨3枚? そんなに?」


 金貨3枚と聞いて、思わず声が漏れた。滅多に無い高報酬の仕事だった。


「やるのか? やらないのか?」


「わかりました。やります」


 ぼくはすぐに答えた。


「この街の南にある森にゴブリンの巣がある。荷物はそこにあるだろう。荷物は壊されていなければ大きな木箱に入っているから、それをそのまま持って帰ってきてくれ」


「はい」


 ぼくはxxに相談することもなく、すぐに仕事を請け負った。金貨3枚もあれば、二人でも30日は生きていける。つまり、仕事を一日で終わらせれば、しばらくはのんびり暮らせるってことだから。


 断る理由はない。それに、急がないと他の人達に仕事を取られちゃう可能性もある。




「ゴブリンの巣って……危なくないか?」


 依頼を受けて、酒場から出ると、xxが不安げにつぶやいた。


「大丈夫だよ。君の魔法と、ぼくの剣があれば、ドラゴンにだって負けないから」


 ぼくは笑いながら、彼にそう言った。


「……ドラゴンなんて、流石に勝てないよ」


「そうかな?」


「無理だよ。無理」


「どうかなぁ?」


 実はぼくも、本当はゴブリンが少し怖かった。魔物達はぼくたちを倒すつもりで襲いかかってくるし、負けることだってありえないわけじゃない。けれど、怖がっている彼を勇気づけるために、ぼくは嘘でも自信満々でいなくちゃいけないんだ。それが戦士の生き方だから。


 ちなみに、ゴブリンっていうのは、この世界に生息している魔物と呼ばれる生き物で、人間たちをよく困らせている。ぼくたち冒険者は、そういう魔物を倒して困っている人から報酬をもらうのが基本的な仕事だった。


「ま……金貨3枚ももらえるなら、やる価値はあるか」


 しばらく悩んでから、彼はようやく納得してくれた。


「でしょ? それじゃあ、早速目的地に行こう!」


 ぼくはxxの手を引っ張って、街を出て南の森に向かった。


 街を出た瞬間から魔物たちはその姿をぽつぽつとあらわし始めた。雑魚の相手は、基本的にぼくひとりでしなくちゃいけない。xxは魔法使い。魔法は使う度にマジックポイントを使うから、変なところで無駄遣いしていたら、大切なところで使えなくなってしまうから。俗に言う、露払いってやつだ。


「スライムだ!」


「任せてっ!」


 xxの声で、ぼくはスライムに斬りかかる。少し残酷だけど、この世界では魔物は倒さないといけない。スライムの半透明のゼリーみたいな身体を両断して倒す。すると死体はすぐに跡形もなく消えてしまう。


「よし、ナイスだ。アスカ」


「楽勝だよ」


「けど油断するなよ。ゴブリンはこんなに弱くない。戦闘に慣れた人間が殺されたりすることもしょっちゅうあるらしいからな」


 そんな調子で、ぼく達は魔物を倒しながら森の中に進んでいった。森の中は昼間だていうのに薄暗い。木は一本一本がとても大きくて、くねくね曲がっている。そして森の中は大抵、魔物が沢山生息している油断できない場所だ。


 ぼくは、魔法使いのxxをかばうように先頭を進んでいく。


「……気をつけろよ、アスカ」


「分かってるよ。xxも、ここからは魔法を使って良いからね」


「ああ」


 小枝を踏み鳴らし、木々をかき分けて、ぼくたちは森を進んでいく。不思議と、森が深くなるにつれて魔物が姿を見せなくなってきた。それは体力が温存できることだから良いことなんだけど……少し不安にも感じる。まるで何かとても悪いものが待ち受けているような、そんな感じがした。

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